人工知能は地震を予測できるのか? 村井教授が進める「AI地震予測」

 

JESEAが地震予測にAIを取り入れた理由

今回、JESEAが地震予測にAI(MT法)を取り入れた理由は何だったのか。村井氏が挙げたのは、よりきめ細かいデータ分析の実現、そして自身の後継者問題だ。

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「AI地震予測」誕生の経緯を語るJESEAの村井俊治氏(右)とアングルトライの手島昌一氏(左)

毎週水曜日に配信されるメルマガに掲載されている情報は、その2日前である月曜日に国土地理院から公開された電子基準点データをダウンロードし解析ソフトにかけて得られた数値や、さらにそれをグラフ化・画像化したものを村井氏自身がチェックし、自らの知見を加味し予測している。

確認作業に忙殺される日々、AI技術の導入は不可欠と確信

とはいえ、1300か所以上あるすべての電子基準点の動きを、限られた時間のなかで村井氏一人で隈なくチェックするというのは、ほぼ不可能に近い話である。また、この作業に忙殺されることで、気になっている地域の過去データを遡ったり、週単位よりも細かい一日単位のデータをチェックするといった時間が、なかなか取れなくなっているという。そのため、いざ大規模な地震が起こった際に、その地点のデータを改めて調べてみたところ、「兆候が出ているのを見過ごしていた」というケースが何度かあったとのこと。

くわえて、村井氏は現在御年78歳。もちろん今なおご壮健で日々の業務をこなされているが、76歳だった2年前“自らが持つ知識や経験を後継者に伝えたい”と考え、JESEAの中心スタッフにノウハウを伝授したという。これにより、村井氏による地震予測がひとまず次世代にも繋がる形となったが、とはいえ限られた時間の中で予測の精度を上げるためには、AI技術の導入は不可欠だろうと考えるに至ったという。

「将棋の世界でも、最初はコンピュータより棋士のほうが強かったですけど、今では棋士が負けているわけですから。そこで、私が持っている地震予測に関する経験やデータを人工知能で学習させて、いずれは私の予測を超えるようになればと考えたんです」(村井氏)

20年以上前に予見されていた地震予測とAIの融合

いっぽうで、アングルトライの手島氏JESEAの地震予測を知ったのは、偶然にもJESEAがAI技術の導入を検討し始めた頃のこと。MT法の地震予測への応用に関しては、当時、手島氏と同じ研究グループにいた生駒亮久氏が、その可能性を大いに感じていたという。

「実は品質工学の提唱者で、MT法の開発者でもある工学者の田口玄一氏が、1995年に地震予測と品質工学という論説を発表していたんです。そこには適切なデータさえあれば、品質工学を用いて将来的に地震予測ができるかもしれないという展望が書かれているんですが、村井先生による電子基準点のデータを用いた地震予測のことを初めて知った時に、これはいけるんじゃないか?という直感がしました」(生駒氏)

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「AI地震予測」の可能性をいち早く予感していたという生駒亮久氏(左)

それに対し手島氏は、当初MT法の地震予測への応用に関しては懐疑的だったという。ただ、実際にJESEAから提供されたデータの解析を重ねることで、その考えは大きく変わっていった

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「私自身、最初の頃は“そもそも地震の予測すら無理な話では”と考えていました。ところが、村井先生がこれまで培われてきた知見を取り入れながら、データを解析していくと、例えば東日本大震災熊本地震といった大規模な地震の直前には、明らかに前兆が出ているんです。そういう過程を経るうちに、自分の中でも考えが大きく変わっていきましたね」(手島氏)

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