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長生きするほど得になる話題の「トンチン年金」は日本人に向いてるか

生きている限り払い続けられる「トンチン年金」。長生きすればするほど得をするというこの年金について、専門家の間でも賛否が別れているようですが、老後対策に関する著作もある元国税調査官にして経営コンサルタントの大村大次郎さんはどう見ているのでしょうか。大村さんは今回、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でこの年金について詳しく紹介しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

100歳時代に備える“トンチン年金”とは?

みなさんは、「トンチン年金」ってご存知ですか? あまり知られていませんが、この「トンチン年金」は「人生100歳時代の切り札になるような年金なのです。

どういう年金かと言いますと、「年金受給年齢以前に死亡した場合の保障」などは設けずに、ただただ「生き続けている人に支払われる」ための年金です。早期死亡の保障がない代わりに、年々受け取る年金額が多めになっているのです。だから、長生きすればするほど得をするという仕組みになっているのです。つまり、年金というより、掛け捨て保険に近いものがあります。生命保険の逆ですね。

生命保険は、思わぬときに死んだときに備えるための保険ですが、トンチン年金は、思ったよりも長生きしたときに備えるための保険」のようなものです。

この「トンチン年金」は、老後の不安を和らげるには非常に有効なアイテムだと筆者は思います。トンチン年金については、早く死んだら掛け金を捨てることになるので、「損をする」として否定的な考えを持つ経済評論家も多いようです。が、年金というのは、本来、「掛け金より多く受給することが目的ではないはずです。

年金の一番いいところは、どれだけ長生きしても、一定の金額がもらえるということのはずです。トンチン年金は、その年金のいいところを凝縮したような金融商品なのです。

老後のお金の不安というのは、現役世代のお金の不安とはかなり違うと思われます。現役世代の場合は、「自分がいくらお金を得られるか」「自分はどれだけのお金を持っているのか」がもっとも大きな問題でしょう。

が、老後というのは、お金を得るすべが限られていますし、大方の人は持っているお金を減らしていくばかりです。その限られたお金で、「いつまで続くかわからない老後」を賄わなくてはならないのです。早く死ねば、お金もそれほど必要ではありません。でも、長く生きれば生きるほど、お金を必要になります。

しかし、老後のお金を預貯金で賄おうと思えば、かなり不安なことになります。なぜかというと、老後生活というのは、何年続くかわからないからです。65歳から老後生活に入るとして、数年で終わるかもしれないし、30年以上続くかもしれません。つまり、老後生活にいくらかかるかは、個人差がありすぎてまったく一概には言えないのです。

貯金で老後資金を用意しようということになると、やはり老後の期間を長めに設定しなければまずいことになります。平均寿命になれば、皆、死ぬのなら、平均寿命までの生活費を用意していればいいでしょう。しかし、人の寿命というのは、そういうものではありません。平均寿命で死ぬのは、全体の半分の人です。残りの半分の人は平均寿命よりも長く生きるのです。つまり、平均寿命よりも長く生きる可能性が50%もあるのです。

だから、老後の資金を貯金で賄おうと思えば、相当な年数分を用意しなければなりません。100歳までの生活費を用意していても、もしかしたら足らないかもしれないのです。20年分しか用意していない場合は、それ以上、長生きすれば、たちまち貯金が底をつくことになるからです。だから、貯金で老後生活を賄おうと思えば、だいたい30年分は準備しておかなくてはならなくなります。

しかも、長生きすればするほど自分の生活費の残高が減っていくというのは、精神衛生上、非常に良くないといえるでしょう。つまりは、貯金で老後を賄うというのは非常に大変なのです。

かといって、普通の年金でそれを賄うのも大変です。現在の厚生年金の平均支給額は15万円程度です。これは生活保護の生活レベルとほとんど変わりません。都心部に夫婦で暮らしているような場合は、生活保護レベル以下だといえます。

年金は、公的年金のほかにも、民間の年金があります。これを使って年金を拡充するということもできます。が、民間の年金の場合は、公的年金ほど充実していません。というより、民間の年金は、「年金というより積立金なので、自分が積み立てた金額に若干の利子がついて戻ってくるだけです。

そんななかで、トンチン年金の存在意義は大きいと思われるのです。トンチン年金は、民間の年金です。が、少ない掛け金でけっこうな年金を受給することができます。普通の民間年金よりも、かなり効率的に年金額を増やせるのです。

もちろん、トンチン年金は、早く死ねば「捨てる部分」が大きくなります。平均的な掛け金と平均的な受給額を比べると、掛け金の方が大きくなる場合が多いのです。つまり「長生きしなければ損をする」という仕組みになっています。

が、前にも触れましたように、年金でもっとも大事なのは、「死ぬまで一定の金額がもらえる」ということです。この安心感は、「実際にもらえる金額」以上に価値があるものだといえるのではないでしょうか?これを「長生きしたときの保険」と考えればいいわけです。

こういう保険は、今までなかったものです。このトンチン年金は、もともと17世紀のイタリアで、ロレンツォ・トンティという人が考案したものです。欧米では、以前からかなり一般的な年金でした。しかし、日本ではこれまで販売されていませんでした。が、最近、日本でもこのトンチン年金が相次いで発売されたのです。

が、日本で発売されているトンチン年金は、「受給前に死亡したら保証なし」というような形まではとらずに、受給前に死亡してもある程度は保証されるものとなっています。そのため受給額は、そこまで大きくはなりません。

筆者としては、「受給前に死亡したら保証なし」でいいから、長生きしたときに、しっかりもらえる本当の「トンチン年金」を早くつくってもらいたいものです。

もしトンチン年金に興味のある方は、保険会社に問い合わせてください。日本生命などで、売り出されているはずです。ちなみに、『やってはいけない老後対策』という新書を小学館から出しています。

 『やってはいけない老後対策
大村大次郎 著/小学館

トンチン年金やほかのいろんな老後資金の対策方法を紹介していますので、よかったら手に取てみてください(最後に宣伝ごめんなさい…)。

image by: shutterstock.com

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