モリカケ問題で、安倍首相とその仲間たちがいかにウソつきで、信用ならないかが浮き彫りになった。
以前の内閣なら、とっくに吹っ飛んでいただろう。これほど信頼を失っても、内閣支持率は低水準ながら底堅く、いまだに生きながらえている。その背景に何があるのか。
総裁選の対抗馬と目される石破茂氏は以下のように分析する。
「安倍総理を信頼できないという層もありますが、それでも野党よりはいいに決まっている。総理はトランプ大統領やプーチン大統領とも仲良しだし、経済も悪くない、就職もできたし、株価も高いし、まあいいじゃん、ということではないでしょうか」(Yahoo!ニュース編集部のインタビューより)
信頼できない首相でも、生活が苦しくても、人手不足のこの国で求人はあるし、今のところなんとか食っていける。長期政権で国際舞台でもそこそこ顔が知られ、トランプ、プーチンといった厄介な男たちに気に入られる人材はこの国の政界にはいないだろう、などという空気。人心の疲労感から生まれる、諦めに似た酩酊が広がっている。
石破氏がポスト安倍を狙っているのは確かであろう。あまりのんびりしていると、小泉進次郎氏に追い越されてしまう。
しかし、誰がなろうと、金融、財政ともに規律を失った安倍政治の後始末は、貧乏くじを引くようなものだ。真っ当な姿に戻そうとすれば、たちまち不景気になり、国民の総スカンを食らう恐れがある。
石破氏は、安倍政治を正面から批判する代わりに、こういう話を持ち出した。
1940年、斎藤隆夫衆議院議員が帝国議会で軍部を批判する演説を行い、衆院議員を除名された。その翌年12月、日本は太平洋戦争に突入する。
「国民が政府を信頼しているのをいいことに、『あった』ことを『なかった』と言う。戦前の日本はそうして転んでいったのです」
明らかに、安倍首相を意識した発言だ。
自民党内で「安倍おろし」の風が吹かないのをいいことに「あった」ことを「ない」と言い続けているのが、安倍官邸と、忖度官僚、そして一部の大学関係者たちである。
ウソをついている人間は、「知らない」「記憶にない」「していない」と結論だけは言うが、その根拠となる細部を説明できず、理解不能な言い方で、その場を切り抜けようとする。
安倍首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏の記者会見もまさにそうだ。理由なき「緊急会見」をセットし、加計問題を追及してきた東京のメディアや雑誌、フリーランスの記者を閉め出したうえで、かみ合わない応答という武器を繰り出す「不意打ち」だった。
岡山の記者は、加計学園の本拠を抱えているといっても、学園からの情報発信はなく、獣医学部新設をめぐる疑惑にはほとんどタッチしていない。取材の中心は永田町と今治市であり、大メディアにとっては基本的に本社マターだ。
ようやく巡ってきた加計孝太郎氏への質問が通り一遍で突っ込み不足だったのも、ある意味やむをえないだろう。しかし、参加を呼びかけておきながらわずか25分で終わりという会見時間の仕掛けに屈して、すごすご引き上げたのは記者としていかがなものだろうか。
もちろん、加計学園のやり方は最悪だ。そもそも、加計学園にしかできない獣医教育が可能で、それが重要な国家戦略だというのなら、国民にそれを分かりやすく説明すればすむ話ではないか。それをするべき加計理事長自身が逃げ隠れしたり、ごまかしたりするから疑惑が深まるのだ。
安倍首相との付き合いについて、加計氏はこんな話を周囲に漏らしていたという。
「安倍総理とゴルフに行くのは楽しいけどお金がかかるんだよな。年間いくら使って面倒見てると思う?」(週刊新潮2017年7月20日号)
加計氏がどのように安倍首相と付き合っていたのか。飲食やゴルフなどの費用の大半を加計氏が出していたのではないのか。記者会見ではそのようなことについても追及してほしかった。
image by: GoogleMap(茶トラミッキー)