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米ロ首脳会談は大失敗。「影の政府」を激怒させたトランプの末路

米ロ首脳会談の共同記者会見でロシア寄りの発言を繰り返し、普段は自身に好意的なメディアまでをも敵に回した観のあるトランプ大統領。そんなトランプ氏と貿易戦争を繰り広げる習近平中国国家主席を取り巻く状況も「危機的」となっているようです。メルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、米中両トップの置かれた立場と今後、さらに米中の衝突が引き起こす両国、そして関係諸国が被る深刻な「打撃」と、日本が取るべき政策について論じています。

米ロ首脳会談は大失敗

米ロ会談で、トランプ大統領と軍産学との対立が激化している。一方、中国の習近平も危機的な状態になっている。今後を検討しよう。

米ロ首脳会談の仕掛け人は

米国とロシアとの首脳会談の仕掛け人はイスラエルである。イスラエルは、ロシアにレーダー装置のキー半導体を輸出していて、この半導体や部品がないとロシアの最新兵器は、機能しない。

このため、ロシアはイスラエルとは戦争をしないし、ロシア製最新兵器を使う諸国も、イスラエルと戦争時には、ロシア兵器の半導体の機能が無効化する。

このような関係にイスラエルとロシアはなっているし、ロシアが米国の最新兵器と同様な性能の兵器ができるのも、イスラエルの半導体や部品があるからだ。

イスラエルは、シリアのゴラン高原付近にイラン軍がいることに不安を持っている。イランは、イスラエル打倒を叫んでいるし、パレスチナのハマスを積極的に支援している。そして、イスラエルの基地にミサイルを撃ち込んでくる。この反撃で空爆をイラン軍基地にイスラエルもしている。

このため、イスラエルとしては、イランやヒズボラを排除して、ロシアに積極的にシリア全土で陸軍を展開してほしいと望んでいる。

しかし、そうすると、シリアでロシア軍と米軍が対峙するので、米軍の速やかな撤退をイスラエルは望んでいる。このため、ネタニヤフ首相は、モスクワに飛んで交渉をし、その結果を娘婿のクシュナー補佐官に伝えて、米ロ首脳会議をセットした。

しかし、すべてはシリア派遣米軍に秘密の状態になっている。ロシア軍がシリアに入った時点で、米軍は撤退することになるが、現時点ではない。

米ロ首脳会談と結果

プーチン大統領とトランプ大統領が2人で会議したが、トランプは、シリアヘのロシア軍派遣の代償としてクリミア半島の併合を認めてしまい、また、米国への選挙介入はなかったことなど、多くの点で譲歩したようである。しかし、2人の会話は秘密にされた。

このことで、米国の支配階層の人たちは、米国の調査機関の結論を米大統領が否定する事態に、安全保障上の一線を越えたと認識したようである。いつもトランプ大統領を支持するFOXニュースも批判的に報道している。

トランプは、FOXの報道を見て米国選挙介入否定を否定したが、どうも、ディープステート(軍産学)が動き始めたようである。CIA元高官ケビン・シップは、トランプはケネディー大統領と同じことになる、ワシントンの影の政府は、トランプを追い出すクーデターを計画しているようだと。

そして、元CIA工作員で下院議員のWill Hurdは、「潜伏工作員としてロシアのインテリジェンス機関が人を操っているのを多く見たが、我が国の大統領がその一人になるとは思わなかった」と。これは、完全に米国大統領失格ということである。

このことで、トランプは米ロ首脳会談の失敗を挽回するべく、矢継ぎ早に支配階層の支持が得られる政策を出してきた。中国に対する5,000億ドルの貿易制限とFRBに対しての利上げの中止発言、ドル高阻止の発言などである。このため、円ドルは111円/ドルまで円高が進行した。

それと、再度の米ロ首脳会談を開き、修正する方向のようである。しかし、時すでに遅しという感がする。

というように、トランプ大統領の潮目が変わったようだ。暗殺の可能性が出てきた。強権的な大統領のやり方に影の政府は、とうとう我慢が行かなくなってきた。

習近平の受難

8月に現役と歴代トップの人たちが集まる北戴河秘密会議で、今後の方針や人事などが決まることが多い。今年は、米中貿易戦争になり、今後の中国の方針と人事で紛糾しそうである。

特に習近平国家主席に権力が集中し、個人崇拝の行き過ぎがあり、これに対して、国民や米国からも大きな批判を受けている。中国の強大化、覇権国化などの中国の夢を掲げて、習近平国家主席は権力を取ったが、この見直しを迫られることになりそうである。

中国の国家戦略を担当している王滬寧常務委員の辞任は避けがたいようであるが、中国の体制も大幅に変革して、経済は李克強首相に戻し、そして集団指導体制に逆戻りで総書記の任期も2期までとなる可能性もある。

中国が米国の要求を飲む可能性もあるが、米中貿易戦争に対しては習近平の強行突破の方針になるかもしれない。それには理由がある。

中国のドルヘッグ制破棄か?

米中貿易摩擦で人民元を1ドル=6.8元まで人民元安に誘導して、米国の関税を相殺しようとしているが、この結果、ドル債務返済が難しくなっている。これにより、トランプ大統領は通貨戦争を引き起こした。ドル高修正に向けて米国も動き始めている

このような状況を踏まえて、中国はドルヘッグ制で、人民元の価値を維持しているが、米国への輸出ができなくなると、ドルヘッグ制は意味をなさなくなる。対ドルでの価値を維持して、中国への投資を呼び込むことでドルヘッグ制にしたが、中国への投資は激減するためだ。

世界第2位経済大国の中国のドルヘッグ制で、ドル基軸通貨制度も安定していたが、それを失くし、イランの原油を人民元だけで買うことになると、原油取引でのドルの位置づけも変化する。2重の意味でドル基軸通貨制度が揺らぐことになる。

中国は欧州への鉄道貨物便を去年より80%以上も増やして、米国から欧州に輸出先・輸入先を変更している。これにより、ドルよりユーロの方が良いことになる。経済関係で中欧の一体化が進んでいる。

そして、ドルヘッグ制を止めると、米国債を売却できることになる。ドル資金を放出してもよいことになる。米国債の金利上昇などにつながる。

このため、トランプ大統領は、中国だけではなく欧州も貿易戦争の敵にしている。通貨戦争も中欧に対してだけではなく、円にも影響が出る。

もう1つが、対米貿易もなくなり、企業債務のデフォルトが多発して、金融機関倒産などの金融パニックになる可能性も出てきた。すでに、フィンテックP2P金融の多くが倒産して、投資した資金が返済されないという事態が起きている。

米評論家は、その内大手の金融機関が倒産すると言うが、人民銀行は大手銀行の資金繰りを助けるので、金融パニックは起きないと中国の金融当局はいう。大手国有企業のドル債務デフォルトも人民銀行が肩代わりする可能性もある。ドル切り崩しの一貫で出来るからだ

人民元の通貨量が大幅に増えるが、海外での人民元の信用力がついて、通用し始めている。しかし、それでもインフレが加速することになる。よって、中国では貯金は、大きく目減りする資産なので投資をして保全しないといけない。このため、ベンチャーが多く出現し、急速なイノベーションが起きている。しかし、景気後退が起きるとベンチャーは倒産して投資した金は戻らない

中国経済の変化

中国の経済構成比では、今までは設備投資と輸出の割合が大きく、消費が30%と低かったが、今は消費が50%まで高まってきた。このため、米国への輸出が規制で少なくなった影響はあるが、致命的ではなくなっている

この結果、企業の設備投資が米中貿易戦争でも減らないのは、中国での消費量が増えて、そのための投資を企業がしているからである。そのため、日本の機械受注量も減っていない。米中貿易戦争で中国は構造改革を促進することになる。

このため、習近平の米中貿易戦争強行突破の可能性もある。というより、耐え凌げば米国の覇権を仰臥できる。

その過程で、ドルヘッグ制を止めて、米国債を売却したら米長期金利の大幅上昇ということになり、米国も大きな影響が出ることになる。米中貿易戦争は通貨戦争になり両方ともに経済の潰し合いということになる。

日本の政策

日本はEUとEPAを行い、TPP11には英国が加入するというし、自由貿易の盟主として行動することである。米国が一国主義で行動しても、その拡散を防いでいくことである。

一番の問題は、トランプ大統領は9月にも自動車輸入に対して関税20%を掛ける可能性があるが、それまでにトランプ大統領が影の政府から排除されている可能性も否定できないことになっている。

しかし、20%の自動車関税を掛けると、世界の景気は、一時大きく陰ることになる。これをトリガーに恐慌になる可能性もある。

日本は少子高齢化の波が押し寄せ、人口減少で、日本も構造改革が必要で、農業を大規模化して欧州や米国の農業にも負けない農業を目指すことである。保護貿易を止めて、自由貿易を行い、日本でも儲かる農業を作るしかない。そのためには、離農する農家を増やして、大規模農家を作る施策が必要である。徐々にその方向になってきていると思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?

image by: shutterstock

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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