低迷している売上げ回復したいとき、過去の成功事例に倣うのは効率が良い方法ですよね。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者・梅本泰則さんが、社員一丸となって「チームビルディング」や「経営目標の再確認」に挑み、見事なV字回復を遂げたあるクラフトビールメーカーが実践し、商品に付加価値を加え集客にも成功した3つのアイデアを紹介しています。
ヤッホーブルーイングV字回復の秘密
米国ボストンの地ビール「サミュエル・アダムス」を飲んだ時、その美味さにびっくりしました。米国で地ビールがブームだったころのようです。今はクラフトビールと言っていますが、日本でも地ビールブームがありました。
今回は、そのクラフトビールトップ企業のマーケティングからヒントをもらいます
よなよなエールの話
地ビール「よなよなエール」で有名なヤッホーブルーイングの戦略を聞く機会がありました。本やネットの情報だけでは分からないノウハウを披露していただき、有益なセミナーでした。
ヤッホーブルーイングは、星野リゾートの別会社で、1996年の設立です。創業当時は、地ビールのブームに乗って好調でした。ところが、その後8年連続で赤字を計上し経営危機に。
しかし、2008年以降、右肩上がりに収益を伸ばし、今ではクラフトビールメーカー200社の中で、シェアNo.1を確保しています。
どのようにして、V字回復をしたのでしょうか。また、ネット販売の楽天市場での優良店を表す「ショップ・オブ・ザ・イヤー」として10年連続で表彰されています。どんな手法をとったのでしょうか。
セミナー終了後、その秘密をもっと知りたいと思い『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』(井出直行・著/東洋経済新報社)を読んでみました。いろいろなことが分かる、役に立つ本でした。その中から、私の心にとまった点を紹介したいと思います。
私の知っているスポーツショップの中にも、毎年10%~20%売上を落としているお店がありますので、そんなお店の方にも参考になるのではないでしょうか。
この本で強調されていることは「チームビルディング」です。ヤッホーの井出社長は、業績が回復できた一番の要因は、「チームビルディング」がうまく行っているからだと言います。つまり、社員の皆が同じ方向に進んでいけるようになったことが大きいのだというわけです。
ヤッホーが赤字のころは、社内コミュニケーションも良くなく、お通夜のような状態が続いていました。それを何とかしようとして取り入れたのが「チームビルディング」。その際に、いくつかの大事なことが確認されていきました。
確認された大事なこと
まずは、ヤッホーブルーイングの「存在意義」です。
- 画一的な味しかなかったビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出する。そして、ビールファンにささやかな幸せをお届けする。
いいですねえ。「新たな文化の創出」と「ささやかな幸せ」がキーです。井出社長は、これを「ミッション」と言っていますが言い換えれば「企業理念」ということになります。
次は「企業文化」。
- フラット
- 究極の顧客志向
- 自ら考え行動する
- 切磋琢磨する
- 仕事を楽しむ
- 知的な変わり者
の6つです。これらは「クレド」とか「行動規範」と言われるものでしょう。
その次に決めたのが「ビジョン」です。
- クラフトビールの革命的リーダーとして、2020年にシェア1%を目指す。
いわば、「経営目標」ですね。
「企業理念」「クレド」「経営目標」の3つが確認されれば、もう大丈夫。経営がぶれることはありません。そして、それらが社員に浸透していけば、皆が同じ方向に進んでいけるのです。
続いて、マーケティングに必要な「誰に、何を、どうやって」提供するかということが決められていきます。
「誰に」は、「知的な変わり者」。ビールを連想させない人を対象としているところが良いですね。
「何を」は、「僕らが目指す理想の味」です。これも、単なる商品をさしてはいません。いわゆる、差別化のできる価値を言っているのでしょう。
そして、次は「どうやって」です。ここがヤッホーのマーケティングのキモではないでしょうか。本では、いくつかの例が紹介してあります。
ヤッホーのマーケティング
まず、ネット販売を始めるにあたって、メルマガに力を入れました。ヤッホーのビールへのこだわりを訴えることが重要です。ビールのうんちくや、醸造設備のことも話題にします。つまり、ヤッホーにしか書けないことを情報発信し続けるのです。すると、これが効果を発揮し始め、一部の人たちが反応し始めました。徐々にヤッホーのファンが増えていきます。
次に、お客様が感激するような企画を考えました。例えば、「父の日プレゼント」ビールセットの販売。お客さまから父親へのメッセージカードを書いてもらい、ギフトに同封します。それをもらった父親は、感激するに違いありません。つまり、商品ではなく感動を届ける企画です。
これなら、スポーツショップでも同じような企画はうてます。部活に入った子供に親などから「入部記念セット」を贈る企画です。ギフトセットには、お子さんへのメッセージはもちろん、用具の修理券や、技術向上用DVDなども入れておきます。そのお店にしかできない企画です。
さらに、ヤッホーは別のイベントも行っていきます。お客様と直接触れ合う「宴(うたげ)」というイベントです。第1回目は恵比寿のビアパブ。学校の文化祭のような内容だそうです。回を重ねて、今は1000人を超えるファンが集まります。
そうです。ヤッホーが行う企画イベントは、常に「ファンを増やす」ことを第一の目的としています。しかも、「熱狂的な」ファンです。井出社長は、100人のうち1人が熱狂的なファンになっていただくことが大切だと言っています。それが、業績を上げるための秘密だと言っていいでしょう。
決して、うまいビールやメルマガの面白さだけに秘訣があるのではありません。すべて「ファンづくり」につながるためのことを考え続けることが重要です。そして、そのことを「チームビルディング」によって社員の皆さんが理解をしています。だからこそ、今なお業績が上がり続けているのでしょう。
年に1割も2割も売上を落としているスポーツショップの店主はもう一度、商売の本質を考えてみましょう。
■今日のツボ■
- V回復をしたヤッホーブルーイングの手法は参考になる
- ヤッホーは「チームビルディング」を通じて、大切なことを決めた
- 会社の向う方向を、全員が理解していることが大切である
image by: よなよなエール醸造所 ヤッホーブルーイング - Home | Facebook