2018年秋の自民党総裁選不出馬を決めた岸田文雄氏ですが、この判断が「安倍首相派閥と良好関係を保つ為には賢明だ」とするのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんはその根拠として、安倍政権が外交で、北朝鮮を除く米中露韓と良い関係を保った手腕は高く評価できるとし、その現場を外務大臣として歩んだ岸田氏は、外野の「岸田潰し」に留意し時期を待てば更に飛躍できる、との理由を上げています。
岸田さんは、なぜ不出馬で正解なのか?
皆さんご存知のように、私は安倍総理を支持しています。信者ではありません。消費税再引き上げ、3K外国人労働者の大量受け入れ、残業代ゼロなどに大昔から反対しています。
それでもなぜ支持しているかというと、最大の理由は、「外交がいいから」です。安倍総理の前、民主党の総理が3人つづきました。その時、日本はどんな状態だったか覚えておられますか?
- 「トラストミー」鳩山さんは、日米関係をぶち壊した
- 小沢さんは、北京に飛び、「私は人民解放軍の野戦軍司令官である!!!」と宣言していた
鳩山政権は、アメリカとの関係をぶち壊し、中国の属国になろうとしていた。ところが…。野田さんは、さらに先をいきます。2012年の状況をみてみましょう。
- 日中関係は、「尖閣国有化」で「戦後最悪」になっていた
- 韓国の李大統領(当時)は、「日王が韓国に来たければ謝罪しろ!」といい、日韓関係は、最悪になっていた
- ロシアのメドベージェフ首相が北方領土を訪問。日ロ関係は最悪になっていた
というわけで、民主党の総理3人で、日米関係、日中関係、日ロ関係、日韓関係は最悪になっていた。それで、日本は世界で孤立していたのです。
その後、安倍時代がはじまった。今はどうですか?
- 日米関係は、良好
- 日ロ関係は、米ロ関係が最悪であるにも関わらず、良好
- 日韓関係は、李、朴時代よりかなりマシ
- 日中関係は、野田時代より相当マシ
ということで、安倍日本は、北朝鮮をのぞくほぼすべての国と良好な関係を築いている。私たちは、光のスピードで、忘れていきます。しかし、2012年の状態がどうだったか、ここで思い出していただきたいです。
勘違いしがちなのは、日本とが外国の関係が、「勝手によくなった」と思ってしまうこと。そうではないのです。民主党は、たった3年で、全世界との関係をボロボロにした。戦略のない人が総理になれば、こういうことになる。だから、今のいい状態は、「安倍内閣が絶え間なく努力している結果」なのです。
安倍総理の後は、岸田さんがいい理由
私は、安倍総理支持ですが、安倍さんの後は、「岸田さんがいい」と考えています。なぜでしょうか?
岸田さんは、長年外務大臣を務めていました。期間は2012年12月から、2017年8月です。岸田さんが外相だった時、世界では何が起こったのでしょうか?
- 2012年9月、野田内閣、尖閣国有化。日中関係最悪に
- 2012年11月、中国、「反日統一共同戦線」構築をロシア、韓国に提案
(●全国民必読証拠→反日統一共同戦線を呼びかける中国) - 2013年12月、安倍総理、靖国を参拝。世界的バッシングをうける
(中韓に加え、アメリカ、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが、靖国参拝を非難した。もちろん、「反日統一共同戦線戦略」の結果です) - 2014年3月、クリミア併合
結果、最悪だった日米関係が改善する。 - 2015年3月、AIIB事件
イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など親米国家群が、アメリカを裏切る。日本は、アメリカを裏切らなかった。そして、総理の「希望の同盟演説」で日米関係は、最良に - 2015年12月、日韓慰安婦合意
日韓関係が改善される。 - 2016年12月、プーチン来日。
日ロ関係が、劇的に好転する。
中国の戦略は、日米関係、日ロ関係、日韓関係を破壊し、日本を孤立させること。しかし、安倍総理は、逆に日米、日ロ、日韓関係を改善させ、中国の戦略を無力化させたのです。RPEは、この動きを実況中継してきましたが、まさに激動の時代でした(まだ、つづいていますが…)。
岸田さんは、安倍総理が、反日統一共同戦線戦略を無力化させていく過程を、外相としてずっと見てきたし、深くかかわってきた。だから、そのプロセスを全部知っている。岸田さんが総理になれば、反日統一共同戦線無力化戦略をつづけてくれることでしょう少なくとも、全然かかわっていなかった石破さんよりは、可能性が高い。
それで、私は「安倍さんの後は、岸田さんがいい」と思うのです。
不出馬で正解
ところで岸田さん、今回の総裁選には「不出馬」だそうです。私は、「とても正しい決断」だと思います。なぜでしょうか?
一番の理由は、私が安倍総理を支持しているからです(安倍続投が「日本の国益」と思っているからです)。次の理由は、岸田さんが出馬しても、勝てないからです。最後の理由は、勝てないだけでなく、その後「つぶされる」可能性が高いからです。FNN PRIME8月2日に、こんな話がでていました。
岸田氏周辺に対して、総理側が出馬を警戒しているということが伝わり、安倍首相側が「負けた派閥は、冷遇を覚悟すべきだ」と語ったという情報も駆け巡った。こうした動きの中で岸田派中堅はこう語った。「出馬するってことは、総理はどんなことをしても岸田派を崩しにくるってこと。総裁選は国政選挙とは違う。つまり魅力的なポストを約束したり、お金をばら撒いたり何でもありなんだよ。そうなったらうちの派閥はもたないだろう。それは岸田会長が一番よく分かっている」つまり、安倍総理と戦うことは結果的に派閥を分断される危険性があるというわけだ。
というわけで、岸田さんは、安倍総理を全面支持して、よいポストをゲットした方がいいと思います。
岸田さんは、「安倍リアリズム外交の継承者」として、総理になるべきですね。その為には、常に総理と良好な関係を築いておく必要がある。総理に対抗して出馬して、後でちゃっかり「後継者にしてください」というわけにはいかないでしょう。
人生、「決断力」は大事です。大事ですが、時流を見極めて、「追い風が吹いているとき」「勝てるとき」に決断することも大事。
image by: 岸田文雄 - Home | Facebook