今やすっかり消費者の意識の中に定着した観のあるB級グルメ。日本全国津々浦々、様々なB級グルメが存在しますが、そこに繁盛のヒントが隠れているとするのは、無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさん。中でも、「B級オン・ザ・ライス」に注目しているそうですが、一体なぜ?
日本全国、B級オン・ザ・ライスが熱い! その理由は?
全国各地に、不思議な魅力を持った“オン・ザ・ライス”メニューが存在します。地元の人びとが愛してやまない、ワンプレート料理です。“オン・ザ・ライス”、すなわち、ご飯の上におかずをのせてしまう。丼物もそうですが、ここでご紹介するメニューは、すべてが1つの皿にのっています。
まずは、北海道根室市の『エスカロップ』。ケチャップライスもしくはバターライスの上に、ポークカツレツをのせて、ドミグラスソースをかけたもの。ケチャップの方を「赤エスカ」、バターライスの方を「白エスカ」と呼びます。名前の由来は諸説がありますが、一般的にはフランス語の「エスカロープ(escalope・肉の薄切り)」とされています。
同じく、北海道根室市の『オリエンタルライス』。ドライカレー風のご飯に、焼いた牛サガリ肉(横隔膜の一部)をのせ、ステーキソースをかけたもの。名前の由来は定かではなく、同様の料理が各地に存在しています。
石川県金沢市の『ハントンライス』。ケチャップで味つけしたバターライスの上に、半熟薄焼き玉子、白身魚のフライをのせ、タルタルソースをかけたもの。白身魚はエビフライの場合もあり、ソースにもバリエーションがあります。名前の由来は、「ハンガリーの“ハン”とフランス語でマグロを意味する“トン”を合わせた造語である」と言われていますが、ちょっと納得し難いですね。
福井県越前市の『ボルガライス』。オムライスの上に豚カツをのせ、各店独自のソースをかけたもの。名前の由来は、イタリアのボルガーナ村で食べられていた料理に似ているという説をはじめ、さまざまあり、定かではありません。
兵庫県加古川市の『かつめし』。ご飯の上にビフカツもしくは豚カツをのせ、ドミグラスソースをかけたもので、ゆでたキャベツが添えられています。名前の由来は、説明不要ですね。
佐賀県佐賀市の『シシリアンライス』。ご飯の上に、甘辛いタレで炒めた薄切り牛肉をのせ、レタス、トマト、キュウリなどの生野菜を盛りつけ、上からマヨネーズをかけたもの。名前の由来は、佐賀の隣の長崎に「トルコライス」という料理があるのですが、それに対抗するために名づけられたという説があります。「トルコ」の隣には「シリア」があり、長崎と佐賀が隣であることから、長崎のトルコライスに対抗して、隣のシリアから命名したのではないか、とされています。
長崎県長崎市の『トルコライス』。ピラフの上に、ドミグラスソースのかかった豚カツとパスタ(ナポリタン)をのせたもの。名前の由来は、トルコ料理に似たものがあるという説やピラフ・豚カツ・ナポリタンの3種類を、3色のトリコロールカラーに重ね合わせたという説などがあります。
私が調べたのはこれくらいですが、どれもこれも美味しそうです。じっくり、ガッツリと味わってみたいものです。ご飯におかずをのせたものは、なぜか人びとを魅了するようです。
では、なぜこうした“オン・ザ・ライス”メニューが、ご当地B級グルメとして、地元の人びとに愛されているのでしょうか。その理由は、まず丼物との違いを考えればわかります。
丼物は、狭い空間に押し込められ、“小さな世界”をカタチづくっています。食べる時も丼の領空内で収まるように、注意しながら食べなければなりません。
その点、皿にのった“オン・ザ・ライス”の領空はかなり広いと言えます。ポロッと落としても、気遣いがいりません。のびのびと食べることができます。気を遣わない分、食べることに集中できます。
“集中”という点では、丼物もガツガツと集中できるのですが、“小さな世界”に浸っているせいか、一所懸命過ぎて、味を楽しむ余裕がありません。とにかくすばやく口に放り込むのです。
“オン・ザ・ライス”は、皿の風景を眺めながら、次はどこから食べようかと、迷う楽しみがあります。美味しさを一気に流し込むか、ひとつひとつの具材の味を噛み締めながら、ゆったりと味わうか、の違いがあります。あくまで私の主観なのですが、これが丼物と“オン・ザ・ライス”の違いだと考えています。どちらが良いとか悪いとかではありません。まったく好みの問題です。
で、どちらがB級グルメとして、“らしさ”を持っているでしょうか。丼物は、高度成長期の流れで、ササッと掻き込み、すばやく食べられることが前提で生まれたのではないでしょうか。忙しい日常の中で、食べることに時間を割いていられない人が食べるものなのです。つまり、現代社会においては、都会的な食べ物なのです。
“オン・ザ・ライス”は、皿にのっているので、必然的に急いで食べることができません。フォーク、ナイフ、スプーンなどを使うため、掻き込むこともできません。つまり、時間に余裕のある人でないと食べられないのです。ゆったりと時間の流れる地方向きだと言えます。なので、地方に“オン・ザ・ライス”メニューが多いのではないでしょうか。日常の食事をゆっくりと楽しみたいと願い、またそれが比較的許される地方に、“オン・ザ・ライス”が生まれたように思います。
都会の飲食店にも同様のメニューはあるでしょうが、地域全体に広がり、“B級グルメ”として認知されているものは少ないのでは。
まだまだ全国各地に、“オン・ザ・ライス”はあるでしょう。地元で愛されるご当地B級グルメをもっともっと掘り起こしてみれば、そこに繁盛メニューのヒントがあるのではないでしょうか。
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