一定の成功を収めるとフランチャイズなどで多店舗経営に乗り出す企業が多いなか、「直営」にこだわり行列ができる天ぷら専門チェーン店があります。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、「天麩羅処ひらお」の人気の秘密とその戦略を分析・紹介しています。
直営のメリット
福岡・博多で行列ができる人気の天ぷら専門チェーン店を分析します。
● 天麩羅処ひらお(天ぷら専門チェーン店)
戦略ショートストーリー
天ぷら好きな方をターゲットに「素材や直営へのこだわり」に支えられた『揚げたてで美味しい天ぷらがお手ごろ価格で楽しめる』等の強みで差別化しています。
「こだわりの天ぷら」だけでなく、無料で惣菜や漬物を提供し、コストパフォーマンスを高め、地域に密着することで顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
直営のメリット
今号では「天麩羅処ひらお」がこだわっている「直営」について考えてみましょう。
「天麩羅処ひらお」が「直営」にこだわる理由のひとつが味の統一を図ることのようです。フランチャイズを展開するには、基本的に誰がやっても同じようにできるような仕組み(マニュアルなど)を整えることが必要になりますが、「天麩羅処ひらお」の味は、きめ細かなノウハウに支えられているため、修業を積んだ職人でないと維持することが難しいようです。「天麩羅処ひらお」のノウハウはマニュアルに表現しきれないものがあるということでしょう。
ですから、フランチャイズでは「天麩羅処ひらお」の天ぷらの味を維持することは難しい、つまり、味の管理が行き届かないと判断しているわけです。細部まで管理が行き届きやすいことは「直営」だからこそのメリットですから、「直営」にこだわるという「天麩羅処ひらお」の経営上の判断は味を維持することを優先していることの現れでもあります。
一方で、「直営」にはデメリットもあります。その一つに多店舗展開が難しいことがあげられます。直営で多くの店舗を出すには、多額の資金が必要になりますし、多くの人材を採用する必要がありますので、容易ではありません。
こういったデメリットもありますが、「天麩羅処ひらお」が差別化を図る上では、メリットの方が多いように見えます。なぜなら、「直営」により味へのこだわりを示すことになっていますし、自社の店舗を任せられる人が育たないと店を出さないという姿勢は顧客を大事にしているということを伝えられますし、多店舗化して全国チェーンにならないという選択をしたことが、地域の顧客にとっては、自分たちの店として認知され、地域密着度を高めることにつながっているからです。
40年をかけて、地域密着度が高めながら、地域の顧客から愛される店舗に育ってきたのでしょう。この顧客との関係性に支えられた強みは、簡単には崩れることはないです。
以前、本メルマガ「マクドナルドを倒した、函館『ラッキーピエロ』バーガーのズルい戦略」で取り上げた函館で愛される店舗「ラッキーピエロ」も同様ですが、地域に密着し地域の顧客と密接な関係を構築できた店は、全国展開しているチェーンとも渡り合えることを示しています。
「直営」にこだわり、地域密着戦略を実践している「天麩羅処ひらお」の今後に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):天ぷら専門店
- 競合(お客様の選択肢):天ぷらチェーン など
- 状況:天丼・天ぷら市場は拡大傾向のようです。
■強み
『揚げたてで美味しい天ぷらがお手ごろ価格で楽しめる』
- ひらお看板メニューのえび天。
→えび本来の甘みとプリプリした食感、衣のサクサク感を楽しむことができる。 - 特製の天ぷら粉を使用
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 素材へのこだわり(ひらおはもともと鮮魚店)
→「国産が基本」、「その日に市場から仕入れた新鮮な魚」、「産地指定」による旬の産地の素材を厳選。 - 直営へのこだわり
→社員が責任者を務める店か、自社で修行を積んだ社員の独立店以外の店舗は、出店しない。 - 40年の歴史、地域の顧客から愛される店舗
上記のような、こだわりなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 天ぷら好きな方
◆戦術分析
■売り物、売り値
『こだわりの天ぷら』
<人気定食ベスト3>
1位:「お好み定食」 880円
→えびをメインに、九州産の豚・白身・いか・野菜3品がついたボリュームのあるセット。えびは、社長みずからインドネシアにまで足を運び仕入れてくる特殊な養殖方法で育てたブラックタイガー
2位:「天ぷら定食」 770円
→新鮮な魚をメインにしたひらお定番の定食メニュー
3位:「あじわい定食」 770円
→コストパフォーマンス抜群の定食
- 保存料や添加物を使わない
- 大根おろしたっぷりの天つゆが特徴
- ごはんは島根県産コシヒカリ
- 無料の惣菜、漬物
■売り方
- Facebook公式ページでキャンペーン情報などを発信
■売り場
- 福岡都市圏に6店舗
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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