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【書評】1K6畳、27000円。事故物件に住んだら人間はこうなる

自殺、他殺、孤独死など、何らかの理由で人が亡くなった不動産物件、通称「事故物件」。多くの人が寄り付かない、そんな物件にあえて自ら住もうとするピン芸人「松原タニシ」さんが書いた、事故物件に住んで体験したことをまとめた書籍があることをご存知でしょうか? 無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが、そんな世にも奇妙な本について詳しく紹介しています。

事故物件怪談 恐い間取り

松原タニシ・著 二見書房

カバーは黒地に文字白抜き、本体の天と地と小口も黒、開くと黒枠に囲まれた本文という、あまりに不吉な装幀の本『事故物件怪談 恐い間取り』を読んだ。赤い腰巻には「恐くて部屋に入れない…!」とある。著者は“事故物件住みます芸人”松原タニシ、松竹芸能所属のピン芸人だという。

この芸人が生活してきた事故物件での体験談実際に事故物件の住人だった人に取材した話、加えて心霊スポット、怪奇現象が起こる“ある意味”事故物件な場所での出来事などを、間取りや地図付きで紹介する。事故物件とは自殺、他殺、孤独死など、なんらかの理由で人が死んだ物件をいう。松原はこれまで、このネタで“テレビに出るために”藁をも掴む思いで、五件の事故物件に実際に住んできた。

まったく売れない芸人生活も10年過ぎ、先輩の北野誠(怪談分野で有名)に「事故物件に住まへんか?」と言われたとき、「何を言っているんだこの人は」と思うと同時に「これをできるのは自分しかいない」という根拠なき自負があったという。事故物件に実際に住んで心霊現象を検証する芸人。霊感がなく、オカルトに強かったわけでもない松原は、「人と違うこと」に執着する人だった。

「納得しないと気が済まない」人でもあった。「僕と事故物件」で13件、「誰かの事故物件」で20件、「土地の事故物件」で16件、こわい話、いやな話が収録されているが、この芸人、自分が怪異に出会ってもあまり怖がらず淡々としている。おいしいネタのためには怖くても怖くない。事故物件を求めて転々と住まいを変えた。

最初に住んだマンションでは、何か不思議な現象が起きないかと、常に部屋の中をビデオカメラで撮影を続けた。初日からオーブと呼ばれる丸い発光体が映り込み、そのうち布のような浮遊物が映った(画像掲載あり)。このマンションは有名な殺人事件があってから事故物件と認定されたが、住民が幽霊を見る、車にひかれるなど、ずっと前から何かがあるトンデモ物件だったと知った。

町の不動産屋で「事故物件ありませんか?」と聞く、怪し過ぎる男だ。破格に安い物件が三つもあった。その理由は「漢字二文字で、としか言えません」とのことで、殺人、自殺、病死のあった部屋だと理解し、迷わず殺人部屋を選択した。水中でしゃべるような変な電話がかかってくる母親を殴打し浴槽に沈めて殺した、精神病の息子の部屋だったと判明する。すると、その母親からの電話か? 退去してから判明したのだが、直近の路上通り魔の犯人がその息子だった。

三件目は事故物件の部屋が確保できず、真下の部屋(普通物件)に入居。まったく何も起こらず一年後に退去したが、その直後、事故物件の部屋の住人が自殺した。正式な三件目、女性がドアノブ首吊りで死んだ部屋。部屋にいると頭痛、体調最悪、些細なことでイライラする。「大島てる」サイトで調べると、前の前の住人がロフトで首吊りしたと判明する。二重の事故物件だった。

四件目は1K6畳、27,000円と超破格。薬の過剰摂取で女性死亡。部屋に入ったとたん動けなくなり、気絶。強烈な倦怠感に襲われ気分が悪くなる。数回しか行っていない。五件目は自殺者の出た部屋、著者が入れば事故物件ロンダリングで、彼の次の入居者には前の前の住人の自殺は告知しなくていいのだ。この部屋では、寿命が刻一刻と吸い取られているような倦怠感に襲われる。

その後のページで、事故物件間取りギャラリーがあるが、どうにもこじつけっぽい。核心は部屋そのものである。間取りではない。この本のタイトルは間違いである。残りの3/4くらいが著者の取材した「こわい話」集である。といっても、そういう話が大好きなわたしは楽しめた。さすがに眠る前には読まないが。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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