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本物の京都通だけが足を運ぶ。歴史的価値高き名所、新熊野神社へ

数多くのパワースポットが存在する京都ですが、「名のあるスポットは行きつくした」というリピーターの方もいることでしょう。ところが、1,000年以上の歴史を誇る京都は、思った以上に奥が深いのです。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英 学(はなぶさ がく)さんが、そんな京都通もうならせるような、知る人ぞ知る名所を紹介しています。

新熊野神社

京都の新熊野(いまくまの)神社は、平安時代に後白河法皇によって創建された神社です。法王お手植えと伝わる樹齢約900年の大樟があり見上げるととても迫力があります。境内では熊野の御神木とされる椥の木や御神鳥とされる八咫烏を形どったものを目にします。

また熊野古道を再現した京都熊野古道を散策することが出来ます。伝統芸能にも深い関わりがある新熊野神社の見所やゆかりの人物などをご紹介します。

平安時代後期に生涯で34回も熊野詣をしたといわれている後白河法皇によって新熊野神社は建てられました。京の都から遠く離れた熊野までわざわざ行かなくても熊野へ参詣できるようにと創建されました。

造営には時の権力者、平清盛が当たりました。後白河法皇は法住寺殿に住み院政を敷いていたので、そのすぐ近くに鎮守社として新熊野神社を建てたのです。そして鎮守寺として建てられたのが三十三間堂です。後白河院の時代はあの辺り一帯が政治の中心だったということです。

新熊野神社は東大路通沿いにあり、通りからでも大きな樟(くすのき)が見えるのですぐに分かります。この樟は創建当時に紀州熊野から運ばれたもので後白河法皇お手植えと伝えられています。「影向ようごうの大樟」と呼ばれています。影向は神仏が仮の姿となってこの世に現れるという意味があるようです。この大木の姿を見上げるだけでも参拝する価値はあります。私は年に一度、1月に16社御朱印巡りで必ずお参りしに行く場所です。

樟は生命力が強く大木となることも多いため、各地の神社の御神木になっています。私が週末を過ごす熱海の来宮神社には樹齢2,000年の大楠が有名でパワースポットとなっています。このように古くから樟は信仰を集めてきたのです。

新熊野神社の「影向の大樟」も健康長寿特にお腹の神様として知られてきました。大樟の周囲には回廊が設置されていて太い幹の周りを一周することもできます。

本殿の両側には、熊野の御神木ナギの木があります。熊野では椥は凪に通じ霊木とされてきたのです。三方を海に囲まれた場所にある和歌山県の熊野では、波が穏やかになる凪(なぎ)を望んだのでしょう。新熊野神社にもかつては境内に多くの椥の木があったことから「凪の宮」とも呼ばれていたようです。

熊野では伝説の霊鳥・八咫烏ヤタガラスが御神鳥とされてきました。そのため新熊野神社でもお守りや絵馬に八咫烏の姿をを見ることが出来ます。拝殿の屋根のにも3本足の八咫烏が左右に飾られています。

また新熊野神社の境内奥には熊野の聖地を再現した熊野古道もあります。京都にいながらにして熊野三山を参詣できるという後白河院の願いが見て取れます。

新熊野神社は猿楽ゆかりの地でもあります。猿楽は奈良時代に唐から伝来した散楽や日本古来の芸能と融合し完成した芸能です。猿楽は観阿弥・世阿弥父子によって新熊野神社において、室町幕府三代将軍足利義満の前で演じられたことは有名です。以後義満の庇護を受け隆盛を極めたとされています。境内には猿楽や観阿弥・世阿弥父子についての石碑があります。

新熊野神社は有名な観光寺院ではないですが、歴史的にはとても価値の高い名所であり見所満載です。是非一度足を運んでみて下さいね。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: 京都フリー写真素材

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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