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入社させてからでは遅い。「職歴・病歴」2つの詐称の見抜き方

人手不足が叫ばれる昨今、履歴書吟味の時間も惜しく急いで雇い入れた人材が、後にとんでもないモンスター社員っぷりを発揮するも、すぐに解雇できない場合があるのはご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、選考の前に「予め定めておくべき就業規則」や人材の見極めのポイントを解説しています。

御社では、採用時の選考、しっかり行っていますか?

有効求人倍率は高水準が続いています。企業における人手不足感もかなり高まっているのではないでしょうか? 特に、中小企業の人手不足が深刻なようです。

だからといって安易に人を雇えば、後々とんでもないトラブルに発展する場合もあります。人手不足だからといって選考基準を引き下げたり、ろくに面接もせずに雇えば、とんでもないモンスター従業員を雇入れてしまう可能性が高まります。

みなさんもご存知のように、会社は従業員を簡単には解雇できません。もともとは、民法の「契約自由の原則」の下、労働契約は解約(解雇)を含めて当事者同士の自由に定めることができました。しかし、それでは従業員にとって不利益な労働契約を強引に結ばされてしまいかねないので、労基法で労働条件の最低基準を定めました。

解雇については、労基法では解雇する30日前までに従業員に伝えなければならないことになっています。労基法では解雇について、それ以外の制限をしていません(労災休業中や産前産後休業中等の労働者についての解雇制限はあります)。ところが、司法が法を拡大解釈し、実質的に解雇ができないように規制を加えました。それが現在法制化され、労契法16条になっています。

最終的には裁判で決着をつけることではありますが、会社が従業員を解雇するのが極めて難しいのが今の日本社会です。解雇ができないのなら、解雇しなくて済むような従業員を雇入れるしかありません。少なくとも、問題従業員を雇入れるわけにはいきません。まずは、採用時に経歴詐称や病歴詐称がないか注意していきましょう。

経歴詐称については、学歴詐称よりも職歴詐称への対応が重要です。何らかの問題従業員やモンスター従業員は、転職を頻繁に繰り返しています。1つの会社での雇用期間もあまり長くありません。ただ、それを正直に履歴書に書くと、会社側の心証が悪くなり採用してもらえません。

そこで、職歴詐称を行います。履歴書だけから職歴詐称を見抜くのは難しいかもしれませんが、少なくとも、採用時には前職の雇用証明書を提出させるべきです。また、応募時には、履歴書だけでなく職務経歴書も提出させることでウソを見抜けることもあります。

職歴に不自然な点があれば採用前にきちんと説明を求めるべきですし、不審な点があれば採用すべきではありません。ただ、そのような従業員を間違って採用してしまった時のために、就業規則の懲戒事由に必ず経歴詐称を入れておきましょう

また、病歴詐称も問題となることが多いです。とくに、腰痛等の慢性病やうつ病などのメンタルヘルスについては、きちんと確認しておくことが必要です。労災の休業補償や健康保険の傷病手当目的で病歴詐称で入社し、すぐに病欠してしまう者もいます。

採用時には病歴についてしっかり確認し誓約書等を書かせるとともに、病歴詐称があった場合には、採用取消しや懲戒処分を科せるよう、就業規則を整備しておくことが重要です。

とにかく、一旦雇入れた者を解雇することは、大きなトラブルに発展する可能性を秘めています。トラブルの未然防止のためには、採用時の見極めと就業規則等の整備が重要であることを忘れないでください。

以上を踏まえて、改めてお聞きします。

「御社では、採用時の選考、しっかり行っていますか?」

image by: Shutterstock.com

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就業規則とは、入社から退社までの「ルールブック」であり、労使トラブルを未然に防ぐ「ワクチン」であり、効率的な事業運営や人材活用を行うための「マニュアル」でもあり、会社と従業員を固く結びつける「運命の赤い糸」でもあります。就業規則の条文一つ一つが、会社を大きく発展させることに寄与し、更には、働く人たちの幸せにも直結します。ぜひ、この場を通じて御社の就業規則をチェックしていただき、問題が生じそうな箇所は見直していただきたいと思います。現役社会保険労務士である私が、そのお手伝いをいたします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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