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武田教授が苦言。医師たちが続ける高齢者への誤ったアドバイス

2025年には認知症患者が700万人に達するともされていますが、これまでの政権が取ってきた「高齢者対策」は決して充分なものとは言えません。先日掲載の「ようやく本腰。憲法改正ではなく少子化問題解決を選んだ安倍総理」では総理の「高齢者の皆さまがいくつになっても活躍できる社会を実現する」との談話を紹介しましたが、どのような施策を取るつもりなのでしょうか。武田邦彦中部大学教授は今回、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、高齢者問題における「残された7つの重要課題」をあげ早急な解決を迫るとともに、自身の経験をもとに「高齢者の運動や体力回復」についての研究や正しい知識の重要性を説いています。

「老人は何もするな」は正しいのか?老人の貴重な時間をなきものにする社会

今から30年前、バブル崩壊の直前に、私は一編の随筆を書きました。タイトルは『老婆の1時間』。当時まだ景気の良い時代でしたが、それでも「高齢化」、「社会の停滞などが感じられ始めた時でもありました。

1人の老婆が、夕日がすべてを赤く染めている初冬の縁側に座って、日向ぼっこをしています。その家の前には細い道があって、そこを1日の勤めが終わりかけている若い男性が忙しそうに往復している…。老婆は「ああ、あたしにもああいう時代があったわね」とつぶやく…。そんな光景を描いて、私は若干の感想を述べました。

いったい、この老婆は体のどこかが悪いのだろうか?頭でもぼけたのだろうか?そんなことはないのです。老婆はかくしゃくとし、体のどこも悪くなく、頭も明晰です。では、なぜ老婆は縁側で日向ぼっこをしているのか…。それは老婆自身の問題ではなく、周囲が老婆に日向ぼっこを強制しているのだ、というのが私の結論でした。

つまり、「老婆の1時間」も「若者の1時間」も、その人その人の人生にとっては同じ1時間で、老婆の1時間をなきものにしているのは、実は老婆自身ではなく社会なのだ、ということです。

歳を取ると、周囲から厳しく攻撃を受けます。その攻撃とは、「歳を取っているのだから、そんなことはしない方が良い」に始まって、「歳だから脂っぽいものは食べない方が良い」、「歳相応の地味な服装をしなさい」、「歳だから無理をしないように」、「いい年して異性に興味を持つなんて!」…と生活のなにもかにも攻撃を受けます

それも質の悪いことに、言っている方は自分が老人を攻撃しているなど全く思わず、それどころか「老人をいたわっていると錯覚しているのですから、質が悪いのです。このような攻撃の中でも特に悪質なのが「無理をするなというアドバイスで、もしその老人が余命数年とすると、無理するなというアドバイスに従うたびに人生の時間を失うのです。

実は「高齢者問題」や「認知症」が話題になってきたのは、1990年代、つまりバブルが崩壊した後で、自閉症研究の黒田洋一郎先生は1992年に『ボケの原因を探る』という書籍を岩波新書に出しておられます。しかし、政府などの動きは鈍く、認知症などの本格的な統計がとられたのは2012年から、さらに「ただ生きているだけでは意味がない。健康で生きていなければ」ということで「健康寿命」というのが社会に知られるようになったのは、数年前というありさまです。

遅すぎた少子高齢化対策。残された7つの重要課題

ここで何を指摘したいかというと、少子高齢化というのは1970年代にはすでに分かっていたことですが、それが専門家が指摘し始めるのが1990年前後、さらに政府や日本社会が動き始めるのは2010年代で、実に「高齢者のみになった対策が始まるのに40年もかかっているということです。

そしてさらに、認知症患者数が近い将来700万人に達するという推計がなされているにも関わらず、

1.50歳から100歳までの第二の人生をどう過ごすべきか
2.体力を維持する具体的方法
3.頭脳を若く保つ具体的方法

などの基礎的な研究や情報ばかりではなく、

4.家族のあり方
5.高齢者の異性との付き合い方
6.定年の延長
7.年金の将来像

など重要な問題が未解決のままにされています。例えば、私はテレビなどが忙しくなりゴルフをやれなくなったことや、階段を降りるときに手すりが必要だったことなどから、72歳の時にテニスとキックボクシングを始めました。でもこの歳になって、人生初めてテニスやボクシングなどやって大丈夫だろうか?アキレス腱を痛めて「老人に冷や水」などと冷やかされたりするのではないかと心配しました。

それから3年。今ではすっかり元気になり、素早く階段を降りれるようになりテニスは中級の上ぐらいまでなりました。また、キックボクシングのトレーニングで綺麗な体になった女性ボクサーをジムで見ているせいか、気分も若返ったような気もします。

でも、指針も経験者も研究も「高齢者の運動や体力回復はほとんどないのです。あっても、動けなくなった人のリハビリのようなものしかなく、私のように年齢を重ねて弱る体をどうしたらよいかなどまったく知見や書籍がないといっても過言ではありません。医師は病人を相手にしているので常に間違ったアドバイスをしています。

血圧もそうで、高齢者になると血管が固くなるので一定の血流を保つためには「年齢+90」、つまり私の年齢では165ぐらいが望ましいのですが、現在の健康基準は政治的、降圧剤の売り上げなどの圧力があり、130一律という若年者だけに焦点を当てたものになっています。また、コレステロールの制限も間違っていて、本来、高齢者は250ぐらいが適当なのに無理して下げるので、頭の絶縁油が不足しボケや認知症を増大させています。(メルマガより一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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【著者】 武田邦彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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