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ヨーロッパ最高の知性が断言。日本の「利他主義」が21世紀を救う

先進国では出生率が低下し高齢化が進行するのに反し、世界の人口は2050年には現在よりも25億人増加するそうです。それだけ増えた人口を養うほどの世界経済の成長は見込めるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、「ヨーロッパ最高の知性」と称さる経済学者、ジャック・アタリ氏の著作の内容を引きながら、これから世界が進むべき道について考察しています。

改めて「21世紀という時代」を考える

こんにちは! 廣田信子です。今の世界は、成長し続けるしかない金融資本主義の終焉に最後の抵抗をしている…私にはそう見えます。

日本の人口が減少することと反比例するように世界全体の人口は増え続けます。2050年の世界人口は、95億人現在より25億人増加)になるといいます。先進国では、総じて、出生率は低下し、高齢化が進みます。それに対して、アフリカの人口は10億人から25億人へと2.5倍に急増するのです。地球の環境悪化で農作物の生産も難しい地域が多数出ると予測される中で、増加した人口を地球は養い切れるのでしょうか。世界経済は、成長を続けることができるでしょうか。

世界の人口が増加していく中で、人口の減少が避けられない日本でこれまでの延長線上での経済成長が見込めないことは、もう受け入れざるを得ない事実ではないのでしょうか。日本は、どこかで方向を転換し自分達の特性を生かし力を合わせることで自分達の身の丈にあった社会を作っていくことが一番の生きる道ではないかという気がします。

ソ連崩壊、リーマンショック、新たなテロの脅威、インターネット社会などを予測し、的中させてきた「ヨーロッパ最高の知性」と称さる経済学者、ジャック・アタリ氏は、著書『21世紀の歴史』の中でこれからの世界を予測しています。

世界の秩序は、次の5段階を同時に、あるいは順番に進むことになるとしています。第一段階は、これまで世界の秩序を司って来た米国のパワーが相対的に衰退する局面、第二段階は、力を持つ10~20ヵ国が共同で世界秩序をつくろうと模索する局面、第三段階は、国家の枠を越えて市場の力が世界をリードする局面、第四段階は、大きな混乱や戦争などの超紛争が起きる局面、第五段階は、世界の協力と調和による超民主主義が登場する局面、です。

現在は、米国の相対的な衰退が起きている第一段階の終わり、第二段階を摸索している状況でしょうか。同時に、第三段階も進んでいます。世界各国で発生している紛争やテロを思うと、第四段階の芽もすでに生まれています。いかに第四段階のダメージを少なくして、第五段階に進めるかが21世紀の課題なのではないでしょうか。

アタリ氏は、現在の世界の状況は、20世紀初頭に酷似していると言っています。20世紀初頭、先進各国で、富が溢れ、新しい産業が台頭していました。何より大きかったのが、民主主義や経済のグローバル化です。しかし、米国で発生した恐慌が発端となり、その後の不況の中で、世界を保護主義やニヒリズムが支配し、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリンといった独裁者の台頭を許し、第二次世界大戦へとつながって行ったのです。21世紀初頭の今も、グローバルな市場経済と並行して保護主義の台頭が起きています。ひょっとしたら、20世紀初頭よりももっと大きな危機が訪れるかもしれないと言います。

キーワードとなるのが、市場経済と民主主義です。今、アジアの国々を始め、世界の多くの国は市場経済へと進んでいます。市場経済が発達した国では中産階級が生まれ、その後必ず民主化が始まります。中国も同じ道を辿るはずです。しかし、市場経済がグローバルで広がって行くものなのに対して、民主主義はローカルなものだと。私は、これに強く頷きたいと思います。グローバルな民主主義なんて存在しないのです。米国の正しいと思う民主主義を世界に押しつけたことが、今の世界の混乱を生んでいます。

市場経済が発達するとそれが民主主義の境界線を越えて拡大し、時には行き過ぎた競争が起きて、法による統治ができなくなります。また、市場経済と民主主義が発達するときは、人々が「自分のやりたいことをいつでも自由にできる」と勘違いし、不平等、不満、ナルシズム、不誠実などが蔓延し、時として、原理主義やテロリズムにつながる脅威となります。国連にはこれを監視し抑制するだけの力はありません。

2008年のリーマンショックは、結果的に、各国の政府に色々な権力を与えてしまいました。ヘッジファンドをはじめ、市場がひたすら利益確保に走り、誰もそれを止めることができない背景にも、金融緩和策が世界に大量のマネーを供給していることと深い関係があります。こうした状況の中、次の金融危機のリスクはすぐそこまで来ているとアタリ氏は言います。

人間の欲望を、それを表面化した軍事・宗教・市場という観点から整理し、人間の欲望を最大限増幅させると21世紀がどうなるかという予測が『21世紀の歴史』には書かれています。そして、私達が、「超紛争」による世界の終焉を食い止めようとする共通の強い危機意識の中から、「超民主主義」が生まれるとしています。人間の持つ真・善・美といった本当の姿が表に出ることで超民主主義が生まれるのだと。この「超民主主義」こそが、目指すべき未来の社会の姿だと、私は強く共感しています。

力を合わせることと調和によって成り立つ社会です。すでに、モノを持たずにシェアしたり、お金を介在させずに、それぞれの得意な仕事を提供し合うような助け合いで成り立つ社会の芽も生まれています。アタリ氏は、インタビューの中で、日本人が持つ利他主義の精神こそが新しい世界の秩序をリードすると言っています。子どもたちの未来をよりよいものにしたい、自分のためではなく世界の未来ために動こうという気持ち、それこそが新しい社会の芽になると。

今、日本人の心にあるはずの相手を思う気持ちも、表に出にくくなっている現実がありますが、私たちは、日本人の心にもともと内在している助け合い、御互い様の精神に基づく日本型の民主主義を捨ててはならないのです。アタリ氏がいうように、それこそが、新しい世界を築く芽なのですから。ですから、目先の利益目先の成長を求めて日本人が持っているこの大切な芽を壊してはいけないと思うのです。

今日の記事の内容は、私が、約3年前、2016年1月15日に書いたものをほぼ引用しています。まだトランプ大統領登場の前の記事です。

21世紀という時代

その後の世界の変化は、アタリ氏の予想通りに進んでいます。市場はグローバルに広がって行く宿命を持ちますが、民主主義はローカルなものなのです。国会で議論されている出入国管理法改正で、移民(永住外国人)を受け入れるということは、多様な宗教観・価値観を受け入れる覚悟が日本国民に必要だということです。日本国民の間でも難しい「多様性を受け入れる」ことが、より求められるということです。

私は、アタリ氏が言うように、人間の持つ真・善・美といった本当の姿が表に出ることで生まれる「超民主主義」こそが、目指すべき未来の社会の姿だと、強く思っています。そこに至る一段階として、私たちは、今、覚悟を決める時なのかも知れません。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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