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新ハラスメント「カスハラ」から店員を守る、居酒屋の笑える作戦

一般的に認知されるようになったセクハラ、パワハラなどに加え、昨今はカスハラと呼ばれるカスタマーハラスメントも社会問題化しています。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』ではカスハラの詳細を記すとともに、ユニークなカスハラ対策を試みたある飲食店を紹介しています。

カスハラ

セクハラ、パワハラ、マタハラにパタハラ、ここまでは、就業規則に記載されていることもあり、もはや一般的だ。今回は、「カスハラ」、カスタマーハラスメントに焦点を当てたい。


大塚T 「Z社さんから、ハラスメントについてのポリシーを策定してくださいって、依頼がありました」

新米 「この間、うちがハラスメント防止のチラシを案内したからですか?」

E子 「たぶんね。でも、想像じゃなくて、依頼の本当の理由をお聞きしないとダメよ」

大塚T 「わかりました。聴いてみます」


大塚T 「E子先輩、うちが案内送ったこともありますが、その前にパワハラが発生したことが一番の原因でした」

E子 「そうだったの。やはり想像で仕事しちゃぁダメね。しっかりヒアリングして良かったわね。で、どんなことがあったの?」

大塚T 「上司が仕事を依頼したのですが、部下に無視されたことに腹を立てて『おい、こらっ!お前!』って怒鳴ったそうです。それで、被害者が労働局に相談に行き、会社にも相当の対応を求めてきたらしいです」

E子 「そういうことだったのね。もう少ししっかり聴いて、どういうことを求めてらっしゃるのか、確認してから策定してね」

大塚T 「わかりましたー!」

新米 「そういえば、『おい、こらっ!お前!』で、思い出したんですが、この間、『カスハラ』についてのTV番組って、見ましたぁ?」

大塚T 「『カスハラ』?また、今度は何のハラスメント?」

新米 「『カスタマ─ハラスメント』のことです」

E子 「あ、その番組見たかも。最近は、お客様の方が強くなっちゃって、クレームも行き過ぎだと思えることが多いそうね。たとえば、土下座して謝れ!とか…」

新米 「そういうことも取り上げてましたねぇ。僕が面白いと思ったのは、東京・神田の居酒屋さんの『カスハラ』対策の方法なんです」

大塚T 「どんな対策なの?」

新米 「値段の付け方ですね。たとえば、同じ生ビール1杯の値段を3段階にしているんです」

E子 「そうそう、あの話は面白かったわね。『おい!生ビールは1杯1,000円。『生一つ お願いは1杯500円すみません、生一つくださいは380円という生ビールの頼み方に応じて変わる値段が書いた紙が貼られているのよね」

新米 「そうそう、それです!ナイス!考え方、ユニークだなぁって思いました。その下にはさらに『お客様は神様ではありませんまた当店のスタッフはお客様の奴隷ではありません』とも書かれているんです」

大塚T 「へぇ~、面白い貼り紙ね。全部のメニューがそんな風に3段階になってるの?」

新米 「いえいえ、そんなことはないです。生ビールだけだと思います」

E子 「5万人以上に行った産業別労働組合の『UAゼンセン』のアンケートでは『悪質クレームの被害に遭ったことがある』と回答する人が70%以上、さらにその1%に当たる359人が精神疾患を発症したことが分かったそうよ。そういったことから『お客様は神様』と不必要に持ち上げる必要はなく、従業員と客は『平等な関係』であると伝えたいということからの発想なんだそうよ」

大塚T 「そういうことへの提唱なんですね」

E子 「発案したのはその会社の副社長さんで、以前にネットで話題になった『注文マナーによって値段が変わるフランスのカフェ』を、冗談を交えてオマージュしたものなんだって」

大塚T 「貼り紙を見た人の反応が気になりますね」

新米 「『面白いね』とコメントしたり、写真を撮ったりする人があったりはあるけど、今のところ明らかに気分を害したクレームが入ったなどの報告はないそうですよ。『これ好き』とツイッターで投稿されて、話題になったみたいです。『最高の店主』『店員を大事にしてる』『行ってみたい』など、大きな反響になったそうですよ」

大塚T 「反対意見はないのかしら?」

E子 「一部には『こういう店には行きたくないといった否定的な意見やこういった貼り紙をしなければならない現状を嘆くコメントもあるようね。飲食関係者からは『うちでもやりたい』『このお店の気持ちが分かる』という声も上がっているらしいわ」

大塚T 「私もお店をしていたら、そんなメニュー考えてみたいわぁって思ったわ。うちの法人が運営しているデイサービスでは、何か考えられないかしら?」

新米 「え?デイサービスで?」

E子 「今は、何も起こっていないけど、ハラスメント対策になるよう貼り紙ができればいいかもね」

大塚T 「うーーん、そうですねぇ。ところで、実際に『おい、生ビール!』で1,000円を請求することはあったんですか?」

E子 「それは、ないそうよ。『夢を壊すようで恐縮ですが、請求した実績はありませんし、スタッフにも請求するような教育は行っておりません』ということらしいわ。『実際に『おい、生ビール』と言われたところで、生ビールの価格、質は何も変わりません。当社スタッフがいつもよりほんの少しだけ嫌な思いをするだけです。あくまでも当社のコンセプトの一つである『売れることより、面白いこと』を表現したジョークツールの一つです。今回話題となっております貼り紙などを『面白いね』と言ってくれるような方を、当社は大切にしていきたいと考えております』っていうコメントを発表しておられるわ」

大塚T 「そうなんですか。でも、いろいろ考えさせられる貼り紙でしたね」

E子 「『カスハラ』は、クレームハラスメント、『クレハラ』ともいうそうよ。ハラスメントは奥が深いから、個別事例に応じたいろんな対策を考えていきたいわね」

新米 「はーい、頑張ります」

image by: Shuttetstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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