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さよなら、アメリカ。それでも日本が中国と組んではいけない理由

米国時代の終焉がいよいよ近づいているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、迫りくるアメリカの景気後退で歴史的な覇権移動の時代が始まり、中露欧日が次の覇者を争うことになると断言。一歩リードの中国に日本が対抗するための「策」を記事中に記しています。

歴史的な覇権移動の時代

米国の景気後退が迫っている。しかし、この景気後退で米国の時代は終わる。次の時代は中露欧日が争うが、中国が有利であり、漁夫の利を日本が狙うことになる。その検討をしよう。

日米中の株価

NYダウは、11月20日2万4,368ドルから11月23日2万4,285ドルと下落で推移している。アップルのiPHONEの先行きの販売懸念から、アップル株などハイテク株の調整が続いている。当分、米国の金利上昇と景気などを見た神経質な相場になる可能性が高い。

このような株の下落を見て、FRBも12月の利上げは行うが、来年度の利上げ回数は少なくなるか、止める方向にシフトするようだ。PERが15倍以上のNY株価は、今後もダラダラとした下げのような気がする。米国金利上昇で、株への投資を控える可能性が高いからである。

一方、日経平均は11月21日2万1,243円を底に、11月22日2万1,646円まで戻して終わっている。ハイテク株の調整がない分、下がり方も大きくなく、PERが11倍台と安い水準になっているし、ゴーン会長逮捕で、日産などは下げて配当利回りが6%にもなっている。その上に、日銀はETF買いを少しの下げでも買ってくるので、これ以上の下げはなく、米中貿易戦争の鎮静化が起これば、株価は上昇する可能性も出てくる。年間6兆円を超しても日銀はETF買いを止めないようである。

というように、日米の株価は上げ下げが逆向きになって来たような感じがする。

中国の上海市場も2,600ポイントを前後して、これ以下に下げる感じはしない。これは国家投資機関が買い支えているからのようである。しかし、中国国内の消費は衰えていない。伸びは少なくなってもプラス圏である。その証拠に独身日の1日のアリババの売り上げが3兆円以上になっている。

ということで、中国は株価維持ということになる。

米国の破産が間近

米国の来年度の国債償還が大きくなり、長期金利上昇が起きやすくなる。米国の公的債務は日本円にして2,200兆円で、2020年には年間4兆ドル(440兆円)にもなる。その上に減税などで赤字を増やしている

来年以降、金利3%のままにすると、発行する国債も増えてしまい、国債費が国防費より多くなる。トランプ大統領は、その国債を買ってくれている中国や日本に貿易戦争を仕掛け、激化させて中国の持つ米国債も売る方向になっている。

このままにすると、金利上昇と株価下落で景気後退になり、それを防ぐには、FRBが量的緩和をするしかなく、量的緩和するとドルが下落して、悪性インフレになる危険性が出てくる。そして、財政支出を抑えるなどの方策を取らないと、米国債償還ができずに、国家破綻になる危険性もある。どちらにしても今までの放漫財政のツケを米国は払うことになる。もちろん、軍事費も激減させるしかなくなる。ということで、覇権終焉が迫っている

日本も1,000兆円あるが、金利が0.5%近辺であり、日米の金利差などで、償還金額が12倍も違うことになる。しかし、日本でも日銀の量的緩和がないと財政破綻しかねない状態ではある。それでも国債費は30兆円にもなっている。社会保障費と同じ程度だ。

というように、日本もひどいが、米国の国家財政は危機的な状態になっている。しかし、トランプ大統領は、インフラ投資、国境の壁投資と放漫財政を一層拡大する方向である。

歴史的な覇権移行の時代へ

水野和夫先生の見解によると、1970年代に米製造業の利潤が減り、米国は金融経済にシフトさせて資金をばら撒いて、日本や中国などのアジア経済を上昇させ、その代わりに米国の製造業を衰退させて現時点、軍事産業でも技術がなくなり、ここで、株の暴落を引き起こすと覇権交代となる可能性が出てくる。

このようなことは、歴史的に何回も起こり、そして覇権が交代していったという。

ということで、無意識のうちに放漫財政による国家破綻の可能性が出て、覇権を譲るために、トランプ大統領が出て孤立主義を取り始めたことになる。

現時点、ペンス副大統領やマティス国防長官など米国の共和党政治家の多くも国際的な役割を維持し覇権維持の政治を目指しているが、それができなくなる時代が、すぐそこに来ている。しかし、このことを、まだ理解していないように感じる。

勿論、トランプ大統領も分かっていない可能性が高い。そのため、イラン核合意を破棄したり、TPPから離脱したり、温暖化防止のパリ協定を破棄したり、傲慢な対応を世界に対して行っている。

しかし、覇権の基礎であるドル基軸通貨制度の維持には、世界の多くの国の合意が必要である。しかし、傲慢な対応で、その合意も破壊している。知らず知らずの内に覇権放棄をしているのが、現在の米国外交であろうと思っている。というより、米国にとって、政治的な制約から、ドル基軸通貨制度が重荷になっているようにも感じる。

しかし、米国が捨てる覇権を誰が獲得するのかは、決まっていない。

このため、これから米国の代わりになる覇権獲得競争になる。候補は中露欧日の各国であるが、現時点で一番近いのは中国である。

今までの覇権の確立では、陸と海の覇権争いであり、それまでの陸の覇権争いからイギリスは海の覇権を確立して世界の覇権を確保し、米国は空の覇権を確立して世界の覇権を確立した。

次の覇権には、ネット空間での覇権確立が必要であり、その先頭に中国が出てきた。少し前では、米国のシスコがネット製品を抑えていたが、現時点、華為(ファーウェイ)が、この分野を抑えているし、ネット技術でも中国の方が上になって来ている。世界の技術をハッキングで中国は得ている。昔、英国が海賊で海を制したのに似ている。このため、米国は同盟国に華為(ファーウェイ)製品の使用を禁止するように求めるのである。

米国も復活する可能性はある。しかし、トランプ大統領のように世界を敵にする大統領では無理で、世界から尊敬される大統領が必要になる。現状では、ほぼ無理だとは思う。

そして、中国は、覇権獲得のためにネット空間のほかに、陸と海を制する一帯一路政策で、世界覇権を確実にする方向である。

中国の覇権獲得手段

中国は、製造業で得た貿易黒字を投資に回して経済成長をけん引してきた。製造業各社は、設備投資を行い拡大再生産してきたが、突然、米国が中国産製品の輸入を制限し始めたので、投資経済から転換が必要になっている。

国内投資は限界に来たために、一帯一路の海外投資にはけ口と求めたが、途上国への「債務の罠」と批判があり、あまり広げることもできなくなっている。日本の信用力を使い継続したいようであるが、日本企業もメリットがあるプロジェクトしか参加しないはず。

このため、国内消費経済にシフトさせ始めている。また、保護貿易で批判があり、中国としても自由貿易にシフトさせる必要があり、また知財権保護も求められているので、それも行い、かつ中国としても有利な国際秩序を模索する展開になっている。

その一環として、国際機関のトップを取り、中国流のルールを確立して覇権を目指すと思われる。

消費経済拡大の裏にいるのが、世界にネットワークを確立している日本企業の存在がある。中国の消費経済拡大で、日本企業が潤うという関係にあり、日本は中国との友好を必要としている。中国も自由貿易を行う上で日本を必要としている。

もう1つ、一党独裁体制維持のためと国民のレベル向上のために、中国社会は超管理社会になり、国民は信頼ポイントで管理されることになるので、犯罪が少なくなるようだ。これも覇権確立の一環とも見える。覇権国に相応しい内外の環境を整える方向のようだ。

ロシアの対抗手段

ロシアは歴史的に東に勢力を伸ばして、敵が東西にいる二正面作戦をする運命が有り、どちらかとは同盟関係して、一方向に攻めていくしかない国家である。太平洋戦争直前に日本と不可侵条約を結んだのも、西に兵を向けるためであった。

しかし、このままでいると、中国が覇権を取り、ロシアの勢力範囲をどんどん、中国の一帯一路で崩されていくことになる。

現時点、ロシアは軍事力を西に向け中東を支配下にしてその統治を確保することを優先している。しかし、同時に中央アジアを中国の影響力増大からどう守るかがテーマになっている。このため、東への軍事力を下げて、西や中央に軍事力を回したい状態である。また、経済的にも強化しないといけない。

もう1つ、ロシアは、中国包囲網を形成してきた。ベトナムやインドと友好国になり、ロシア製武器を供給して、中国に対抗してきたが、中国の経済力が増大してきて、ロシアだけでは対抗できない

そこに日本がインドとベトナムとの関係を緊密化してきている。目的は、中国の脅威の緩和であり、その意味では同じ目的を持っている。

このことを安倍首相もプーチン大統領も分かっているので、日露平和条約締結交渉になったのだ。日本の外交評論家は、目線を広く世界情勢を見ないので、日露交渉の意図が見えていないように感じる。両国の目的は中国の覇権獲得阻止である。

複雑な国際情勢に

中国がロシアと組んでいるのは、米国の覇権を放棄させるためであり、次の覇権獲得では敵になることがわかっている。ロシアは単独では、覇権を獲得できない。日本も覇権獲得は無理であり、日露で協力しないと、中国に覇権が行くことになる。日露は米国後の時代を見据えて同盟関係を築くしかないと見る。というように、複雑な同盟関係になり、複雑化した国際情勢になってきた。

自由主義対社会主義というイデオロギーの時代は過ぎ去り、自国の国益を重視する新帝国主義の時代になっている。日露関係をイデオロギー的や歴史的におかしいなどという意見が評論家に出ているが、今の時代を見る目がないとしか思えない。覇権移行期であることを分かっていない。

欧州はEU維持で手いっぱいになっている。ドイツのメルケル政権も終わり、フランスのマクロン大統領も日産を奪い取り、国力を向上させたいが、日産の反発でできなくなった。イタリアはEU離脱の方向に行く。ドイツや東欧と中国の関係は良好である。ドイツや東欧と中国でロシアを二正面作戦で挟み撃ちできるからで、ドイツと東欧の敵は、ロシアであるからだ。

中東もロシアの影響力が増大して、米国の影響力が衰退している。しかし、イスラエル支援のために、米軍はシリアから撤退できない。

海洋国家の英国日本米国豪州などは協力して中国対抗を打ち出せる。海の自由を確保することで、利害が一致している。フランスも日産の莫大な利益を受けているので日本の味方になる。ということで、海の覇権を維持したい海洋国家連合もできる。

日本は2正面作戦にはならない。太平洋をバックしているので、中国以外ではだれとも組めることになる。それが日本の強みになっている。

その強みを生かすかどうかで、日本の立ち位置は決まるような気がする。

さあ、どうなりますか?

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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