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【書評】日本語は、心だ。いつまでも残したい美しい言葉たち

季節に関わる言葉が豊富な日本語ですが、その本来の美しさを知る人は徐々に少なくなり、むしろ不適切な言葉遣いが流行してきています。そんなご時世にあって、素晴らしい言葉を未来へと伝承するために書かれた一冊の本を、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しています。

春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち
岩佐義樹 著・ワニブックス

毎日新聞校閲グループ 岩佐義樹『春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち』を読んだ。手紙やメールに使いたい美しすぎる日本語、と帯にある。曙光はしょこう短夜はみじかよ、と読む。清少納言の「枕草子」の冒頭の一節が浮かぶ。つくづく日本に生まれてよかったと思う。

著者は毎日新聞で「週刊漢字 読めますか?」という漢字クイズを9年間連載していて、その時々にふさわしい漢字を選んできた。また校閲グループが運営するサイト「毎日ことば」で漢字の読みを三択で選ぶクイズを出題してきた。出題しながら思ったことは、日本語には季節に関わる言葉がなんと豊かなのかということだった。しかし、今はそのほんの一部しか知られていないようだ。

そんな素晴らしい言葉は感性とともに、未来に引き継がなければならない。また、不適切な言葉遣いが伝承されるのは好ましくない。なかでも季節にかかわる言葉でつい使ってしまいがちな誤りも、この本にまとめられている。月ごとその月にまつわる言葉を集めている。順に読まなくてもいいという構成だ。

矍鑠とは年をとっても丈夫で元気がいい様子をいう。「かくしゃく」と読めるが、書けない。そもそもこの漢字はどんな意味か。「は鳥のようにきょろきょろすることで、「は金属を加熱して溶かすことをいう。それほど強い勢いや輝きを現すんだって。なんだ、おれのことか、と言ったりして。

「危急存亡の秋」では、秋をときと読ませる。なぜか。わたしは存じません。ここでの「秋」は大事な時期という意味を持つ。収穫の秋は1年で最も重要な時期であることから、この字をあてるようになったらしい。「天高く馬肥ゆる秋」は知っている。秋になれば元気な馬に乗って北方の異民族が攻めてくるので注意しなさいという、警鐘の意味を持つ言葉だったのだ。しらなんだ。

後生畏るべしこうせいおそるべし」と読む。読みと解釈は、編集の仕事についたとき会社のエラい人から、「校正恐るべし」と一緒に教わった。後生とは後から生まれて来た人で、後輩などを指す。「今は若輩者でも将来どんなに成長するか分からないので侮ってはならない」という格言で、論語にある言葉だ。その人は自戒を込めて教えてくれたのだと思う。いい時代だった。

8月15日前後に使われることが多い「国破れて山河在り」は、杜甫の「春望」が出典だ。この「破れて」の表記は「壊れる」「荒廃する」といった意味であり、敗戦を指す敗れてではない。2013年の安倍首相の演説で「国、敗れ、まさに山河だけが残ったのが、昭和20年夏」と首相官邸HPにあるそうだ。

「これは、日本が戦争に負けたことをあえて強調したかったのか、それとも単に『破れて』という表記を知らなかっただけなのか……気になって」と書く。さすが毎日新聞社。つまらんいいがかり。気になる、とはとにかく首相を貶めるためにはどんな難癖でもつける、ということだ。情けない人たち。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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