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郊外型コンパクトシティが廃れ、都市一極集中を生んだ本当の理由

近年、郊外の人口減問題カバーの為、商業地や行政サービスなど生活必須機能を一定範囲に集めた「コンパクトシティ」の形成が叫ばれてきましたが、現実は都市部に人口が集中する真逆の事態となっています。マンション管理士の廣田信子さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、「長寿大国日本」の今に合わせた新しいグランドデザイン提案の可能性を探っています。

新たに生まれる郊外型コンパクトシティ

こんにちは!廣田信子です。

先日のフォーラムの基調講演では、千葉大学の小林秀樹教授に、人口減少時代の都市再生都市居住の在り方についてお話しいただきました。

人口減少時代の日本は、発展地域と衰退地域の二極分化を伴いつつ、地方や郊外は中心を失って拡散する方向に向かう。空き家に影響するのは、人口減ではなく世帯数減。世帯の少人数化によって世帯数減は人口増加に少し遅れてやってくるが、それを考慮しても、それ以上に住宅が増え続けているから空き家が増えることになる。空き家の増加率は、地域によって差があり、都市の重心が変化していると言える。さらに、空き家の増加には、施設居住やシェアハウスも影響している…と。

そして、目指すのは、「多極型コンパクトシティ」。「コンパクトシティ化」には、

等のメリットがありその極が複数存在することが現実的な目標となる…と。

都心は、巨大なコンパクトシティであり、その他にも、鉄道網の交差点の駅周辺郊外の大団地等がコンパクトシティの核になり得る。団地がコンパクトシティの核になると考えるのは、

等の条件がそろっているからだ。

しかしながら、都市構造は、東京(湾岸・都心部等)への集中が続き、郊外開発地とは人気の格差が広がっているのが現実。現実は、「多極型コンパクトシティとは逆行しているため、実現は政策的な誘導が必要になる。そして、人口減少社会における「コンパクトシティ」の中では、人々の助け合い・共助の暮らしが再評価され拡大するはずだ…と。

小林先生が描く、「多極型コンパクトシティ」という未来像は、私が思い描く未来とも重なります。そうなっていってほしいと思っています。

でも、ここ10年ぐらいで、現実との格差はさらに広がりました。国には、地域ごとに人口、住宅数の目標値を決めて、人口の分散と分散における核づくりをしようというような動きはまったく見られません。その状況で、団地の管理組合に核になれるよう自力でがんばれと言えるのか…と私は思い悩みます。

小林先生に、どのくらいの規模の団地が核になり得るか伺いました。1,000戸やり方によっては500戸でも核になり得る…と。1,000戸…私には、ちょっと想像がつきません。

私が暮らす浦安市は、市そのものが究極のコンパクトシティと言われます。16万人が暮らす市は、人口目標設定のもと計画的に作られた街でもあります。4km四方というコンパクトな地域に、あらゆる機能が含まれています。ディズニーリゾートから墓地公園まで…です。賃貸と持ち家のバランスもよく、世代が自然に循環する仕組みがあります。都内から引っ越してきた私は、市政が住民と近く、社会資本整備も行政サービスも効率がいい、「コンパクトシティの意義を実感しています。

その中でも、新しくできた街は、エリアごとがコンパクトシティの典型です。1km四方ぐらいのエリア内に、いくつかの団地等と公民館・図書館・小中学校、こども園、いくつもの公園高齢者施設や医療機関、商業施設等があって、団地間の交流も盛んで、ほぼ、徒歩圏での生活が可能です。でも、これらの施設は、最初から都市計画に組み込まれていたもので、ひとつの団地ががんばって誘致したというようなものではありません。

コンパクトシティには、少なくても5,000戸~7,000戸ぐらいの規模は必要な気がします。この規模だと、様々な施策の効率が良く、地域の文化も、人の助け合いの心も、育ちやすいのです。

衰退しつつある郊外の地域で、1つの団地が核になって新たなエリアを形成する…というのは私には、なかなか想像がつかないのですが…。でも、私の中では、50年後を考えたとき、小林先生の言われるように、郊外に、人間らしく豊かに暮らせるコンパクトシティができている…と思えます。

フォーラムのパネリストの皆さんは、50年後はわからない…と(当たり前ですが、伺ってみました、笑)。ひょっとしたら、50年後を妄想しているのは、私だけかもしれませんが、自由な立場にいる者の特権とお許しください。

50年後は、科学技術も画期的に進み、仕事の概念も、仕事の内容も、働き方も今とはまったく違ったものになっていると思います。都心の超過密人口の街であえて暮らす意味が薄れて、もう一度、暮らすための環境が見直されている

進化とは、豊かさを求めることです。時間・効率優先で空間を犠牲にする今の傾向は長い目で見ると豊かさとは逆行している…。今の傾向は、今までの働き方、価値観の延長線上のもので、過渡期の動きである…と思うからです。

ただし、未来の郊外のコンパクトシティは、今の延長線上で、あちこち切り張りしたものじゃなく、新たなグランドデザインのもとに築かれるもの…そう思えます。

高度経済成長期に、とにかく都市に流入する人たちに住宅を提供しなければ…と開発され拡大した郊外を、今度こそ、継続可能なコンパクトシティとなるよう、もう一度、グランドデザインをし直すことで、よみがえらせたいのです。そのためには、公共の積極的関与とともに、住民側も痛みを受けいれる覚悟も必要になるでしょう。解散することになる団地も出るでしょう。所有というこだわりを手離すことも必要になるでしょう。

こういう話がなかなか受け入れられないことは承知しています。人は、今の価値を求めているのであって、次世代のため…というのは受け入れられない、…というご意見も頂きました。

それでも、多くの人が100歳まで生きられる社会は、現世的なこだわりを捨てて、未来のために役立ちたいと思えるようになる…そのための時間を与えられたという意味があるのでは…と私には思えます。

私にとって、50年後は、自分の子供や孫が暮らすリアルな未来です。50年後は、今より豊かで暮らしやすい社会であってほしいと願います。未来のリアルな想像は、途中の経過はともかく、いずれは現実化すると言います。少なくても思い描かないものが現実化することはないのです。人の意識が変わって、新しい街が再生される未来をやはり私は妄想します。

フォーラム報告のつもりの締めが、私の妄想になってしまってすみません。でも、いっしょに妄想してくれる仲間がほしいな~(笑)。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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