この結果、患者は必要な薬Bを処方してもらえなくなるか、必要な薬Bを処方してもらうために不必要な薬Aを謂わば捨て薬のように処方箋に書き加えてもらうしかなくなる。これこそ、とんだ無駄遣いである。
医療(ここでは特に投薬)は常に必要十分でなければ全く意味が無い。不十分なら患者の容態は悪化する一方だろうし、不必要なら肝機能を始め身体に対し徒に負担を掛けることになる。そして不十分不必要な投薬(広義には医療行為全般)は、さらなるメディカルケアを必要とする事態をも招きかねず、ただでさえ貴重な医療費が悪循環的な浪費によって際限なく使われてしまうこととなる。
そういう訳で、役所つまりは厚労省に対して苦言を呈したい。「医師の処方権に口を出すな」これは単に医療費といった金の問題だけではない。目の前の患者に対し責任がある(言い換えれば責任を取る)のは、治療に当たる医師なのである。その医師が必要としたなら、教科書通りの処方だろうが、応用的処方だろうが、創造的処方だろうが、黙って認めればいいのである。生命を挟んで対峙する患者と医師の間には如何なる余人も(それがたとえ官権であっても)口を出していい筈がないのである。
かつて「医は仁術」と言われた。そこまでの人情論にするつもりはないが、メスを振るう領域にそろばんを持ち込む不見識だけは何としても止めさせなければならないと思うのだが、どうだろうか。
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