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安倍首相の年頭所感は嘘だらけ。人気ブロガー・きっこが一刀両断

去る2019年1月1日、7回目となる安倍晋三首相の「年頭所感」発表があったことを覚えていますでしょうか。「今年も嘘八百を並べ立てている」と呆れるのは、人気有名ブログ「きっこのブログ」の著者にして、メルマガ『きっこのメルマガ』を創刊したばかりの「きっこ」さんです。ほんの短い所感の中に、数多くある数字のインチキやごまかしを見抜いたとして、鋭く「ツッコミ」を入れています。「年頭所感」に関するツッコミを、メルマガの記事を一部抜粋した「チョイ見せ」でご紹介します。

大ウソだらけの年頭所感

2012年12月に現在の第2次安倍政権が発足してから6年が経ち、2019年1月1日、安倍晋三首相は7回目の年頭所感を発表した…とは言っても、どうせ昨年までと同様で、官僚に書かせたものをそのまま発表しただけだけど、だれが書こうが「安倍晋三」の名で全国民に向けて発表された公式リリースなのだから、その内容に関する責任は安倍首相本人に帰属する。

国会でも記者会見でも世界の首脳が集まる国際会議の場でも、まるで息をするように嘘をつき続ける安倍首相が、新年を迎えて最初に嘘八百を並べ立てるのがこの年頭所感というわけで、あたしは毎年ツッコミを入れて来た。でも、この人の虚言癖はもはや完全に病的なレベルなので、アレもコレもとツッコミを入れていると日が暮れてしまう。そこで今回は、安倍首相の十八番の「自画自賛」が炸裂している次の部分に集約して、新年の初ツッコミを入れてみたいと思う。

「平成はバブルとともに始まり、経済はその後、長いデフレに突入しました。失われた20年、就職氷河期の到来、未曽有の自然災害。人口が減少する社会は成長できない。『諦め』という名の壁が日本を覆っていました。私たちは、この壁に挑みました。6年が経ち、経済は成長し、若者たちの就職率は過去最高水準です。この春の中小企業の皆さんの賃上げ率は20年間で最高となりました。生産農業所得はこの19年間で最も高くなっています。故郷を想う皆さんの情熱によって、被災地は力強く復興を遂げつつあります。地域の皆さんが磨きをかけた伝統、文化、心のこもったおもてなしによって、外国人観光客数は1千万の壁を突破し、3千万人を超えました。景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始める中で、地方の税収は過去最高となりました」(安倍内閣総理大臣 平成31年 年頭所感より)

よくもまあ、これだけ次から次へと自分に都合のいい数字だけを羅列して自画自賛できたもんだと感心しちゃうけど、取りあえず順番にツッコミを入れさせてもらうと、まずは「若者たちの就職率は過去最高水準」という部分だね。確かに、2013年から2017年に掛けて新卒の就職率は少しずつ改善されて、高卒も大卒も9割台後半の就職率となり、リーマンショック前の2008年と並ぶほどの水準になった。だから、この点に関しては嘘じゃない。

でも、その一方で、新卒で就職した若者の多くが、わずか3年以内に離職してしまっているのだ。高卒の場合は4割以上、大卒の場合でも3割以上、せっかく大学を出て就職したのに、3人に1人が3年以内に辞めてしまっている。この割合は、高卒も大卒も民主党政権時より悪化していて、その原因としては「賃金の安さ」「労働時間の長さ」「仕事上のストレス」などの労働環境の悪さと「会社の将来性に対する不安」が挙げられている。

正規・非正規を問わずに、単に有効求人倍率だけを見ると、今の安倍政権になってから全国ほとんどの地域で「1倍」を超えた。つまり、仕事の内容や賃金などを問わなければ誰でも仕事に就ける状況になった。安倍首相は、この点についても、ことあるごとに「民主党政権時代より大幅に改善した」と自慢する。

でもこれは、俗にいう3Kの仕事が人手不足になっているだけの話で、今の安倍政権が企業側の要望ばかりを優先して来た結果なのだ。そして、その挙句が「外国人技能実習生」という名の「奴隷」を大量に受け入れて使い捨てしようという人権無視の愚策なのだ。これらは間違っても「アベノミクスによる景気回復」の成果じゃない。労働者の視点を無視した悪政の行き着いた先なのだ。

その証拠に、2013年から2016年までの4年間で、日本の労働者の非正規雇用は200万人近くも急増したが、正規雇用は80万人近くも激減し、非正規雇用の割合は労働者全体の37.5%と、日本の歴史上で過去最悪になってしまった。これだけ非正規雇用が増えて喜ぶのは、少しでも安く人を雇って好きな時に会社の都合で解雇したい雇用者側であり、あとは人材派遣大手「パソナ」の会長の竹中平蔵ぐらいだろう。こうした悪政による闇の部分にフタをして、表面上の都合のいい数字だけを挙げ、あたかも日本の雇用状況が改善されたかのように喧伝するなんて、愚の骨頂と言うよりも完全に詐欺に当たると思う。

(中略)

外国人観光客増加の本当の要因

新年早々、あんまりカッカしたくないので、ここはサクッと次へ行くけど、今度は「地域の皆さんが磨きをかけた伝統、文化、心のこもったおもてなしによって、 外国人観光客数は1千万の壁を突破し、3千万人を超えました」という部分だ。外国人観光客が増えたのはその通りだけど、その要因は「地域の皆さんが磨きをかけた伝統、文化、心のこもったおもてなし」などではない。こんなこといちいち指摘するのもバカバカしいけど、外国人観光客が増えた要因は3つ「円安」と「LCC」と「ビザの緩和」だ。2010年には1ドル85円だった為替レートが、安倍政権の円安誘導で一時は120円まで進み、現在でも110円前後なのだから、格安のLCCを利用すれば2010年度の半額近い予算で日本に来ることができる。

その上、外務省は2017年10月に中国人観光客向けに大幅なビザの緩和を行なった。だから、安倍政権は「外国人観光客だ」「インバウンドだ」と連呼しているが、実際に日本に来ている外国人の大半は中国人と韓国人だけなのだ。そして、その目的は「爆買い」だ。銀座に行ってもどこに行っても中国人のグループが大声で騒ぎながら爆買いしているし、今年のお正月も銀座のデパートに並んだ100万円以上の高額の福袋は、ほとんど中国人が買い占めて行った。これが現実なのに、何が「地域の皆さんが磨きをかけた伝統、文化、心のこもったおもてなし」だよ?キレイゴトを並べて「日本は素晴らしい国だ」とアピールするのはネトウヨの専売特許だと思っていたけど、安倍首相も同類だったんだね。

景気回復の温かい風は本当に吹いていますか?

さて、いよいよ最後のツッコミは「景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始める中で、地方の税収は過去最高となりました」という部分だ。総務省が発表したデータによると、2017年度の地方税収は前年度より5750億円増えて、過去最高だった15年度(40兆4050億円)を上回る40兆9087億円となったから、 これも額面上は嘘じゃない。でも、前半の「景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始める中で」という部分は大嘘だ。それに、地方税収の内訳を見てみると、増えているのは全体の約3割を占める個人住民税で、増えた要因は「株式配当」だ。もちろん、他にも複数の要因はあるけど、日銀がジャブジャブと大金を注ぎ込んで支え続けて来た株価が地方税収を増加させる一因になっていることは紛れもない事実なのだ。

「虚構の景気回復」を演出するしか能がない安倍政権は、アベノミクスの成果を「株価」でしか示すことができないため、とにかく株価を下落させないために常識を逸脱した買い支えを日銀にやらせて来た。たとえば、去年12月28日の大納会では、2万円割れの状況で年越ししたくないからと、最後の10分間で日銀は703億円も注ぎ込んで株価を1万9000円台から2万円台に戻したのだ。ちなみに、これまでに日銀が買い支えて来たETF(株価指数連動型上場投資信託)は、昨年末までに23兆1165億円で、去年1年間だけでも6兆2100億円も注ぎ込んでいる。

民主党政権最後の2012年度の日経平均株価は、8000円台半ばから9000円台前半を行ったり来たりしていた。当時と比較すれば現在の2万円超という株価は2倍以上の大幅アップだ。だから安倍首相も年頭所感などで「民主党政権時代より株価は大幅にアップしました」などどドヤ顔で連呼して来た。そして、この株価だけを見れは、日本の景気は回復したかのように感じられる。

でも、日銀がETFに6兆円注ぎ込めば株価は約3000円上がると言われている。これまで日銀はETFに23兆1165億円も注ぎ込んでいるのだから、6兆円の約4倍、つまり「3000円×4=1万2000円」ということになり、現在の株価から1万2000円を引いたら8000円、民主党政権時代よりも株価は下落してしまうのだ。この事実を知れば分かるように、現在の2万円超の株価は決して日本の経済が成長した結果などではなく、ただ単に日銀が莫大な予算を注ぎ込んで意図的に引き上げた「ヤラセの株価」でしかない。

ちなみに、これまで日銀が注ぎ込んだ23兆1165億円の株式は、売却すれば約25兆円と試算されているので、約2兆円の含み益がある。つまり、額面上は損はしていないことになる。でも、この株式は売却できないのだ。何故なら、売却した瞬間に株価が大暴落して日本の金融経済がジ・エンドになってしまうからだ。額面上の価値はあるのに、決して売ることのできない資産。現金輸送車を襲って10億円を強奪することに成功したのに、その10億円はお札の番号がすべて控えられていたため、1万円札1枚すら使うことができない。これと同じで、まさに宝の持ち腐れだ。

もしも去年、日銀が6兆円を注ぎ込まなかったら、昨年末の株価は1万7000円台にまで下落していた。実体経済が横這いのままなのに、株価だけを下落させないように買い支え続けるためには、こうして毎年6兆円ずつ注ぎ込むという自作自演を続けて行かなくてはならない。これが、株価だけは良いが庶民の生活はいつまで経っても良くならない「虚構の景気回復」の仕掛けであり、元旦から大嘘を垂れ流すしか能がない安倍首相の伝家の竹光(たけみつ)「アベノミクス」の正体なのだ。

image by: 首相官邸

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