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歴史は繰り返すか。かつてナチスと組んだ日本が中国にすり寄る愚

アメリカが対中強硬姿勢を鮮明にする今、日本は岐路に立たされているといっても過言ではありません。AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』の中で、日本軍部がナチスドイツと手を組むに至った歴史の事実と現在の世界情勢を照らし合わせつつ、実利優先で対中経済協力に邁進する政財界の愚行に警鐘を鳴らしています。

日本がナチスと組んだ悪夢再び?

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

2019年元旦、衝撃的なニュースが飛び込んで来ました。前日の大晦日に、トランプ大統領が「アジア再保証推進法に署名し法律が成立したそうです。

この法律には台湾への防衛装備品の売却推進や南シナ海での航行の自由作戦の定期的な実施、さらには東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに今後5年間で最大15億ドル(約1,650億円)を投じることが明記されているとのこと(「米、中国けん制へ新法成立 台湾と軍事協力推進」 日本経済新聞)。

12月上旬の上院での法案採決では野党・民主党を含む全ての議員が賛成したそうですから、アメリカが挙国体制で中国と事を構える決意をしたことが改めてわかります。

直後の1月2日、習近平主席は台湾統一に武力行使を排除しないと発言したうえ、軍の最高指導機関である中央軍事委員会で「有事の際には必ず迅速に対応できるようにせよ、軍事闘争の準備にしっかり取り組むよう」繰り返し檄を飛ばしたそうです(中国・習主席「軍事闘争の準備を」アメリカを牽制 テレ朝news)。

こうなると、牽制なんていうレベルではなく、互いに宣戦布告しているようなものです。もう後戻りできないでしょう。

株式市場が荒れていることで、アナリストが「米中貿易戦争が背景にあります」などと他人事のように解説していましたが、貿易戦争なんてレベルの話じゃありません。明確な覇権をめぐる戦争です。将来の軍事衝突の可能性も皆無ではありません

アメリカとしては、中国の攻勢を挫くためには中国経済の破壊が絶対に必要と考えているので、株価の下落という「返り血」を浴びてもやり抜く覚悟です。多少の経済的損失は止むを得ません。世界経済に悪影響があっても中国に支配されるよりはましだというわけです。こんなタイミングで日本政府は本当に消費税を上げるつもりなのでしょうか?

ご存じのとおり、こんな怪物国家を作り上げてしまったのはアメリカと日本の莫大な援助です。

アメリカは中国が経済的に発展して中産階級が育てば自然と民主化することを期待していたと解説されていますが私はアメリカは中国市場を育てて金儲けしたかったんだと思います。

それからもちろん、マネトラ、ハニトラによる工作で操られてもいたでしょう。日本も同様です。日本は特に、天安門事件で孤立した中国を天皇訪中で救出するという愚を犯しました。

確かに中国は購買力のある巨大市場として強大な影響力を持つに至りましたが、なんと中国はその市場を武器に転化してしまったのです。

「中国で商売したければ技術を放出しろ!」
「中国の意向に逆らったら中国で商売できないようにしてやる!」

これが中国経済に依存する中小経済国支配には極めて有効でした。オーストラリアの大学も、始めこそ学問の自由を盾に中国の干渉を退けようとしましたが、「それなら中国から留学生が行かないようにしてやる!」と中国国内でのマーケティングを封じられ、あえなく陥落しました。

サイレント・インベージョン」です。

民主化どころの話じゃありません。まさに中華帝国の逆襲です。

さらに恐ろしいことに、最近では中国製は安かろう悪かろうではなく、月の裏側に探索船を着陸させる技術を持ち、超ハイテクの第四次産業革命を制して世界支配をもくろむレベルに到達しました。これではアメリカも本気で戦う覚悟を決めざるを得ません。

この大きな国際情勢の流れは、冷静に見ていれば素人でもわかります。

しかし、ここで嫌な記憶がよみがえります。

日本は戦前戦中と大きな判断ミスを繰り返して壊滅に至りましたが、中でも致命的なミスのひとつがナチスドイツと同盟を結んだことでしょう。

なんでまたヒットラーなんかと?

あの頃、日本人は破竹の大進撃をするナチスに憧れてしまったんですね。ナチスについて行けば、帝国主義時代の複雑な国際情勢を乗り切れるのではないかと。

ナチスはすでに英仏と戦争状態でしたから、ナチスと同盟を組めば自動的に英仏、そしてアメリカと戦争になってしまいます。にもかかわらず、日本はドイツと組むことが牽制になると考えた

今と違って情報網も限られているので、日本は成績トップの将校をドイツやスイスに送って戦況を確認しようとします。

しかし、受験秀才は有事の際にはあまり役に立ちません。あくまでもペーパーテストの名手なんですね。でも中には本当に優秀な人がいて、ドイツがすでに対ソ連の東部戦線で敗色濃厚になっていることを掴んだ人もいました。

ドイツ頼みでアメリカと戦争を始めてはいけない!」必死に本国に打電します。

しかし、本部はナチスにすっかり入れ込んでいた大島浩全権大使の報告を真に受けて、なんとこのタイミングで真珠湾攻撃を敢行してしまいます。

誰と組むかは戦略の基本中の基本です。

日本はドイツと組みながら、ただの一度も同じ戦場で戦うことがありませんでした。いったいなんでまたナチスドイツなどと組んでしまったのでしょうか?特に、元々イギリスを範としていた海軍がドイツとの同盟にことのほか熱心だったのは不可解です。

それが一説によると、ドイツに駐在した日本帝国海軍の武官にはメイドという名目で現地女性があてがわれ、みんなへろへろになってしまった。この「ムフフ体験」が主たる理由ですっかり親ドイツになってしまったと。

まさか、これが同盟を結ぶ主たる理由ではないだろうとは思いますが、いずれにしても愚かな判断でした(坂本多加雄・秦郁彦・半藤一利・保阪正康『昭和史の論点』文藝春秋(初版2000年3月20日)第9章「日独伊三国同盟」のp126~p128)。

しかし2019年の今、ドイツとの同盟があり得ない愚かさと決めつけることができなくなりました。何しろ、財界エリートの経団連が中国は我々を求めている今がチャンスだ!と今更中国と商売することに燃え日本政府もそれを後押ししているのです。

1月13日になって、経団連がサイバーアタックを受けた2016年の事件が、アメリカ司法省が中国の国家安全省と繋がっていると断定している「ATP10」という中国人ハッカー集団のしわざであったことが確認されたとのニュースがありました。

経団連のシステムに入り込んだウィルスはPCやサーバーに次々と感染しながら2年以上も潜伏していたとのことです。

これでも経団連は米国との貿易戦争で苦しむ中国を助けるために、嬉々として中国企業の下請けをするのでしょうか?そして日本政府はそれを後押しするために通貨スワップを用意し実行するのでしょうか?

ナチスドイツと手を組んだかつての軍部を今の日本人は批判できないのかもしれません。

歴史は繰り返してしまうのでしょうか?

(山岡鉄秀:Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

image by: 首相官邸

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【著者】 アメリカ通信 【発行周期】 週刊、不定期

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