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Amazonだけじゃない。日本に本部がないと税金が発生しない不公平

全世界をその市場とし莫大な収益を上げ続けるGAFAですが、先日、その一つ、グーグルが東京国税局から申告漏れを指摘されていたことが報じられました。この件について取り上げているのは、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、グーグルやフェイスブックといったサービスの基盤を提供する「プラットフォーマー」に対する課税が、今後大きな国際問題になると警鐘を鳴らしています。

【関連記事】● なぜAmazonは日本で法人税を払わずに済むのか? 元国税職員が解説

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年1月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

GAFAの課税漏れ

最近は「GAFA」という言葉を盛んに耳にします。書籍などでも盛んに取り上げられるので、ご存知の方も多いはずです。GAFAというのは、グーグルアマゾンフェイスブックアップルのことです。このGAFAの一つ、グーグルについて興味深いニュースが最近、報じられました。今回はその解説をしたいと思います。まずは2019年1月15日)の東京新聞の夕刊の記事を読んでください。

グーグル、35億円申告漏れ 日本法人 海外へ利益移転

 

米グーグルの日本法人「グーグル合同会社」(東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、2015年12月期に約35億円の申告漏れを指摘されていたことが15日、関係者への取材で分かった。日本法人は国内で広告事業をしていたが、広告料はシンガポール法人へ支払われ、そこから日本法人が報酬を受け取る仕組みだった。しかし、同国税局は、広告料と報酬額が見合っていなかったとして、日本での所得を抑え、税率の低いシンガポール法人に移転したと判断したもようだ。

 

関係者によると、追徴税額は過少申告加算税を含め約10億円。日本法人は修正申告を済ませ、16年12月期分も自主的に法人所得約60億円を上乗せして申告したという。

 

米グーグルなど「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業を巡っては、利益を上げる国に活動拠点がほとんどなく、法人税率の低い国に利益を移して節税する動きが「課税逃れ」として問題視されている。

 

15日午前、日本法人に対しメールで取材を申し入れたが、返信はなかった。登記簿によると、日本法人は01年に株式会社として設立。16年に決算を公告する必要のない合同会社に組織変更した。

 

関係者によると、日本法人は、国内で広告の営業やコンサルタントをしているが、広告主や広告会社から受け取った料金はシンガポール法人に支払われていた。その上で、日本法人は、シンガポール法人に対する業務支援として、経費に8%を上乗せした報酬を受け取っていた。しかし、東京国税局は、日本法人への報酬が広告料に連動していないと指摘。一定の利率を上乗せする仕組みにより、報酬が低く抑えられ、国内で計上すべき所得を実質的に海外に移転したと判断したとみられる。

著者による解説

この問題は、実はけっこう難しい要素を秘めています。グーグルの課税漏れ自体は、多国籍企業にはありがちなものです。税金が極端に安いシンガポールに本部を置き、そこに世界中の子会社の利益を集中させて、グループ全体の節税を図るということです。

もちろん、日本の税務当局としては、グーグルの日本法人の利益を、シンガポールの本部に不当に吸い上げられることを見過ごすわけにはいきません。日本の税法では、国際企業の各国の支店間の取引について価格に不自然な高低があれば是正できる、ということになっています。この税法に基づいて、東京国税局は課税漏れの指摘をしたのでしょう。

が、この問題には、それ以外に大きなポイントがあります。グーグルやフェイスブックなどは、モノやサービス自体を売るのではなく、サービスの基盤を提供する業種であり、「プラットフォーマー」と言われています。GAFAのうち、特にグーグルとフェイスブックは、自分自身でモノを売るのではなく、データを駆使し、広告事業、販売事業の手助けをするという業務を行っています。

たとえば、グーグルの主な収入源は広告です。が、従来の広告と違うのは、自社の作った検索ページを通じて検索ページを利用している人のを反映した広告を打つということです。これにより、広告の出稿者は、効果的な広告を打つことができるのです。フェイスブックも同様に広告が主な収入源で、フェイスブックの利用者の嗜好を反映させた効果的な広告を打つことを大きな特徴としています。

こういうプラットフォーマーという事業者の場合は、税務当局にとってはさらに難しい問題があります。というのも、こういう事業は、日本に子会社や事業所を置かずともやろうと思えばできます。たとえばアメリカにしか営業所を置かずに、各国の言語ができる人材をアメリカの営業所におき、世界中の顧客の相手をするのです。顧客の方も、わざわざ事務所に出向いて広告の依頼をするのではなく、メールやテレビ電話などで済ませることができるので、労力が省けます。

ところが、日本の税法では、外国の会社に対して、日本の税金を課す条件として、「日本に子会社や事業所などが設置されていること」というのがあるのです。つまり、日本に子会社も事業所もなく、ただネット上だけで商売しているのであれば、日本の税金は課せられないのです。

グーグルの場合は、日本に法人があるから日本の税法の適用ができるものの、日本に法人や事務所を持たずに、ネット上だけでビジネスをしていれば、原則として日本の税法の適用は受けません。つまり、日本の会社が、払った広告料などの収入に関して、日本の税金は課せられないのです。実際に、そういう企業はたくさんあります。

海外のインターネット会社が、日本向けのプラットホームを提供しているようなケースは多々見受けられます。そういう会社に、日本人が支払うサービス料、広告料などには、原則として日本の税金はかけられないのです。「国内に子会社や事務所がなければ課税できない」というのは、日本だけじゃなく、多くの国の間で常識的な税制となっています。だから、日本以外の他の国でも、この問題は生じているのです。

またGAFAは、いずれもアメリカの企業であり、アメリカという後ろ盾もあるために、世界中の子会社であまり税金を払おうとしてこなかったという経緯もあります。アマゾン本社が、「日本に事業所は置いていない」と強弁し、税金を払っていなかったことは、本メルマガの2018年4月1日号「Amazonに激怒のG20。法人税を払わぬ巨大企業を追い詰める包囲網」でもお伝えした通りです。

もちろん、GAFAやプラットフォーマーたちのこういう姿勢に対して、世界各国も黙っているわけではなく、ヨーロッパ諸国と日本などが連携して対処しようという動きもあります。今後、こういうプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しての課税は、大きな国際問題となっていくと思われます。

image by: Ken Wolter / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年1月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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