自分が65歳になったとき、65歳未満の生計維持している配偶者がいると加算される配偶者加給年金。とても大切な生活資金ではありますが、トラブルも多いといいます。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、そんな配偶者加給年金が停止されてしまうケース等について詳しく解説してくださっています。
加給年金は心強く嬉しい年金ではあるけどもトラブルも多い^^;
結構、年金受給者の人の間での関心事の中で強いのは配偶者加給年金であります。65歳になって、その時に65歳未満の生計維持している配偶者が居ると自分の老齢厚生年金に389,800円(特別加算165,500円含む)が加算されます。
ただし、自分の厚生年金期間か共済年金期間、もしくは両者合わせて20年以上の期間が無いと加算されない。よって配偶者加給年金はまずは厚生年金期間などの被用者年金期間を20年以上目指さないといけない。
さて、その配偶者加給年金は一体いつまで支給されるのかという所はですね、もちろん配偶者が65歳になるまでなんですが事情はそんなに単純ではないです^^;。トラブルも多いのが配偶者加給年金。単に老齢厚生年金に付ければいいだけの話でしょ?って思われますが、よく頭の痛い問題が起こりやすい年金でもあるんですよね。加給年金にあまり良い思い出が無い(笑)。
とはいえ受給者の人にとってはとても大切な生活資金ですので、今日はそんな配偶者加給年金について見ていきましょう。
1.昭和23年3月11日生まれの夫(今は70歳)
● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!((平成31年度版参考記事)
現在支給されてる年金額は、老齢厚生年金140万円、老齢基礎年金77万円、配偶者加給年金389,800円。
なお、この男性は64歳から配偶者加給年金が支給されている。
● 厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
通常は「65歳から配偶者加給年金が付く」っていうのが常識になってますが、この男性の生年月日を見ると64歳から老齢基礎年金の前身である定額部分が支給される人だったから64歳から加算されている。割と昔の生年月日の人の年金は気を付ける必要があります。
2.昭和32年8月7日生まれの妻(今は61歳)
高校を卒業して翌月の昭和51年4月から昭和63年7月までの148ヶ月間は国家公務員共済組合だった。この間の給与平均(平均標準報酬月額)は26万円とします。夫とは昭和56年4月に婚姻。昭和63年8月から当時サラリーマンだった夫の扶養に入り、国民年金第三号被保険者となる。
昭和63(1988)年月8から平成10(1998)年5月までの118ヶ月間は国民年金第三号被保険者期間として、国民年金保険料を納めなくても納めたものとなった。
平成10年6月から民間企業に再就職し、60歳を機に退職したのでその前月である平成29年7月までの230ヶ月は厚生年金期間となった。
なお、平成10年6月から平成15年3月までの58ヶ月間の平均給与(平均標準報酬月額)は25万円とし、平成15年4月から平成29年7月までの172ヶ月間の給与と賞与の総額を加入期間で割った平均標準報酬額は35万円とします。
さて、この妻の年金を算出します。
まずこの妻には現在は60歳から230ヶ月分の老齢厚生年金が貰えている。
- 老齢厚生年金(第1号老齢厚生年金)→25万円÷1,000×7.125×58ヶ月+35万円÷1,000×5.481×172ヶ月=103,313円+329,956円=433,269円(月額36,105円)
ところで、240ヶ月(20年以上)以上の年金を貰い始めると、配偶者である夫に付いてる配偶者加給年金は停止になってしまうが230ヶ月分なので夫の配偶者加給年金は停止されない。
あと、国家公務員共済組合からの老齢厚生年金も貰えるんですが、これはこの女性の生年月日からだと63歳(新元号2年8月にあたる平成32年8月に受給権発生して翌月の9月分からの支給)からですね(また年金請求が必要)。
※注意
厚生年金は男女で支給開始年齢が5年違いますが、共済組合の女子の年金は男性の厚生年金支給開始年齢の生年月日と同じと見ていただければいいです。
共済組合には男女の支給開始年齢の差は無い。
上記のリンクの支給開始年齢の男性の支給開始年齢と、女子の共済組合の支給開始年齢が同じと考えればいいです。
- 63歳からの国家公務員共済組合からの老齢厚生年金(第2号老齢厚生年金)→26万円÷1,000×7.125×148ヶ月=274,170円
あと、共済組合は平成27年9月までの期間は職域加算(退職共済年金)も出る。
- 職域加算→26万円÷1,000×0.713(7.125の乗率の10%にあたる。20年以上の期間がある人は20%の1.425)×148ヶ月=27,436円
平成32(新元号2)年の9月からは民間の厚生年金期間230ヶ月分と、共済組合からの148ヶ月分の合わせて278ヶ月分の年金が貰える事になる。
平成32年9月時点の年金総額は、
- 共済組合からの老齢厚生年金274,170円+職域加算27,436円+日本年金機構からの老齢厚生年金433,269円=734,875円(月額61,239円)
となるとこの場合は今の制度上は夫の配偶者加給年金を全額停止しないといけない。
…が、夫の配偶者加給年金は共済組合を厚生年金に統一(被用者年金一元化)した平成27年10月1日前に既に付いていた人なので、この件をもって夫の配偶者加給年金が停止される事は無い。まあ、このままであれば夫の配偶者加給年金は妻が65歳(新元号4年にあたる平成34年8月分までは支給)になるまでは付き続ける。そう。このままであれば…。
最近、高齢者雇用が盛んだからちょっと働こうと思った。378ヶ月分の老齢厚生年金が貰えるようになったけど、世帯収入を増やしたくて平成32年12月から平成33年10月までの11ヶ月間は厚生年金に加入して働くものとします。この11ヶ月間の平均標準報酬額は88,000円とします(在職による年金停止は無いものとします)。
平成33年10月31日をもって退職すると、翌月の11月に年金の退職改定を行って11ヶ月分働いた期間の日本年金機構からの老齢厚生年金が平成33年11月分から増える。
- 退職改定で増える年金額(日本年金機構からの第1号老齢厚生年金に加算される分)→88,000円×平成30年度再評価率0.945÷1,000×5.481×11ヶ月=5.014円
年金の退職時改定を行うと、日本年金機構の厚生年金期間単独で241ヶ月になってしまう。という事は平成33年11月から夫の配偶者加給年金を全額停止しなければならない。11ヶ月働いて、年金が5,014円増えたけど逆に夫の配偶者加給年金389,800円が犠牲になったわけですね^^;
本来は妻が65歳(新元号4年にあたる平成34年8月)になるまでは配偶者加給年金が支給されるはずが、平成33年11月分から配偶者加給年金は全額停止になる。厚生年金に加入した事を無かった事にする事は出来ないのでどうしようもない。妻自身が65歳になるまで夫に配偶者加給年金を付けたい場合は、65歳まで退職せずに働き続けるか、もしくは新たな厚生年金加入を9ヶ月で抑えるしかなかった。
というわけでですね、夫婦の年金記録により様々ではありますが、最近は高齢者雇用が拡大した事もあって年金がより一層複雑化したので年金支給が始まる前には年金相談に行って前もって年金がどうなるのかを把握しておきましょう。
ある時、通知物が来て「年金停止しまーす!」で慌てないようにですね…。
大体、年金は通知物からクレームになる。何だこれ!意味わからん!停止?ふざけんな!o(`ω´ )oプンスコって(笑)。といってもなかなか一般の人には理解しにくいのが年金の困った所。
※追記
この妻は昭和41年4月11日以前生まれの配偶者で、夫に配偶者加給年金が付いていたので本来は振替加算38,804円(年額)が妻の老齢基礎年金に付く事になる。しかし、妻自身には240ヶ月以上の被用者年金(厚生年金241ヶ月と共済組合148ヶ月)合わせて、389ヶ月の年金が受け取れるので振替加算は付かない。
● 加給年金と振替加算額(日本年金機構)
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