東岸には祇園・八坂神社、西岸には四条河原町と京都有数の繁華街につながる四条大橋は、昼夜人の流れが途切れることはありません。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英 学(はなぶさ がく)さんが、そんな四条大橋近くにあるバロック建築が印象的な中華料理店の外観だけでなく、調度品・内装・眺望・料理などすべての素晴らしさについて紹介しています。
東華菜館
四条大橋の南側の西詰、東詰にある南座の向かいにあるバロック風の建物をご存知でしょうか?この洋館は大正時代に建築されたビアレストランでした。その後戦時中に中華料理店・東華菜館がオープンします。その歴史的建築物の中でいただく本格北京料理はまた格別です。
大正15年に教会建築を得意としたウィリアム・メレル・ヴォーリズによって建てられました。メンソレータムを世に知らしめたことでも有名な近江兄弟社のヴォーリズです。
縦長の窓やシンプルな直線と曲線を組み合わせた装飾が特徴的です。東華菜館ならではの個性的なスパニッシュ・バロックの建築は一見の価値があります。
店内に入ると柱や壁の精巧なモチーフに目を奪われます。海の幸・山の幸などの食材の数々がレリーフされているのです。
そして、是非よく見て頂きたいのは日本最古のエレベーターです。運転手による手動式です。1924年米国製でオーチス社製のものです。これはかなり貴重な体験だと思います。実際にこのような設備に乗って席に通されて食べる本格中華は格別です(席によっては必ずしも乗ることはありませんが)。
料理に関しては様々な席のカテゴリーが用意されています。人数や用途などにより席の希望を受け付けていますので事前に伝えておくといいでしょう。
ちなみに一般客室は1階と5階にあります。1階は悠々とした広い空間で目の前に南座や四条大橋、鴨川の眺望が楽しめます(1階ですとエレベーターには乗る機会はありません)。個室は半個室や完全個室など色々用意されています。眺めはもちろん、豪華な装飾が施された天井や壁に囲まれた気品ある非日常な空間です。ヴォーリズがデザインした調度品の数々がとても印象的です。
5階の一般席にはテラス席もあります。見晴らしが良く、比叡山や鴨川の流れを眼下に収めることが出来ます。
5階のテラス横から数段の階段を上がると屋根の上に上がることが出来ます。夏の間はビアガーデンが開催されている場所です。シンボルの塔はエレベーターのマシンルームとのことです。夏は鴨川の風物詩「鴨川納涼床」もありますがこの屋上の雰囲気も格別です。
北は比叡山方面の眺望、東側は円山公園や知恩院、八坂神社、高台寺や清水寺などが見渡せます。南は遠く伏見や東福寺なども見てとれます。
大正生まれの名建築、豪華な調度品の数々、日本最古のエレベーター、京都らしい眺望と贅沢三昧な東華菜館を是非とも体験していただきたいと思います。
京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。
image by: 京都フリー写真素材