常識を疑う企業が作った「お尻だって泡で洗ってほしい」的な日常

momo
 

「当たり前」を疑うところにビジネスのヒントはある…。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で取り上げているのは、そんな考え方を地で行くような、あるトイレ用製品。「世界初」のアイテムは、どのように生まれ、そしてどのように売られ人気を博しているのでしょうか。MBAホルダー・青山烈士さんがその戦略と戦術を詳細に分析・解説しています。

日常に「なぜ?」と疑いの目を向けられるか

世界初の商品で注目を集めている企業を分析します。

● 家電、美容物販事業を手掛ける「ハンドレッドイノベーション」と「リミットエイト」が共同開発した新商品「ももあわわ

戦略ショートストーリー

トイレ用シャワーの利用に抵抗がある方をターゲットに「独自のミッション」に支えられた「汚れをしっかり落とすことができる」「衛生的」等の強みで差別化しています。

トイレの悩みを解消する世界初の商品というインパクトで注目を集め、汚れをふき取る力に加えて、使い勝手の良さもあり、顧客から支持を得ています。

■分析のポイント

日常に「なぜ?」と疑いの目を向けられるか

「ももあわわ」の存在を初めて知った時に思ったことは、「この商品の必要性にどのように気が付いたのか」ということです。プレスリリースによると↓

トイレの後、手はしっかり泡で洗うのにお尻はなぜ泡で洗わないのか?お尻のほうが汚れているはずなのに……そんな疑問から、ももあわわは誕生しました!

とあります。やはり、世の中に無い商品を生み出すポイントは日常に「なぜ?と疑いの目を向けられるかどうかであるということを改めて感じます。

日本では明治の中期頃にはトイレットペーパーが使用されていたようですので、「お尻をきれいにする」ための手段は「トイレットペーパー」であるという状況が長い間続いてきたことになります。そのような歴史の中で、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)が世の中にリリースされた当初は革命的な製品だったと思われます。

現在は、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)の家庭での普及率は8割を超え、オフィスビルや商業施設などでも付いているのが当たり前の世の中になってきています。つまり、ここ20~30年くらいの「お尻をきれいにする」ための手段はトイレットペーパー&トイレ用シャワーであったということになります。

このことは、もはや日常であり、多くの方が何も疑問に持つこともなく受け入れているとも言えます。

そのような状況の中で「お尻をきれいにする」ための新しい手段として「泡で洗うという選択肢を提供しているのがももあわわ」ということになります。知ってしまうと、なぜ、いままで無かったのか、不思議に感じてしまいますね。

また、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)を提供している企業は企業努力を続けていて、製品自体の品質は、どんどん進化して、恐らく「お尻をきれいにする」能力も向上を続けているのでしょう。

しかし、駅などの公共施設のトイレ用シャワーの利用率に着目すると、男性は58%、女性は31%とあまり利用されていないという調査結果も出ているようです。そして、トイレ用シャワーが使われない理由には、掃除がきちんとされていないことなどがあげられています。

「お尻をきれいにする」という価値の競争において、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)が、どんなに進化しても使われなければ、「価値」を感じてもらうことはできません。

「ももあわわ」は単純に「お尻をきれいにする」という能力においては、トイレ用シャワーよりも優れていると訴求していますし、携帯用であれば場所を選ばずに使えます

さらに、トイレ用シャワーが無い家庭でも使えるわけですから、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)を提供している企業にとっては無視できない存在になり得ると思います。トイレ用シャワー(温水洗浄便座)の必要性が低下することにつながりかねないですからね。

今後、トイレ用シャワー(温水洗浄便座)が 右肩上がりで普及していったように、トイレでも「泡で洗う」時代になっていくのか注目していきたいです。

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