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知らなかったではNG。4月開始の「年休5日を取得させる義務」

今年4月から年休のうち年5日については、会社が時季を指定し取得させることが義務付けられます。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、この件に関する対象者や年休取得についての注意事項を詳しく解説。知らず知らずのうちに違法になる場合もあるとのことですので、きちんと理解することが必要です。

年休5日付与

いよいよ4月から、年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員について、年休の日数のうち年5日については会社が時季を指定して取得させることが義務となる。まず、このことから取り掛かる会社が多い。はてさて、そろそろ準備は万端にしてほしい時季が来ている。この案件は、ボクも随分慣れてきた…ぞ。


T社社長 「4月までに会社から年休の時季を指定する方法、どうしたら良いのかアドバイスくださいよ」

新米 「まず、知っていただきたいのは、対象者です。年に5日の年休を付与させないといけないのは、全従業員でなくて良いんですよ。年休が10日以上付与されている人だけです」

T社社長 「あ、全員かと思ってました。年10日っていうと…」

新米 「社員さんはもちろんですが、パートさんは、週5日以上の人ですね」

T社社長 「そうか、でも、それだけで良かった…?」

新米 「いえ、後はパートさんのなかでも最初は比例付与で年休の付与日数が少なかった人でも、年々増えて行って、付与年休が10日を超えたときから対象になるんです」

T社社長 「パートさんでも気をつけて管理しないといけないわけだね」

新米 「そうです。一度洗い出しをしてみてはいかがでしょう?」

T社社長 「うん。実はパートさんは今まで年休を与えたことがないんだ。年末には扶養の範囲の調整がはいることがあるけど、年休取得にすると、収入がアップするから欠勤扱いだったしね…」

新米 「そうだったんですか。では、パートさんへのアナウンスは慎重に…ですね」

T社社長 「うーーん、そうだなぁ…」

新米 「そもそも、年休の取得義務への対応としては、会社が時季を指定して年休を取得させることになりますが、自ら5日以上の年休を取得した従業員には会社は時季指定をする必要まではありません

T社社長 「うーーん。でも、好き勝手に取得されると困るんだよなぁ」

新米 「そうなんですね。今回の義務をクリアするには、従業員自らの取得、計画年休のいずれかの方法で従業員に年5日以上の年休を取得させれば、会社として時季を指定して取得させる義務はなくなります。では、やっぱり計画年休を導入しますか」

T社社長 「そうだねー。そっちを教えてもらおうか」

新米 「計画年休を取得させるには、就業規則への記載と労使協定の作成が必要です」

T社社長 「就業規則を直さないといけないのか、監督署に届出も要るんだね」

新米 「御社は10人以上ですから、就業規則の届出は義務ですね。この労使協定は届出は不要です。年休は1日単位で取得することが原則ですが、半日単位での取得も認められています

T社社長 「半日でなくて、1時間ごとの年休も認められているんだよね?」

新米 「年休の取得という意味では、労使協定を締結すれば、時間単位での取得も認められていますが、今回、取得義務化となる年5日には時間単位で取得したものは含められないんですよ」

T社社長 「え?1日単位と半日単位しか使えないってわけ?」

新米 「そうなんです。最初は、うちもトラックでの配送業などで早く運び終えたら、1時間でも早く帰ってもらって、地道に5日近くまで積み上げてもらえるよう時間単位の年休をお勧めしようとしていたのですが、使えないっていう決定が後からあって、がっかりしました。時間単位の年休の制度を導入している会社は、それを利用して時季を指定して年休を取得させても今回の法改正では意味がないということなんです。そのため、時間単位の年休と、1日単位、半日単位の年休は別々に管理し、1日単位と半日単位の年休を合算し、確実に5日を取得させる必要があります」

T社社長 「あら~、そうなんだ。逆にすでに時間単位の年休制度を入れている会社はたいへんだねー」

新米 「そうかもしれません。なかには、良かれと思って時間単位の年休を求められるまま年5日を超えて取得させて、気づかないうちに違法になっている会社もあります。そういう会社は、要注意ですね」

T社社長 「気づかない間に違法?わぁ~、そういう会社があるんだ。でも、他人事ではないかも…」

新米 「会社ではないですが、たとえば保育園さん。女性が多く、子供の学校や育児・介護などちょっとした用事には、時間単位の年休が便利なんでしょうね」

T社社長 「でも、時間単位の年休は、管理も大変そうだなぁ」

新米 「記録はしっかりしていただく必要がありますね。以前、就業規則の作成打合せ時に、初めて年休制度を導入しようとする会社さんが、1日8時間×20日=160時間分のコマを区切った表をいきなり作成して見せていただき、ビックリしたことがあります。時間年休も制限ナシに使えたら良いんでしょうけれど、年の上限は5日ですからね」

T社社長 「え!?時間年休って、上限の取得日数が決められているの?」

新米 「そうなんです。もともと年休っていうのは、労働者の心身の疲労を回復させる労働力の維持培養を図るそしてゆとりある生活を実現するということから生まれた制度なんです。年休の取得率が5割を下回る水準が続いていることから、時間単位による取得の希望を叶えるためにできた制度ではありますが、まとまった1日単位の休暇を取得するという年休制度本来の趣旨とは少々ずれているということで時間単位の年休は、年5日の範囲内と決まっているんですよ」

T社社長 「ほー、それは知らなかった」

新米 「時間単位の年休は、義務ではなく、労使協定も必要ですし、会社の意思がないとできないものです。5日分を超えて与えることは自由にできますが、それは、労基法上の年休にはカウントできませんから、10日の付与義務がある人に10日分全部を時間単位で与えたとなると、別に5日分の年休を与えないといけないことになります」

T社社長 「へぇ~!そうなってしまうんだね~。要するに、労基法では5日までしか認められないからその認められる5日と別途5日の合計をもってでないと、労基法上の10日とはカウントしてくれないってことか。それは、知らなかったから勉強になったよ、危ないところだった」

新米 「それに対して、半日年休は、自由に与えることができます。労使協定も要りません。会社が半日年休制度を導入するかしないかを決めて、就業規則に書けば良いです」

T社社長 「そんな違いがあるんだね」

新米 「はい、ただ、半日年休にはいろんな解釈があってちょっとややこしいので、それはまた説明しますね」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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