昇進や給与に関わる人事評価は、する側にもされる側にもある種の緊張感を強いるものです。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、自身の経験を踏まえ「人が人を評価するのは難しい」とした上で、その際に行なうべき「面談」が持つ3つの意味を記しています。
人事評価はむつかしい
私は、人事の専門家ではありません。しかし、人事がむつかしいことは、よく知っています。以前、人事について学んだことがありました。
- 成果主義
- 目標管理制度
- コンピタンシー
- エンパワーメント
- キャリアデベロップメント
- エンプロイアビリティ
これ以外にも、人事に関する用語は山のようにあります。しかも、欧米の考え方も数多く取り入れられて、なかなかむつかしいものです。
そして、多くの人がもっとも興味があるのは「人事評価」ではないでしょうか。人事考課とも、人事査定ともいわれます。それは、昇進や配属、給与に関わってくるからです。
私は、サラリーマン時代、年に2回訪れる「人事評価」が、本当に嫌でした。人が人を評価するのは難しいことなのです。とくに、部下を評価する時は、たまりません。いくら仕事とはいえ、部下の人生の一端を決めてしまうことになります。そんな資格があるとは思えなかったのです。
ですから、「情」が入り込んでしまうこともよくありました。それに、人には相性や好き嫌いというものもあります。それが、少なからず評価に影響を与えることだってあるのです。
逆に、部下もこう思っていたかもしれません。「あなたのような上司に評価されたくはない」。能力のある部下なら、そう考えても不思議はありません。
そんなこともあってでしょうか、人事評価の方法に「目標管理制度」というものが登場しました。
人事評価の内容
その方法は会社によって違います。私が知っている方法は、仕事に対する目標を自分で設定するものです。売上目標や利益目標はもちろん、顧客獲得数や改善提案提出数といったことも目標とします。
これらの目標値は、期の初めに上司との話し合いで決めなければいけません。そして、半期ごとに目標達成度に応じて人事評価をします。数字が基になっていますので、評価基準が明確で公平な評価制度のようです。
ところが、この目標管理制度も、組織運営において弊害が出ているところもあります。日本人は「他と同じ」ことを求める傾向があるからです。高い評価を受けた社員が、組織から浮いてしまいます。また、「妬み」が渦巻くかもしれません。
いずれにしても、あなたも毎年、人事評価には悩まされていることでしょう。あなたのお店では、人事評価に当たって、社員一人一人と面接をします。あなたが手にした人事評価シートをもとに、面談です。目標に対する実績が分かっていますから、その要因や努力をしたことを聞き出していきます。
その一方で、あなたから伝えられることは、がんばってくれた事柄や、期待していたことへの評価です。いろいろと会話をした後、今後の目標や計画について、お互いに意見をかわします。
中には、面談が1時間ほどになることもありますが、内容はこれで十分です。また、大きな会社なら、中間管理職が面談を行いますが、あなたのお店ならば、あなた一人で面談と評価を行います。その方が良いのです。
実は、あなたは普段から社員の一人一人と、よく話をしています。とてもコミュニケーションが上手です。それならば、わざわざ人事評価の面談をしなくても良いようなものですが、それはそれで意味があります。
面談の意味
その意味は3つです。
1つは、社員との真剣な会話が出来ることにあります。普段のコミュニケーションがあるとはいえ、人事評価の場での話し合いは真剣です。やはり、真剣勝負での話で、お互いの理解が深まります。
2つ目は、あなたが成長する機会だということです。人事評価をするためには、普段から社員一人一人の行動をよく観察しなければなりません。そのことで、社員を見る目が養われていきます。そして、社員からどんな考えが引き出せるか、社員にどんなアドバイスが出来るかが試されるのです。
また、この面談では、社員からあなたを判断されることにもなります。経営者としてどんな哲学を持っているか、どんな努力をしているのか、そして、どれだけ人間力が成長したかといったことを見られるのです。ですから、面談は成長の機会となります。
そして3つ目は、社員の皆さんに同じ方向を向いてもらう機会となるということです。例えば、話し合いの中で、業務を続けるうちに何となく方向性がずれてしまった社員の方向修正ができます。また、そうでない社員とは、改めて方向性の確認が出来るでしょう。
このように、人事評価の面談は、評価する側とされる側の場にしてはいけません。あなたも社員も共に成長をする場にすることです。
そして、もう1つ付け加えておきます。町のスポーツショップには、大企業のような人事評価制度は必要ありません。たいそうな評価シートが無くても、普段から社員のことを気にかけていれば自然と正しい評価が出来るのではないでしょうか。
それでも面談は必要です。面談によって、社員の人たちとあなたとの信頼感を強めることができます。そうすれば、あなたの決めた評価には、皆が納得することでしょう。そして、そんな経営者であり続けてほしいと思っています。
■今日のツボ■
- 人事評価はむつかしいが、やらなければいけない
- 町のスポーツショップには、大企業のような人事評価はいらない
- 人事評価の面談には、3つの意味がある
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