「会談の失敗は米国側の責任」と言わざるを得ない北朝鮮の事情

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第2回米朝首脳会談の「合意なし」という結果は、日本のメディアと同じく北朝鮮も予想できていなかったようです。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんは、事前に人民の期待値を上げきっていた当局や各メディアの言説を紹介し、失敗の責任を米国に押し付けざるを得なかった事情を解説。今後、北朝鮮国内での金正恩の立場に変化が起こるのではないかと注視しています。

米朝会談決裂は隠していた核施設を指摘されたため?

ベトナムのハノイで開かれた第2回目の米朝首脳会談は、北朝鮮問題研究者やアメリカ問題研究者、それにマスコミ関係者などの大方の予想を裏切って「合意なし」に終わった。

茶番劇と言ってしまえばそれまでだが、まさかまさかの結果であった。終わってからどうのこうのと言うことはたやすいが、今回の会談の結果は、アメリカ大統領選挙でヒラリークリントン候補とトランプ候補との選挙戦の結果、大方の予想を裏切ってトランプ候補が勝ったが、そのことを予想した人物は果たして何人いたか。日本ではフジテレビ解説者の木村太郎さんだけではなかったか。それに比べれば、今回の米朝首脳会談の結果については誰も当てる(予想)ことはできなかった

それよりも、大方の予想は「トランプ大統領が“完全非核化”に向けた措置を確約をさせられないまま、経済制裁緩和などの譲歩に踏み切るのではないか」「核凍結継続なら成功」というものであった。

一方の北朝鮮側は、金正恩が1月1日の「新年の辞」で「米国が一方的に何かを強要しようとし、制裁と圧迫に出るなら新たな道を模索せざるを得なくなる」と警告し、あくまでも、制裁解除ありきの交渉を迫っていた。

これは国連や国際社会からの対北朝鮮経済制裁で、北朝鮮経済は逼迫しており、これ以上の経済制裁は「体制護持と自らの命も左右しかねない」死活問題となっていた。

会談に先立ち、金正恩がハノイまで飛行機で行かなかったのは、自国の専用機を信じることができず、祖父の金日成がかつてベトナムを訪問したときに、中国経由の長距離列車で(途中飛行機に乗ったが)ハノイまで行くことにしたが(北朝鮮からベトナムまで陸路は3日かかる)、金正恩のいない北朝鮮の留守番役を努めた朴泰成朝鮮労働党副委員長は2月25日に、党機関紙の『労働新聞』への寄稿で「(金正恩の)愛国献身の大長征は、社会主義強国の建設を早め、祖国史に永遠に輝くだろう」と強調し、この度の長期の外遊は歴史的な成果を上げる、と国内向けにいわば“勝利宣言”をしていた。

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