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中国は軍拡で自滅へ。日本に安保対話を求める台湾・蔡政権の逆襲

先日掲載の「中国ジリ貧の低成長、それでも国防費を増大させねばならぬ裏事情」でもお伝えしたとおり、今年の全人代で20兆円に迫る軍事費を計上した習近平政権。中国の軍事的脅威はこの先ますます高まってゆくのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、日本を含めた周辺各国が取るべき政策と、習政権の今後を分析・考察しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年3月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】蔡英文「日本との安全保障対話を進めたい」日米台印が連携、中国は軍拡で潰れる

中国全人代 李克強首相、台湾独立「断固阻止」

今週も全人代の話題です。「中国ジリ貧の低成長、それでも国防費を増大させねばならぬ裏事情」でも述べましたように、全人代では毎年、国防費を拡大しており、今年も国防費の拡大を決めたために、今や中国の国防費はアメリカに次ぐ世界第2位の20兆円規模となりました。日本の約4倍です。2000年からの軍事費の伸び率を見ると、10倍ほどです。

中国が軍事費を使う場所は南シナ海など様々ありますが、今年の軍事費拡大には、台湾に向けたメッセージも含まれているようです。

全人代に先がけ、3月2日、台湾の蔡英文総統は、産経新聞の単独インタビューに応じて、日台の安保対話を呼びかけました。これは、蔡氏が2020年の総統選挙への再出馬を表明した後のことであることから、選挙に向けたパフォーマンスだともいわれていますが、取材は2時間にも及んだそうです。その一部を以下に引用しましょう。

日本と台湾の間には外交関係がなく、安全保障に関する対話は現在、民間・学術レベルにとどまっている。蔡氏は「東アジアに位置する台湾と日本は同じ脅威に直面している」と強調し、「安全保障協力の対話のレベルを上げることが非常に重要だ」と日台の当局間対話を呼びかけた。

 

蔡氏は「安倍晋三首相は台湾に非常に友好的で、就任以来、(日台関係で)思い切った決定をしてきた。次の段階として安全保障対話を強化する必要がある」と述べ、安倍首相の指導力に期待を表明。台湾や沖縄の周辺を通過して西太平洋に進出する中国の海空軍の動向に関する即時情報の共有についても「非常に重要だ」と意欲を示した上で、「日本側には法律上の障害を克服してほしい」と外交関係の有無を超えた日本側の対応を求めた。対話の内容については「伝統的な軍事面以外にサイバー戦争など新たな脅威についても意見交換したい」と述べた。

蔡英文総統、日本に安保対話要請 本紙インタビューで初明言

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また、2018年11月に行われた「九合一」選挙でも、中国からの偽情報には強い警戒をもってあたりました。こうした中国からの脅威は、いつ日本で起こっても不思議ではありません。また、日台が安保で協力体制を持つことができれば、互いにメリットは大きいと分析する専門家もいます。

この蔡英文の発言を受けて、3月5日、全人代で軍事費拡大が発表され、さらに台湾独立断固阻止の報告が行われました。李克強首相は台湾問題に関して、こう述べています。

台湾工作に対する大政策方針を堅持する。『台湾同胞に告げる書』発表40周年記念式典での習近平の重要演説精神を全面的に貫徹し、一つの中国原則と“92年コンセンサス”を堅持し、両岸関係の平和的圧点を推進し、祖国平和統一プロセスを推進する。台湾独立派による分裂の陰謀・行動に断固反対し、これを抑制し、国土主権と領土保全を断固維持する。

習近平がピンチ、中国「全人代」に流れる不穏な空気

香港やマカオの例を挙げながら、台湾にも一国二制度を敷いて統治するといった内容の文言もありました。そんなことを言われては、当然、蔡英文総統も黙ってはいません。対中国大陸政策を担う大陸委員会を通して、次のような声明を出しました。

中国が台湾の主権と尊厳、民主主義体制を深く傷つけようとしている。

武力による威嚇や(台湾内部の)分断を図る誤った統一工作をやめることでしか、両岸(中台)の良き交流の助けにならない。

台湾蔡政権「一国二制度を受け入れず」と反発 全人代報告に

国家主席の任期制度を撤廃し、自らを皇帝化した習近平でしたが、アメリカとの経済貿易戦争や失業率問題などを解決に導くことができず、共産党内では徐々にその立場が危うくなっているとの噂もあります。

習近平による「反腐敗」という名の粛清も続いており、かなり敵も増えているはずです。もしかしたら、政敵を追い落としたはずが、自らの足元をすくわれることになるかもしれません。あるいは、近いうちに共産党内部の地殻変動があるかもしれません。

ただ、中国共産党がどうあれ、台湾は蔡英文が総統でいる限り媚中的な政策はとらないという安心感はありますが、2020年には台湾の総統選挙があります。

蔡総統の呼びかけに対して、日本政府ははっきりと応じるわけにはいきませんが、民間交流という名のもとでの対応はいくらでもできそうなものです。蔡英文総統も、あらゆる状況を想定して、選挙前にやるべきことをやろうとしているようです。

今年の全人代では、中国の目標GDP成長率は6~6.5%に設定されました。前述したように、中国の軍事予算は20兆円ですが、日本は約5兆円、インドは4兆6,000億円、台湾が約1兆2,000億円でそれら3カ国を合わせれば11兆円にもなります。さらに日本の防衛費がGDPの2%程度にまでなれば、反中国3カ国あわせて16兆円くらいになるでしょう。

加えてアメリカの国防予算は80兆円で中国の4倍となっています。

まさに、中国はアメリカとの軍拡競争を展開しているわけですが、一方で、台湾、日本、インドという不倶戴天の敵も近くにいるわけです。中国はこうした国に対抗する軍事力も維持しなくてはなりません。

とくに日本の防衛費がGDPの1%枠から外れることになれば、さらに中国は軍拡に勤しまなくてはならなくなるでしょう。

このような状況下、私は、米中が軍拡競争態勢になったほうが世界平和に貢献することになると思っています。なぜなら、米中貿易経済戦争が継続しても、短期戦で終わっても、いずれにせよ中国経済の高度成長期時代はとっくに終わっており、中国にとって軍拡は大きな経済圧力だからです。

軍拡が続けば続くほど、党と軍との関係はおかしくなり、失業者が増え、国防予算が拡大して経済に与えるダメージが大きくなります。まるで、かつてのソ連のようになっていくのです。米中が軍拡路線をひた走ることで、両国は国内問題を増幅させていき、対外的に口出しする余裕がなくなり世界は平和になっていくというわけです。

加えて、日本やインド、台湾といった中国と対峙する国が組むことでさらに中国の軍事費を増大させることができる。蔡英文が日本との安全保障対話強化を口にしたのも、そうした中国の自滅を狙っての意味もあるのでしょう。

中国では退役軍人が5,700万人以上いますが、生活手当などの待遇改善を求めるデモがこのところ頻発しています。前回のメルマガでも述べたように、防衛と治安維持に巨額の費用をかけることによって、彼らの社会保障費もますます減らされることになりますから、デモや暴動がさらに起こる可能性が高まります。

中国で退役軍人デモが続発 背景に格差

中国の軍事費増大は中国をソ連型崩壊に向かわせる可能性を秘めており、アメリカを主軸にアジアの反中勢力が組むことでさらに中国は軍拡へ向かわざるをえなくなるわけです。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年3月12日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

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