ビジネスや商売がうまくいっている時に、他人の意見に耳を貸さなくなってしまう経営者は少なくないようです。「そんな経営者が率いる会社は根本から腐っていく」とするのは、無料メルマガ『ビジネス真実践』の著者で人気コンサルタントの中久保浩平さん。中久保さんは今回の記事で、「他人からの指摘や意見」の重要性を記しています。
指摘や苦言の必要性
ビジネスや商売、上手く行くときもあればそうでもないときもあります。一本調子でトントントンなんてことはありません。「以前は、面白いほど上手くいっていたのに、最近はさっぱりで…」とか、「10年前は何十人もいた社員が、今では3人しかいない」とか、「全国にあった各地の店舗を縮小のため閉店せざるを得ない」など、かつては成功をしていた会社やお店が段々と尻つぼみになってきて…という相談やご依頼を下さるケースがこれまでにも結構ありました。
勢いのあった頃は活気もあり順調そのもので未来も明るいと確信めいたものを持ち、「我が社はこれでいく」などと、社長自ら先陣を切って事業を推し進めて行く。でも蓋を開ければ、「あらららら~」なんていう残念な結果に…というパターン。
このようなことが起こってしまう原因の1つとして調子のいいときほど足元がちゃんと見えているようで実際は見えていない、あるいは、見ないふり、というのがあります。選択肢が他にあるにも関わらず、他には一切目もくれず突っ走ってしまう。さらには、そのことをきちんと指摘し、苦言を呈する人間が周りにいない。要するに何もかもが上手くいっているので、自社(経営者の考え)のやり方、進み方に一切の間違いなど無い。全てが正しい。という考えが暗黙のうちに凝り固まり、他人の意見に耳をかさなくなるのです。そして、社長のみならず社員の思考までもがそこで止まってしまうのです。
ビジネスや商売の世界でこのような思考停止というのは、とても恐ろしいことです。たとえば、勢いのある会社の社長が、「これからは○○の時代だ。我が社でも○○を仕入れ販売していく」と発表したとします。すると社員は、「社長がそう言うんだったら、やるしかないな」と何の躊躇も無くそれを受け入れます。こうしたときに、反論したいと思っても「社長がそういうんだったら、仕方が無い」となってしまうのが恐ろしいことなのです。
「社長、それを始めるには、もう少し調査をしてから…」「社長、その商品は競合のA社が扱っていますから、もう少し慎重を期すべきでは…」などという意見や議論を十分重ね、「じゃぁ実際、上手くいくかどうかわからないけどやるだけのことはやってみましょう」と、社員がみんな納得した上でやるというのであれば、たとえ失敗しても、「やはりまだまだ甘かったかな。この失敗を活かし、今後の商品は…」という反省材料になり、糧となります。また、上手く行ったら行ったで、みんなで新しいチャレンジをしたという自信に繋がりやはり、糧となります。
しかし、誰もが社長の考えや選択したことが、あきらかに無謀であると感じているのに、そのことに対して意見や指摘をせずまま「社長がいうなら…」というだけで、失敗すると、「やっぱりダメだった」で終わりです。社長の考え、選択肢が間違いであるということを誰も言わないし認めなくもなるのです。そうなると虚弱体質な会社と化していき、組織が根本から腐っていきます。したがって、会社に勢いがあったり、業績が順調であったりしているときほど、客観的な意見や指摘、苦言を呈してくれる存在が必ずいるのです。
実は、勢い任せや一過性のものではなく、着実に成長、発展している会社やお店の経営者ほど自分自身に対して客観的な意見、指摘、苦言を呈しくれる人を重用します。俗にいう参謀であったり、右腕、と呼ばれるような人たちです。大事な判断や決断に迫られたときほど、そういった人たちの意見に耳を傾け、熱くなった自分に冷静な判断力、決断力を促すのです。
会社が短期間で急激に成長したなんていう社長は特に、自信と欲が深まり、知らぬ間にあらぬ方向へ走ってしまうなんてことが往々にしてあります。そういう人こそ「おいおい、ちょっと待てよ」「落ち着いて」と言ってくれる人が必要なのです。
御社ではいつも客観的に意見や指摘をしてくれたり、苦言を呈してくれる人はいますか?いないとすれば、どうしますか?
■今日のまとめ
「社長には、客観的な意見や指摘、苦言を呈してくれる人が必要不可欠である」
- 業績が良いときほど足元をすくわれないようにするためにはどのような人間が必要か?独り善がりな判断にならないためにはどのような人間が必要か?人物像を書き出す
- 書き出した人間を育てる、あるいは雇い入れるために必要なことは何か?考えノートに書き出す
- 書き出したことを元に準備、計画し実践する
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