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大学生の4人に1人が「平均」の意味を判っていない亡国ニッポン

大学生の1/4が「平均」の意味をきちんと理解していないという記事が話題となっています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で世界的エンジニアの中島聡さんがそんな記事を取り上げつつ、「数字に弱い人」を食いものにするかのような商品を堂々と売る日本の銀行や証券会社に対して、批判的な視線を向けています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年4月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

大人の皆さん、「平均」の意味ちゃんと分かってますか? 大学生の4人に1人が間違えた“小6レベルの算数問題”

平均の意味がちゃんと分かっていない大学生が4人に1人いる、という話です。

日本の大学のレベルはピンからキリまであり、ピンの大学でも米国の大学と比べたら卒業するのは非常に簡単なのは私が実体験として知っています。そして、キリの大学となると、「何でこんな生徒が高校を卒業できたのか?」と思えるような生徒を集めているため、最初は高校卒業レベルに達するまでの補習から始まるそうで、そんな生徒も含めたらばこの数字も納得できます。

実際、社会に出ても、平均値と中間値の違いが分かっていない人に出会うことはしばしばあるし、定義は知っていても、ちゃんとした使い分けが出来ない人は50%以上いるのではないでしょうか?

政府の統計や雑誌の記事で、社会人の平均収入を取り上げたものをよくみます。収入のように激しい偏りがあるものの場合、平均ではなく中間値を使うべきなのですが、これこそが、平均値と中間値の使い分け方をちゃんと理解できていない人が大勢いる証拠です。

特にここ数年は、貧富の差が広がるばかりなので、年収の平均値にはそれほど変化はないものの、中間値は下がる、ということが起こっています。

さらに、年収の平均値や中間値の変化を何年かに渡ってとらえる場合、単純に金額だけを比べるのか(名目賃金)、購買力を考慮して比べるのか(実質賃金)という選択肢もあり、問題を複雑にしています。そこまでちゃんと理解している人となると、たぶん4人に1人とかになってしまうでしょう。

そんな風に「数字に弱い人」たちがたくさんいるからこそ、銀行とか証券会社は、やたらと手数料の高い金融商品を消費者に売りつけて儲けることが可能なのです。

外貨預金をする際に、資料に明示された為替手数料(1%程度)の他にも、円の売値と買値の差という形の隠れた手数料(往復で2%程度)があることを見抜くことは、私のように数字に強い人間も難しいので、普通の人は平気で騙されてしまいます

先日も、日本の大手銀行で「米ドル3ヶ月もの、金利が年5%」という広告を見ましたが、年利5%で3ヶ月預けると、もらえる利息は1.25%ですが、手数料が全部で3%程度かかるので、為替に変化がない場合で1.75%ほど損をすることになります。本当に顧客のことを考えているならば、そんな金融商品はそもそも扱うべきではないのです。しかし、「年利5%」という数字に騙されてしまう消費者が多いので、手数料稼ぎのためにそんな金融商品を堂々と扱っているのが日本の銀行なのです。

ライフスタイルとしてのダイエット

英語では、肉類を食べずに野菜しか食べない人のことをVegetarianと呼びますが、その中で、乳製品や卵まで徹底的に動物性タンパク質を避ける人のことをVeganと呼んでいます。

先週、Vegan Instagramerとして有名なRawvanaが、魚料理らしきものをレストランで食べているところを動画に取られてしまい大炎上しました(参照:Vegan Instagram influencer with 1.3M followers bust eating fish)。

本人は、Veganを長く続けていたら生理が止まってしまったため、医者に勧められて動物性タンパク質を摂るようになったと弁明をしていますが、スタイルの良いVeganとしてInstagramのフォロワーを増やし、21 Day Raw Challengeというダイエットプログラムを販売しているRawvanaが実はVeganどころかVegetarianですらなかった事実は、彼女の信頼を地に落としてしまいました。

ちなみに、米国では、VegetarianやVeganは単なるダイエット(食事療法)ではなく、ファッションでありカルチャーです。多くの場合、それは「Sustainability(持続可能性)」や左翼文化的思想(マリファナ合法化、中絶合法化、同性結婚合法化、銃規制強化)と連携しており、カルフォルニア州を中心とした米国西海岸カルチャーの中で重要なポジションを占めています。

とは言え、同性愛者と同じく、あくまで少数派なので、そこを誤解しないほうが良いと思います。

私の長男のお嫁さん(米国人)は、Vegetarianではありませんが、Organic(有機栽培)の食物しか食べず、卵・乳製品も一切食べません。

彼女に言わせると、Organicでない食材は、すべて農薬やホルモン剤に汚染されており、本来ならば法律で禁止すべきものだそうです。しかし、政府が規制強化をしないのは、モンサントによるロビー活動(政治家に対する政治献金)の結果であり、そこから自分たちを守るには、(多少値段が高くても)Organic食品を食べるしかないそうです。

ちなみに、米国で遺伝子改良食品(特にトウモロコシ)が、彼女のような人たちから目の敵にされているのは、遺伝子の改良そのものが危険性を持っているからではありません。モンサントは、除草剤であるラウンドアップをたくさん売るために、ラウンドアップに耐性のあるトウモロコシを遺伝子改良で作り出し、それを農家にライセンスしているのです。

そのため、遺伝子改良トウモロコシには、人体に危険のあるラウンドアップが含まれており、それを食べたり、そんなトウモロコシで育てられた牛を食べることには大きな健康リスクがあると言われているのです。

私の息子はシアトルで日本食のレストランをしていますが、様々な食事制限がある人からコース料理を注文されると結構悩ましいそうです。先日も6人のグループがコース料理を注文したのですが、そのうち二人がVegetarian、一人がgluten-free(小麦に含まれるグルテンにアレルギーがある人)だったそうです。そうなると、コース料理とは言え、それぞれの食事制限に合わせた料理を作らなければならず、普段よりも大きな負荷がキッチンにかかるそうです。

ここ数年は、(本来、グルテン・アレルギーがある人のための)gluten-free dietまでがファッション化しており、それを思いっきり揶揄したYoutubeビデオまであります(参照:How to Become Gluten Intolerant)。

image by: Shutterstock.com

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