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「違法派遣」の労働者を受け入れた会社には、何が課されるのか

労働者の健康管理を行うために改正された労働安全衛生法ですが、今回その中で、企業側のすべての労働者に対する労働時間の把握が義務化されました。これまでよりもさらに広くなった対象者の範囲といった注意点等が、今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』で紹介・解説されています。

労働時間の状況

働き方改革関連法に基づき、労働安全衛生法も改正された。「健康管理時間」とは、2017年9月8日に厚生労働省が労働政策審議会に諮問した『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱』に盛り込まれた特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)が適用される労働者の健康管理を行うための時間をいう。


E子 「『健康管理時間』というのは、労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間を合計した時間って覚えれば良いわ」

深田GL 「そういうことだな。労働基準法の規定に基づく労働時間管理がなじまない特定高度専門業務・成果型労働制の対象者について過重労働を防止するために導入された考え方ってことだよ」

E子 「高度プロフェッショナル制度で働く人には労働時間という枠の考え方がないから、働く人の健康を保つ新たな時間管理が必要になるのよね」

大塚 「健康管理時間は実際に働いた時間ではなく、休憩時間を含めたより幅広い時間を計る物差しで、国会審議で野党は『実労働時間を把握しなくなるので、過労死しても労災認定されなくなるのでは』と指摘しているわね」

E子 「他にも『労働時間の状況』っていう言葉の定義もおさえないといけないわよ」

大塚 「今までは『実労働時間』の把握が義務付けられていたけれど、今回の法改正以降は、健康管理の観点から、すべての人の労働時間の状況を把握することが企業に義務付けられたってことですよね」

深田GL 「労働安全衛生法による『労働時間の状況』の定義は、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかということで、これを把握するものとされたんだよ」

新米 「言葉の定義がややこしい!」

大塚 「すべての人って言っても、正確な対象者は高度プロフェッショナル対象労働者(高プロ)以外にはなりますけどね」

新米 「それが、さっきからの『健康管理時間』ってことですよね」

大塚 「そう、高度プロフェッショナル対象労働者は、労働状況の把握というレベルでなく、もっと広い健康管理時間を把握することになるってことね」

新米 「今回の安全衛生法改正では、そういう関連性になるってことですね」

E子 「そう、そして、すべての人っていうことから、裁量労働制が適用される人や管理監督者も今回からは労働時間の状況を把握することになるわ」

新米 「裁量労働制に人の労働時間は、統計ミス問題でも国会で指摘されましたね~」

大塚 「みなし労働時間にも上限規制がかかるんですよね」

E子 「そうね。今までは青天井だったけど、36協定の上限規制を考えると、実質は、1日10時間が上限になってしまうわね。11時間にすると、月45時間の時間外を超えてしまうものね」

新米 「11時間から8時間を引いて3時間。3時間が月20日にもなると、45時間どころか60時間にもなってしまいますよねー」

深田GL 「そういえば、働き方改革が入る前の昨年、裁量労働制を利用する会社に一斉に調査が入って、T社さんでは、早々と上限規制に該当するよう、みなし労働時間の削減指導がはいったね」

新米 「そうでしたねー」

E子 「これまで労働時間の把握義務については、労働基準法を根拠に適正な割増賃金の支払を目的とした指針『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』があって、このガイドラインでは、管理監督者やみなし労働時間制裁量労働制や事業場外労働の適用者は対象外とされていたわね」

大塚 「面接指導のための時間把握をするには、具体的には、客観的な方法その他適切な方法で『労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等』を把握しなければならないとされています」

深田GL 「この労働時間の把握は、労働基準法に基づく賃金台帳への労働時間数の記入をもって、これに代えることができるとされているんだ。今までも賃金台帳への記入は義務付けられていて、是正勧告の対象にもなっていたけれど、時給以外の社員などは案外漏れているケースも多いんだよな」

新米 「確かにそうですね。新規でお付き合いを開始する会社さんの賃金台帳を頂戴すると、あれっ?と思うことあります」

深田GL 「要は、毎日の労働時間が適正に把握されていることが前提でないと記入もできないわけだけど、割増賃金の一部対象外となる管理監督者やみなし労働制が適用される者については、把握すべき労働時間の実態が賃金台帳には記入されていないため、別途の把握が必要になるってことになる」

新米 「今までカウントされていなかった人のカウントもしていかないといけなくなった…。そういうことですよね?」

深田GL 「そう。今回、労働安全衛生法の改正では、健康管理の観点から、管理監督者やみなし労働時間制の適用者を含め、高度プロフェッショナル制度の適用者を除くすべての人の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握することが義務化になったってこと」

大塚 「あっ、まだ枠外があった!時間外労働の適用除外となる研究開発の業務従事者もでしたっけ?」

E子 「そうよ。研究開発業務は、医師の面接指導要件も厳しいわ。月に100時間超え者の場合は、申し出なしでも義務化されたのよね。それも罰則付きで…」

新米 「厳しくなりましたねー」


労働時間の状況について

現状

改正後

適正な割増賃金の支払を目的とした指針「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

(事業主のみなさまへ)労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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