メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の読者から、自転車の競技力を向上させるため、サプリメントや栄養面について教えてほしいと質問が届きました。桑原弘樹塾長は、ランニングと自転車の競技の違いをエネルギーの観点で解説。トレーニングに必要な栄養素順に何をどう摂取すればいいか助言するとともに、脂肪を効率的に燃焼させるために注意すべきことも教えてくれます。
サプリメントでパフォーマンスを上げるためには?
Q. 自転車をやっています。趣味ではありますが本気度も高いので、サプリメントや栄養の観点からもパフォーマンスをあげていけたらと思っています。(46歳、男性)
桑原塾長からの回答
自転車はランニングと並んで人気ですね。どちらも長距離であったり、当然長時間ということになるので競技的にも似ていると思われがちですが、意外に根本的には異なるものだと思います(もちろん共通点も多々ありますが)。
例えばランニングはエネルギー配分の競技です。コースや気温などレースごとに環境は変わりますが、それでも全体の距離は42.195kmと一定ですから、しっかりと練習をこなしてこの距離という負荷に体が適応できていれば完走できます。
一方、自転車の場合は、レースによって距離もまちまちであり、また高低差も激しかったり、ヒルクライムなどは競技自体が別物といえます。こうなるとエネルギー配分ではなく、エネルギー産出がより重要になってきます。
エネルギー産出をスムースにしようとしたとき、必要となる栄養素に優先順位が出来てくるのです。これは供給がストップした際にガマン出来ない順番に優先順位が高いことになります。
私たちが供給をストップされた際に一番ガマンできないもの、それは酸素です。酸素は栄養素ではありませんが、栄養素によって酸素の運搬は変わってきます。具体的には、貧血の状態では酸素の運搬はスムースに行われず、当然、エネルギー産生は滞ります。
そこで必要な栄養素は、ヘム鉄です。ヘム鉄はFe2+という二価鉄ですが、鉄には二価鉄と三価鉄の二種類があります。赤血球の中身として酸素の運搬役になるのがヘム鉄なのです。
次に押さえたいのがEPA(エイコサペンタエン酸)です。赤血球の中身で重要なのがヘム鉄であるならば、赤血球の膜で重要なのがEPAです。
同じω-6不飽和脂肪酸のDHAとは混同されがちですが役割が異なり、膜の成分はEPAの方です。EPAは非常に流動性が高い脂質なので、この比率が下がると膜が硬直化していくことになり、ひいては毛細血管の先まで酸素が届きにくくなってくるのです。
そして、もう一つ追加したいのが、キサントフィルという色素です。パワプロのオキシドライブがこのキサントフィルです。これは赤パプリカの色素なのですが、特異的に赤血球の膜の抗酸化をしてくれます。膜の成分がEPAでその守る役割がキサントフィルという事になります。
次に重要なのが水です。私たちの体の約60%は水分なので、いわば水のタンクを背負っているようなものです。ところが、このタンクには無数の穴が空いていて、どんどんと水は漏れていってしまいます。従って、如何に、レース中にこのタンクの水をしっかりと維持しておくかがポイントとなるわけです。
水の次に優先順位が高いのがナトリウムとなります。日常の食生活においては、ナトリウムの摂り過ぎは健康によくありません。減塩の味噌や醤油が流行るのも、ナトリウムの摂り過ぎを避けるためでしょう。
ところが、練習やレース中においては汗から大量のナトリウムが放出されてしまうので、このナトリウム不足を補う事が重要となります。ちなみに、水分不足による熱中症以外にも、ナトリウム不足も熱中症となります。この場合は、体が攣るという症状が起きやすくなるのです。
そして、その次に大切なのがエネルギー源となる糖質です。水分、ナトリウム、エネルギー源としての糖質の3点セットを賄えるという点でCCDは自転車を乗る人には人気があります。
しかし、ここで大切なのは、レース中の補給のみならず日頃からのグリコーゲンリカバリーです。如何にグリコーゲンのタンクを一杯にしておけるか。
グリコーゲンが足りない状態では脂肪も燃焼効率を著しく落としてしまいます。とにかくグリコーゲンが減ったら、すぐにその材料を補充する癖をつけておくことです。以前の号でもご紹介しましたが、米はグリコーゲンの材料としても最適といえます。
そして、最後にタンパク質となりますが、ここでのタンパク質はBCAAを指します。レース中の血中のBCAA濃度を如何に高めておくかがパフォーマンスの向上と、レース後の筋疲労の回復に役立ちます。
この一連の酸素→水→ナトリウム→糖質→BCAAは、エネルギー産生をスムースにするための材料となります。そして材料を実際にATPというエネルギーにするために、総仕上げとして補充したいのがコエンザイムQ10です。
材料が足りなかったり欠けていてはATPは作られません。しかし、材料だけではATPにはならないのです。実際に、材料をATPに変える役割として重要な成分がコエンザイムQ10ということになります。
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