日本の携帯大手3キャリアが新製品の発売を見送るなど、早くもGoogle取引停止の影響が出始めたファーウェイ。同様の措置を取る企業も続出すると見られますが、同社はこの危機を凌ぐことができるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でファーウェイの今後を占うと同時に、「同社の製品を信用することの危険さ」を説いています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年5月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】ファーウェイを信用することは「中国における言論の自由」を信用すること
ロイター通信は、アメリカの大手IT企業のグーグルがスマートフォン用の基本ソフトのファーウェイへの提供を停止したと報じました。トランプ大統領が今月、ファーウェイを念頭に、アメリカ国内の企業に対して、アメリカの情報通信インフラに脅威を与える恐れのある企業との取り引きを禁止したことを受けての措置です。
これによって、アプリをダウンロードするためのプラットフォーム「グーグル・プレイ」や「Gメール」といったメールソフトが使用できなくなる可能性が出てきました。
これに対してファーウェイはすぐさま、「世界で、すでに販売されたり、現在販売されているスマートフォンやタブレット端末について、その利用やセキュリティーのアップグレード、アフターサービスに影響はない。利用者は、安心して使ってほしい」という声明を発表しました。
しかし、何を安心しろというのでしょうか。現在のAndroidスマートフォンで中心を占めるグーグル製のアプリが使えなくなるわけですから、今後はファーウェイが開発した独自アプリで対応するということなのでしょうか。つまり、「オール中華製品」ということになると思われます。
それはそれで、さまざまな懸念がさらに拡大します。ただでさえ、ファーウェイ製品をはじめとする中国製情報機器については、不正プログラムの埋め込みなどにより、中国政府が通信情報を抜いているという疑惑が持たれています。そのため、アメリカをはじめ、日本などでも省庁や軍から中国通信機器を排除することを決定しています。
すべての基本アプリが中国製となるならば、当然、その開発には中国政府も絡んでいるはずです。そもそも中国政府は、中国に進出する海外のIT企業に対して、ソースコードの開示を迫ってきました。これに対して、アップルなどは「拒否した」とアメリカ議会で証言しましたが、外国企業だから辛うじて拒否できるのであって、当然、中国企業は強制的に開示させられているはずです。
● アップル、中国からのソースコード開示要求を拒否したことを証言–米議会公聴会
そのような状況下で、中国産のアプリを使うことの危険性は言うまでもありません。さまざまな情報が中国側へダダ漏れする可能性が否定できません。
ご存知の方も多いと思いますが、1999年、中国人民解放軍の空軍大佐である喬良と王湘穂は「超限戦」という新たな戦略を提唱し、世界に衝撃を与えました。これは、戦争を従来の戦場に限るのではなく、外交やテロ、金融、法律、メディア、サイバー空間など、さまざまな方法や場所、分野で戦争を仕掛けるというものです。
中国がサイバー部隊を整備し、世界各国でハッキングやサイバー攻撃を繰り返していることは、すでに常識でしょう。中国政府が他国の個人の銀行口座やパスワードなどを大量に盗み、その口座を無効にするような細工をするだけで、相手国の金融を麻痺させたり、パニックを起こすことも可能なのです。
また、スマートフォンのカメラを通じて利用者の日常を盗み撮り、弱みを握るといったことも考えられます。
人民解放軍が「超限戦」を提唱し、実際にサイバー部隊から宇宙軍までの創設が行われているわけですから、中国企業を使って他国の情報を盗み出そうとしていないはずがありません。中国においては官と民が一体、というより民は奴隷であり、官に従うものなのです。
歴史的にも皇帝制度がそうですし、それを支えた儒教では「知らしむべからず、依らしむべし」(『論語』泰伯)を政治の要諦として説いています。中国の知識人や権力者は、2,000年以上も前から、民に道理を説いても理解できないと考えてきたわけです。
中国共産党一党独裁の現在もそうです。だから中国共産党は絶対無謬であり、憲法にも「中国共産党の指導に従う」ことが最優先だと書かれているわけです。このような国で、民間企業が中国共産党に反抗できるはずがありません。
日本人は、まだまだ、そういう観点で中国や中国企業を見る人が少なく、非常に甘い。長年、中国のやり方を見て、接してきた台湾人からすると、とても危険なことだと思います。
ファーウェイをはじめ、中国企業が信頼できるようになるとすれば、少なくとも中国に言論の自由や民主政治が根付いてからです。民衆やマスコミが政府を監視し、政権選択を民衆が行うようになれば、民間企業を政府が意のままに操るなどということはできなくなります。しかしこれは、共産党一党独裁の終わりを意味します。
現在は逆で、中国共産党が民衆、企業、マスコミを監視し、指導するようになっているわけで、中国共産党の存続と利益のために「奉仕」することが義務付けられているわけです。
米中貿易戦争について、日本ではトランプ大統領が強権乱用しているかのように報じられていますが、少なくとも、アップルやグーグルなどアメリカのCEOは、しょっちゅうトランプ批判を展開しています。しかし、ファーウェイCEOは習近平批判をしたことはあるのでしょうか。
言うまでもなく、中国では習近平批判は絶対的なタブーです。習近平を批判するエッセーを発表した清華大学の教授は、停職処分となり、捜査の対象となりました。
習近平批判本を販売していた香港の銅鑼湾書店は、関係者が中国本土に拉致され、徹底的な取り調べが行われるという圧力を受けました。
その他、ネット上で習近平批判を行えば、すぐに逮捕・拘束されてしまいます。どう考えても、ファーウェイは中国共産党の指示に従わざるをえないわけです。そうでないというならば、習近平の言論弾圧やソースコード開示について、徹底的に批判し、服従しない姿勢を見せるべきです。しかしそのような姿勢を見たことはありません。
もしスマホ・ユーザーがファーウェイを信用するならば、それは、中国共産党が「言論の自由や人権をを守る」ということを信じることに等しいわけなのです。しかしこの世に、中国共産党が「言論の自由や人権を守る」と、本当に信じている人などいるのでしょうか。よほどのバカか、世間知らずではないでしょうか。
とはいえ、日本には、いつもは人権問題に敏感なのに、なぜか中国の人権や言論弾圧にはだんまりの人もいるので、「中国の人権弾圧や虐殺、言論弾圧はいいことだ」と信じている人も多いのだと思います。そういう人が、中国企業応援団になるのでしょう。
すでにインテルやクアルコム、ブロードコムなどのアメリカ部品メーカーも、ファーウェイへの供給停止を決定したと報じられています。
● インテルやクアルコム、ブロードコムもファーウェイに部品供給停止か(Bloomberg報道)
ファーウェイは生産停止の危機に追い込まれたと同時に、こちらも国内での内製化を進めることになるのでしょう。しかし、「純国産化」すればするほど、怪しくなるのが中国製品なのです。
image by: Karlis Dambrans / Shutterstock.com
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