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このままではアジアに負ける。欧州がEUを作った恐ろしい真の理由

グローバリゼーションの進行により、好むと好まざるとにかかわらず「運命共同体」の様相を呈する各国。とは言えその関係性は決して平等なものではなく、特に大航海時代以来世界を「支配」してきた欧州諸国は、優位性を保つためあらゆる手段を講じているようです。中部大学教授の武田邦彦さんは自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、あまり語られることのない「ヨーロッパがEUを作った真の理由」を考察しています。

日本も他人事ではない、激動のヨーロッパが世界に与える影響

世界は激変していて、その影響は近いうちに日本人にも直接的に及んでくると思います。2009年にアメリカのリーマンブラザーズという聞いたこともない会社がつぶれたというので、日本の会社は仕事を失ったことがありました。

冗談じゃない!と叫びたくなります。毎日まじめに働いているのに、世界のどこかで何かが起こったからと言って生活が脅かされるというのはどういうことでしょうか。お金の流れや企業同士の関係が本来の経済活動から遠く離れていることからくる異常ですが、それが現実なのですから、将来は改善されるにしても、当面は世界情勢をよくよく見ておく必要があります。

その目的で、今、激動中の世界を少しまぐまぐをお借りして整理をしてみたいと思います。第1回はヨーロッパ、とくに最近行われたEU欧州議会の選挙に焦点を当てます。

EUは、EU理事会(上院にあたる。各国政府が選出した代表者で構成)、欧州議会(下院。各国で行われた欧州選挙で割り当て人数の議員で構成)、EU委員会(官僚組織)で構成されますが、議会の権限が小さく、現実的にはEU委員会が法案の提出権を持っているので、ほぼEU委員会に支配されているといって良いでしょう。つまり各国が選挙した議会は法案を提出できず、官僚が提出した議案を審議しているだけなので、EUの権限が強くなると各国の主権が失われることになります。これが各国の不安を増幅させるもとになっています。

今年の選挙はその不満が一気に噴き出し、イギリスの選出議員は政権を持っている保守党、二大政党の労働党が大敗し、ブレグジット党が第1位、自由党が実質第2位、保守党は左翼のみどりの党にも敗れて第5党に転落しました。フランスも女性党首ルペン率いる国民連合が首位になりました。

全体の議員構成はそれほど大きく変化せず、反EU勢力が5分の1から3分の1になった程度ですが、インパクトは大きく、今後EU委員会が各国主権や難民問題でEUの利害を優先するとEUが急激に弱体化することが予想されます。

さて、今回の目的はEU選挙そのものではなく、なぜヨーロッパはEUを作ったか(作らざるを得なかったのか)を考えてみたいと思います。

500年前から世界を支配してきたヨーロッパはなぜ衰退したのか

コロンブスがアメリカ大陸を発見したのが1492年、バスコダガマが喜望峰を回ってインド航路を発見したのが1498年、つまり、ほぼ西暦1500年にヨーロッパ最初はスペインとポルトガル後にオランダとイギリスが全世界に進出し始め、その後450年にわたり、南北アメリカでは現地人を虐殺、アフリカでは奴隷獲得、そしてアジアでは植民地化を行って、全世界を支配してきました

なにしろ、合計してもブラジル一か国にも及ばない地域にすむ白人(アーリア人)が全世界の10億人規模の人たちを支配したのですから、一人当たり10人ぐらいの働く人を得たヨーロッパが豊かになったのは当然のことです。近代ヨーロッパで大きく発展した音楽、絵画、文学、哲学、技術などはいずれも素晴らしいものでしたが、それは食料、労働などを分担した有色人種の苦労があったからであることは確かです。

第二次世界大戦が終わるまでの450年間、ヨーロッパの人はアジア人などを働かせ、黒人奴隷を使って生活をしてきたのですが、気が付いてみると「自分たちが働いて世界を支配する」ということは到底できず、日本中国インド台湾韓国などの産業に負けることを自覚したのです。

これは著者の考えですが、植民地を手放した後ヨーロッパ人が考えた防衛策が、

  1. EUを作って集団で勝負すること
  2. 環境などをテーマにしてアジアの発展を抑えること

でした。それは時期的には、アジアが1950年代に、アフリカが1960年代に独立し、そのあと、EUと環境問題が1970年代から活発に議論されだしたことと符合します。

しかし、「自分で働いて自分で世界をリードする」というのはすでにヨーロッパ人には無理だったこと、リサイクルや地球温暖化問題を仕掛けたけれど、すでに発展していた日本以外の中国、インドなどが追従しなかったことで計画は失敗し、今回の欧州議会選挙の結果、そして次の環境問題としての持続性社会果てはプラスチックごみなどに変化しています。(メルマガより一部抜粋)

image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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