MAG2 NEWS MENU

生まれつき障害が認められたら年金の支払いは一体どうなるのか?

年金受給において重要になってくる事柄のひとつが、「子」の年齢です。子どもがいる場合には通常18歳年度末までは親の年金に加えて、子の分の加給年金が加算されるのですが、実はそれが20歳年度末まで認められる場合もあるようです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、障害等級1、2級に該当する子を持つ親の年金のケースを紹介。さらに間違いやすい年金の「障害特級」についても解説しています。

障害等級1、2級に該当する未成年の子が居ると年金支給が延長され、子が20歳になると…

年金の話題を出す時に「子」がよく登場しますよね。一応「子」という関係であればいいのではなく、年金でいう子というのは18歳年度末未満の子を指します。

※注意:未支給年金や国民年金の掛け捨て防止である死亡一時金等の「子」は年齢制限はない。

つまり高校卒業までは子という扱いですね。遺族年金や障害年金、老齢厚生年金に子の加給年金(年額224,500円)が加算されてる人は18歳年度末までの加算という事になります。

でも、18歳年度末未満の子でも、婚姻した場合は子とはみなされません。18歳年度末になるまでに、たとえば17歳で婚姻した場合は子の加給年金は17歳までという事になります。

逆に本来は18歳年度末未満までしか加算されない子の加給年金が20歳に到達するまで支給される場合というのもあります。それは障害等級1級または2級の障害をお持ちのお子さんがいる場合です。障害(障害というと大袈裟ですが、何らかの病気や怪我で長期的に日常生活に支障がある場合を指します)をお持ちのお子さんがいる場合は例外的に20歳までの加給年金を認めています。

というわけでそういう点を踏まえてちょっと簡単に一例を見ていきましょう。

1.昭和45年8月11日生まれの男性(今は48歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法(参考記事)

20歳になる平成2年8月から平成5年3月までの32ヶ月間は大学生だった。

なお、平成3年3月までの8ヶ月間は国民年金に加入する必要は無かったが、平成3年4月からは強制加入となった。平成3年4月から平成5年3月までの24ヶ月間は学生免除を使って国民年金保険料を全額免除していた(この期間は老齢基礎年金の3分の1に反映する)。平成5(1993)年4月から令和元(2019)年5月現在は厚生年金加入中。年収は毎年600万円くらい。

現在一緒に住んでる家族は17歳(平成14年5月18日生まれ)の子1人と、この男性の70歳超えの年金受給者の父母。子には先天性の病気があり、障害手帳3級が交付されている。

なお、平成27年7月5日に国民年金第三号被保険者だった妻(当時41歳)が病気により死亡。第三号被保険者だった妻の死亡により、この夫には国民年金から遺族基礎年金が支給されていた。遺族基礎年金は「子のある配偶者」、または「子」のみに支給される。

ちなみに平成26年3月31日までの妻の死亡だったら、夫には遺族基礎年金は支給対象外だった。平成26年4月1日からの改正で、夫にも遺族基礎年金の支給が認められるようになった。

原則としてこの金額が子が18歳年度末(令和3年3月31日)まで支給される。令和3年4月分以降の年金は0円になる。つまり消滅する失権という)。

ただし、この夫の子には障害手帳3級が交付されてますよね。障害等級が1、2級だったら遺族基礎年金と子の加算金が子が20歳になるまで延長されると聞いていたから、障害手帳3級では無理だと思っていた。しかし、年金で言う障害等級というのは障害手帳の等級の事ではなく障害年金に使われてる年金の等級を指す。障害年金を請求するとすれば1、2級に該当するか?が問題となる。

子が18歳年度末になるまでに年金専用の診断書を医師に書いてもらって提出してもらう。その結果、子の障害等級は2級に該当する事となり、子が20歳に到達するまで遺族基礎年金が延長される事になった。

子が20歳になるのは令和4年5月なので、5月分まで遺族基礎年金と子の加算金が支給される(夫への年金振り込みは令和4年6月15日で最後)。その後(令和4年6月分から)は夫の遺族年金は消滅する。

とはいえ子が20歳になるまで延長されたけど、子に障害があるのになんだか保障としてはそこで打ち切るなんて酷い!って思ってしまいますよね。

あのー、子は20歳になると国民年金からは障害基礎年金の保障に代わります。障害基礎年金は定額で、2級は年額780,100円(月額65,008円)で1級は2級の1.25倍の975,125円(月額81,260円)が支給される。子は今まで年金保険料納めた事ないですが、20歳までに負った障害は20歳前障害基礎年金で保障される。

なお、20歳になったら障害年金専用の診断書を医師に書いてもらって障害基礎年金の請求を年金事務所または市役所でやってもらう必要はあります。20歳到達月の翌月分から障害基礎年金を子の名義の銀行口座に支払う。

障害基礎年金は子の障害が回復するまで保障されますが(1~5年間隔で年金機構に診断書の提出が必要ですが)、回復の見込みが無ければ一生永久に障害基礎年金が支給される。

※追記

20歳前の障害を負った人には昭和61年3月31日までは社会保険としての障害年金は保障されなかった。それまでは障害福祉年金として、給付はかなり低かった(月2万円くらい)ものの福祉的な年金として税金で給付していた。年金は保険だから、社会保険の理論から言えば年金に加入してなかった人は助けようがないので、年金は支給する事ができないという認識だったから。

しかし、昭和61年4月(昭和60年改正)から基礎年金制度が導入されて、20歳前の年金に加入しない時に負った障害も国民が支払う保険料と税金を使って20歳以降になると障害基礎年金で保障する事になった。障害基礎年金で保障する事になり、障害福祉年金よりも3倍くらい高い給付が実現した。障害年金の大幅な給付改善だった。

なお、昭和61年3月まで障害福祉年金を貰ってた人は4月以降は障害基礎年金に変更(裁定変え)された。これは年金保険料の納付義務が無い20歳前に負った障害は本人が保険料納付義務を怠ったわけではないから年金を出すという考え方になったからです。

昭和60年改正は全体的には年金額を大幅に抑制した大改正でしたが、せめて障害者の人には喜ばれる年金を作ろうとして20歳前の障害も給付の高い障害基礎年金を支払おうと改正されたのであります。

なお、20歳前障害は年金に加入しない時の障害なので、一定の所得がある場合は停止されたり、国内に住んでないなら支給しないなどの給付制限はある。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け