【書評】なぜ安倍首相はアメリカを裏切り中国と関係を深めるのか

 

日本はいまもなお中国に進出している。大竹がいつも言うのは「株市場でも日本人が参入してきたら売りのときだ。すでにピークを打って落ち始める」。中国でビッグデータに熱くなっている日本企業は突っこんでいけば必ず失敗する。トヨタは中国、アメリカ、電気自動車の3つのマイナス要因で潰れるかもしれないと大竹の警告。キャラの違う二人の対談は面白い。

日本企業は中国から続々と引き揚げている、はずなのに、実は日本人の駐在員、工場の数は増えている。しかも奥地にまで進出している。その最大の要因はプライバシーとビッグデータの関係に他ならない、と宮崎。日本にはプライバシー保護でビッグデータを使えないが、中国では使い放題。だからコンピュータ関連企業が中国で実験し、ビジネスの新しい方法を見つけることができる。

米国在住、日米欧で30年以上第一線で活動する大竹はそれを否定する。日本企業が中国で実験して、新たなビジネスを成功させられるかというと、また失敗するときっぱり断言する。いいな、こういう予定調和ではないタイマン対談は。株市場でも日本人が参入して来たら「売り」どきだという。日本人が怒濤のように押しかけたとき、そのアイテムは既にピークを打って落ち始める。

AIにせよ、ロボットにせよ、いまのビッグデータにせよ、日本人が将来の成長の源はここにあるとして大挙して飛び込んできたときは絶好の売り場になる。それがウォール街の常識で、大竹も当然売りに行くという。さらに「ビッグデータ研究は、本来日本人が考えている宗教的基盤とは、相反することではないか」。宮崎も「人権がないところの方がやりやすいから」と同意する。

中国経済の崩壊により1億人ボートピープルが日本に押し寄せる。日本列島の人口は爆発的に増えて2億人、アメリカに匹敵するGDPを叩き出せる、と大竹は考える。絶対にあってほしくないシナリオである。ローマ・カルタゴの戦いに匹敵する「米中100年戦争が始まった、と宮崎はいう。「米中が戦火を交える第一戦目は5年以内に起きる。アメリカにはやる気がある」と大竹も応じる。

宮崎は大胆な予想を披露する。あまり当たらない人だが。ノーベル平和賞は世界ウイグル会議総裁のラディア・カーデル女史が受賞する。ウイグルに何の興味もないアメリカ人に刺激を与え、ウイグル人が中国に迫害されていることを知らしめる。ミャンマーのアウンサン・スーチー、アルバニアのマザー・テレサに贈ったのと同じ手法である。平和賞だけはアメリカの意向を汲むからだ。

クーデターは起きるだろうか。中国はクーデター防止のノウハウを持つ。習近平は充分な対策を講じてから外遊に出る。もっとも、露骨に習近平に刃向かう者は殆ど失脚してしまい、潜伏も不可能である。いまは外国の特派員にも尾行はつかない。上空からのGPSで彼らの居場所はすべて把握できる。特派員が友人のスマホで通信しても声紋でバレる。ロイター記者がこんな体験をしている。

湖北省の山奥から武漢に来て、マスクを外して街中を歩いたら何分で捕まるか。当局に掛け合っての実験では、わずか7分だった。監視カメラは全国津々浦々に2億台が配置され、交通警官のサングラスには顔面識別装置を内蔵している。綱紀粛正という大義名分を掲げて多くの利権を奪い取ってきた習近平は、そこらじゅうで恨みを買い、暗殺未遂が習近平19回盟友の王岐山が21回もある。

習近平の真の狙いは終身独裁の専制政治体制を敷くことである。いま政権が巨費を投じて、世界最強・最悪のデジタル・レーニン主義の監視社会を着々と構築しているのも、専制政治をより強固にするためでしかない。だがこのシステムには重大なアキレス腱がある。ネットセキュリティの100%完璧な保護は不可能であろう。在外の優秀な中国人ハッカーならそれを破ることができる。その卓越した能力を使ってくれ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock,com

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