お弁当の定番といえばおにぎりですが、栄養やバリエーションを考えると、「具材の用意」のハードルは一気に高いものとなってしまいます。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介しているのは、そんな消費者の悩みを一挙に解決した商品。テレビCMやインスタグラムなどでも目にする、味の素の「おにぎり丸」の戦略、戦術を解説しています。
複数の悩みを一気に解決
今号は、人気の冷凍食品を分析します。
● 大手食品メーカーである「味の素冷凍食品」が展開している冷凍のおにぎりの具「おにぎり丸」
戦略ショートストーリー
おにぎりの具にお困りの方をターゲットに「冷凍技術や商品開発体制」に支えられた「作るのが簡単」「栄養バランスが良い」「美味しい」等の強みで差別化しています。
新しいジャンルの冷凍食品として注目を集め、新たなおにぎりの選択肢として、忙しいママの悩みを解消することで、消費者から支持を得ています。
■分析のポイント
顧客の悩みを解決するのが、ビジネスの基本です。自分で作るおにぎりの具に対する悩みは例えば
- 具のバリエーションが少ない
- 手間がかかる
- 栄養バランスが偏る
などがあったわけですが、「おにぎり丸」がリリースされるまで、こういった悩みに対するストレートな解決策が示されていませんでした。つまり、おにぎりの具市場では、解決されていない悩みが複数、存在していたということですね。
おにぎりの歴史は長いですが、おにぎりの具の定番は、梅、鮭、昆布など長期にわたって大きく変わっていません。梅が苦手な子どももいますので、そういった定番の固定化に不満を持っていた方は多かったのでしょう。「おにぎり丸」の場合、子どもが好きなメニューがおかずになっているので、子どもに喜ばれますし、メニューも豊富なので、飽きにくいと言えます。
さらに、現代は、「時短」が求められる時代ですから、具を用意する手間を敬遠される方も多かったのでしょう。1982年のリリースからロングセラー商品となっているミツカンの「おむすび山」は、ごはんに混ぜて握るだけという手軽さがヒットの要因だったようですが、「おにぎり丸」の場合、混ぜる必要がないので、より手間が軽減されている印象ですし、一個から作れるというのも便利です。
そして、子どもの食事の栄養バランスを気にされる方が増えていて、特に運動系のクラブに入っている子どもがいる親には子どもの体づくりに気を使っている方が多いです。「おにぎり丸」の場合、管理栄養士監修のレシピを使用しており、栄養バランスも考えられていますので、安心感があります。
上記のように、「おにぎり丸」は顧客の悩みを解決していることがわかりますが、特に素晴らしいところは複数の悩みを一気に解決していることです。ビジネスにおいて、顧客の悩みを解決することが基本と申し上げましたが、複数の悩みを同時に解決できる打ち手は、非常にインパクトがあります。だからこそ、「おにぎり丸」ヒットしたと言えます。
歴史あるおにぎりの具においても、消費者の悩みに向き合うことで新しい価値を創造できるということを示した好事例だと思います。今後の「おにぎり丸」に注目していきたいです。