この米国本土に近いレベルの戦略的根拠地の機能を提供できる同盟国は、ほかにはありません。それを日本は、自国の国防と重ねる形で自衛隊によって守っているのです。 自衛隊が米国の有事に救援に駆け付けられないのは、日本とドイツの再軍備にあたって米国が自立できない構造の軍事力に規制したからにほかなりません。米国と対等に戦った日本とドイツに自立可能な構造の軍事力を持たせれば、国力が回復するにつれ、それに備えなければならなくなります。米国は、その懸念を最初から封じ込めたのです。その意味では、日米同盟は非対称的な関係にあるのは事実です。
しかし、アテにできる部分を提供し合うのが同盟関係です。米国が日本に求めているのは、つまりアテにしているのは、戦略的根拠地の提供と防衛なのです。日本に代わって戦略的根拠地を提供できる同盟国がない現実を見れば、日本は最も双務性の高い同盟国と言うことができるのです。
佐藤編集委員の記事に上記の視点が欠落していることは、これまで佐藤記者が取材してきた日本の官僚機構と有識者が、世界に通用するレベルの知見を備えていない現実を物語っています。 日米同盟を駐留米軍経費負担の金額で比較しているかぎり、増額を求められるのは避けられないでしょう。そして、米国に「お世話になっている」という感覚が抜けないほどに、装備品の導入にあたってもFMS(対外有償軍事援助)を値切ることに思いが至らない状態が続くと思わなければなりません。
その状態から抜け出すには、ジャーナリズムが国際政治の教科書にある一般論から同盟関係を眺める「初心者段階」から踏み出す必要があります。事実とデータをもとにした調査報道の基本姿勢と能力を身につける以外にないのです。(小川和久)
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