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誰も教えてくれない残り50年の人生をどう生きるのかという大問題

つい100年前の日本人の平均寿命は男女とも43歳だったそうです。メルマガ『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』の著者、武田邦彦中部大学教授は言います。人類が誕生した600万年前からつい最近までは、人間の一生は50年と少しに過ぎず、故に膨大にある先人の記録という人生の指針はすべて50年分のものでしかないと。そして、50歳からの「第2の人生」の計画を自ら立てることの必要性を訴えています。

人生100年の時代、50歳からの「第二の人生」が共存する社会とは

このシリーズの話は非常に重要だということと、大昔のお釈迦様やイエスキリストから、現代の文学や哲学にいたるまで、まったく触れていないことなので、少し繰り返しになることを恐れず、私たちの人生をしっかり見ていきたいと思います。

さて、日本人の平均寿命は戦争が終わるまで50歳を超えることはなかった。戦争が少なかった今から100年前の1920年代。男女ともに平均寿命は43歳、そして戦争が終わって数年後にようやく50歳を越えた。 私たちは実に奇妙な時代に生きているものだ。人類が誕生してから600万年もたち、さらに現在の人種(ホモサピエンス)ができてから10万年ほど経つのに、人類は生まれて50年も生きることができなかった。だから、私たちがちょっと早く生まれたら、確実に50歳以前に死んでいる。

ところが戦後、日本人の平均寿命は毎年0.4年ずつ伸びてきた。かく言う著者などは戦中に生まれたので、自分が1歳年を取ると、平均年齢が0.4年延びる。だから、生まれた時の平均寿命は45歳ぐらいだったのに、歳をとってもとっても、まるで追っかけごっこのように死ぬ時期が延びてきた

そしてついに2000年に平均寿命が80歳になり、その時、57歳だった著者はまた23年も生き残ることになったのだ。そして現在、50歳の人が死ぬときの平均寿命は100歳になっているといわれる。もちろん、人間の寿命に上限があるかも知れないし、逆に言えば、AIの発達で赤ちゃんの時から血圧やいろいろな健康指標が測定され、記録され、なにか少し病気になりそうだったら、事前にわかるようになるかもしれない。そうしたらさらに寿命は延びるだろう。

またこれまでの西洋医学の療法と全く違う、ペプチドを使った新薬が登場し、感染症も生活習慣病も十把一絡げに治す時代が来る可能性もある。さらには、日本女性は50歳以下の人と、50歳を越えた人の数が同じくなるのも数年以内である。
つまり、今後の日本社会は今までの日本人の人口分布をもとに、「高齢化」とか「少子化」というように呼ぶことはできず、「50歳以下の(第1の人生)の人」と「50歳以上の(第2の人生)の人」が共存する社会になるのは間違いない情勢なのだ。

偉人たちでも“未知”な「50歳からの人生」をどう生きれば?

ところがここに大きな問題がある。 人類が誕生してから今まで、つまりわずか70年ほど前まで、人類は「0歳から50歳までの人生の経験」しかもっていなかったのだ。だから、私たちは生まれてから50歳までの人生を詳細に描画することができる。生まれて10歳まで子供の時代を過ごし、親のもとで元気に成長する。10歳ぐらいになると物心がつき、勉強や運動もしなければならない。思春期にもなり、悩みも深刻になる。

そして20歳で一応の大人として体と心、それに常識もついて社会にでる。若い時代を一所懸命に生き、悩み、結婚し、子供ができ、育て、心配事と夢の中を行き来しながらの必死な人生の期間を超えていく。

40歳になると子供もある程度の年齢になり、分別もつき、徐々に自分から離れていく。でも、家も買わなければならないし、ローンもある。子供の交友関係や職場での問題にも翻弄される時期である。それでも50歳になると、すべてが一段落して、人生の終わりが見えてくるものだ。

自分が若いころ、まだ経験もないのに、自分の人生に何が待っているのか、どういう困難があるのか、ほとんどわかっているのは周囲の大人を見たり、小説を読んだり、お釈迦様の教えを勉強したりするからだ。先人の人生の行動、栄華、悩みは膨大な人間の記録として私たちに提供されている。

ところが、50歳になると、何が見えるだろうか? 自分や家族の定年のことをまず考える。それまで可もなく不可もなく商売やサラリーマン生活を送り、できれば65歳ぐらいまでは働きたい。それから15年たつと平均年齢になるので、そのぐらいを考えておけばよいだろう。でも、一方では国が「健康寿命」というのを発表していて元気で自分一人で生きることができるのは70歳ちょっとという。そうなると、あと5年しかないではないか!

病気がちで人の助けを受けながら10年も生きるのか?それも新しいことも夢もなく、ただ、死ぬのを待つだけの時間なのだろうか?それに年金も気になる。貯金も少しはあるが、なにしろ銀行の定期預金など利子はないようなものだ。自分がいつ死ぬかわかれば、それでも計画的に余生を送ることができるが、もしかすると80歳でうまく死ぬことができず、100歳になってしまうかもしれない。

image by: Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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