狙うは政権交代。勢いづく山本太郎「れいわ新選組」衆院選の勝算

 

山本氏の本気度に疑う余地はない。問題は政策だ。たとえば「消費税廃止」「奨学金チャラ」。ぜひ掲げ続けてほしいが、その場合、覚悟せねばならないのは、財源をめぐる批判だ。

財務省筋や御用学者、エコノミストらから「財政健全化に反するトンデモ政策」とか「左翼ポピュリズム」などとレッテルをはられるだろう。

山本氏の主張は、ほんとうに必要な分野への政府の支出が足りないということだ。財源は、大会社や大金持ちへの累進課税を強化することで捻出すると選挙期間中、言い続けてきた。もちろん、それは本当だろう。

一方、いま話題のMMT理論による政府支出推進の考え方がベースにあるのも確かだ。これは、税金収入をもとに政府支出をして予算を均衡させるというのではなく、必要な政府支出を優先するもので、家計や企業会計に慣れきった頭では誤解しやすい。MMTからみれば、消費増税などは愚の骨頂だ。

この理論の提唱者の一人で、このほど来日したニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が経済評論家、三橋貴明氏との対談で語った内容のうち、最も基本的で重要と思われる部分を以下のようにまとめてみた。

「我々の金を政府が支出するという考えに慣れてしまっている。実はその逆で、我々は政府の金を稼いで生計を立てなければならない。民間企業とか家計とは違う。貨幣の発行者である政府にお金が無くなるということはない。政府は税の徴収より前に、お金を使わなくてはならない。お金を循環させてから初めて課税する。MMTは順序替えだ。まず政府が支出するのです」

「政府がお金を作り出すことは無制限にできるが、実体経済において制約はある。“インフレ制約”が存在する。需要が急騰して供給能力を超えてはならない。経済全体の均衡が大事で、政府予算の均衡は必要ない税はインフレにならないよう引き算し調整するためにある」

与野党ともにMMTを勉強する議員が増えていると聞く。「政府が借金した分民間の預金が増える」。ケルトン教授の言うことに論理矛盾はない。

ただし野放図な財政運営でも大丈夫と誤解して“インフレ制約”を無視するようなことがあると、ハイパーインフレに陥ってしまうだろう。

MMT論者は、政府債務がGDPの240%になってもインフレになっていない日本がMMTの考え方の正しさを証明していると指摘する。裏を返せば、世界のどこにもMMTを政策として採用し成功しているモデルはないということでもある。

円の通貨としての信用性は、円で税金を払えることで担保される。政府支出で円が大量発行されても、需要増に供給が対応できれば問題ない。理屈ではそうだが、想定外の副作用があるのかどうか、やってみなければわからない

それでも、MMTはトンデモ理論として無視すべきではないと思う。課税が先だという従来の考え方は“天動説”で、政府支出が先だとするMMTは地動説かもしれないのだ。

山本氏は2%のインフレ率までなら国債発行で財源はまかなえると主張する。公務員を増やし、真の国土強靭化にも財政を投入するという。小泉・竹中改革以来の新自由主義路線に真っ向から対決する姿勢だ。

それを可能とする論拠の柱が、MMTだとするなら、国民が誤解しないよう、しっかり説明を尽くす必要がある。

image by: MAG2 NEWS

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