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「あおり運転の罪は軽すぎる」は本当か?現役弁護士に聞いてみた

連日報道される、あおり運転による被害。ネット上などでは、その悪質な行為に対する法律の不備などを指摘する声が多く上がっていますが、専門家はどう見るのでしょうか。現役弁護士の谷原誠さんが、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』で解説してくださっています。

あおり運転は厳罰?

こんにちは。弁護士の谷原誠です。

最近、連日「あおり運転」の報道がされていました。その中で、あおり運転の取り締まりが足りないのではないか、法律に不備があるのではないか、という疑問が出てきています。そこで、法律を確認してみましょう。

道路交通法には、次のような規定があります。

第26条(車間距離の保持)

 

車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

これに違反した場合、一般道では5万円以下の罰金(第120条12号)、高速道路では3月以下の懲役または5万円以下の罰金(第119条1項1号の4)が科されます。

第26の2(進路変更の禁止)

 

2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。

これに違反した場合は、5万円以下の罰金(第120条12号)です。

第24条(急ブレーキの禁止)

 

車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

これに違反した場合には、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金(第119条1項1号の4)。

あおり運転や急な割り込み、急ブレーキ等は、だいたいこれらに該当することになるでしょう。しかし、なかなか取り締まりが難しいのは、車間距離等はその場で現認しないと後日否認された際に立証が難しいためであると思われます。

最近、あおり運転の検挙が増えてきているように思えますが、それは、ドライブレコーダーの普及による効果があると推測します。ドライブレコーダーは、道路交通の状況、事故の状況を客観的証拠として保存しますので、交通事故の過失割合などを判断するにも有用です。

ところで、警視庁は2018年1月、各都道府県警に対する文書で、あおり運転の取り締まりを強化し、危険運転致死傷罪や刑法の暴行罪などの容疑の適用も視野に積極的な捜査をするよう指示をしました。

ここで道路交通法ではなく、刑法の「暴行罪」というものが出てきました。そこで、暴行罪を見てみます。

「刑法」

 

第208条(暴行)

 

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

法律上、暴行に該当する行為としては、人の身体に直接的に接触する必要はなく人の身体に向けられたものであれば足りるとされています。自動車で急激に接近することにより身体に対する不法な侵害行為だとみなされるということです。実際に、2018年4月に、北海道警旭川東署が、あおり運転行為を暴行罪で検挙しています。

そして、危険なあおり運転行為により事故を起こし、人を死傷させた場合には、「危険運転致死傷罪」として厳罰になります。

「自動車運転死傷行為処罰法」

 

第2条(危険運転致死傷)

 

次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。

4 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

怪我の場合は、最高刑15年の懲役ですが、死亡させた場合には、最高刑は、20年の懲役となっています。

もし、事故が起きてしまったような場合には、以上のような刑事事件の他に、民事の損害賠償の問題も出てきます。民事の損害賠償というのは、多くの場合には、保険会社との示談交渉を行うことになります。

● 【参考記事】交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと

交通事故の示談交渉は、特に怪我をして後遺障害が残ってしまったような場合には、非常に専門的な知識が必要となってきます。そして、後遺障害等級が間違っていると示談金も数百万円場合によっては数千万円も違ってくるので、とても大切です。詳しく知りたい方は、こちら。

交通事故で正しい後遺障害等級が認定される人、されない人の違いとは

また、慰謝料も一応相場は決まっているとは言っても、一定の場合には、相場よりも増額することもあり、ちょっと調べただけで示談してしまうのは、大きく損をしてしまう可能性もあります。特に、先ほどの危険点致死傷罪が適用されるような場合には、被害者の精神的苦痛も大きくなるとして、慰謝料増額となる場合もあります。

● 【参考記事】交通事故の慰謝料請求で被害者がやってはいけない6つのこと

さらに、一定の場合には、交通事故の被害者遺族等が、加害者の刑事事件に立ち会うことにできる「被害者参加制度」などもあります。

いずれにしても、交通事故の被害に遭った際には一度弁護士に相談するようにしましょう

● 【参考記事】交通事故で弁護士に相談する7つの理由と3つの注意点

今日は、ここまで。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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