12歳前後の子どもがとても多いアメリカ。それだけ悩みも多く、日本と同じように、新学期前には不安を抱える子どもが多く、各メディアが不安解消のヒントを発信しています。そんな中、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住のりばてぃさんが、紹介してくれるのは、『ハフィントン・ポスト』に掲載された「子どもに聞くべき15の質問」です。新学期前に親の愛情を伝えて不安を取り除き、前向きな気持にさせる15の質問を順に解説してくれます。
アメリカで親が子どもに聞くと良い質問集
アメリカでは、2007年にベビーブーマーを超える赤ちゃんが生まれたベビーブームがあったということで、今、子どもたちの数はめちゃくちゃ多い。2007年に生まれた赤ちゃんは今は12歳。その前後も出生数が比較的多いので、小学生の高学年から中学生くらいの世代はかなりの人口がいるのだ。
特集でもお伝えしたが、人口も多ければ当然、市場規模も大きいので、「バック・トゥ・スクール」キャンペーンや寄付の呼びかけなど注目の事象が数多い。
そして、新たな環境で生活が始まる子どもたちのことを心配する親も当然のことながら多いので、何かしら勇気づけたり、少しでも不安を取り除くためのアドバイスもいろいろある。全国放送の朝のニュース番組でも、新学期を迎える子どもたちの不安はどう取り除いたらいいのか?に対する専門家の意見を伝えるコーナーを設けたりもしている。
ご参考: ● Back To School: Tips To Set Kids Up For Success
さらに人気キャスターから子どもたちへのアドバイスなども。
ご参考: ● Back To School Advice From CBS2: Chris & Mary
起床時間を調整するために調整しよう、不安を少なくするため事前に学校や授業のことを知っておくなど準備しよう、食べ物などに気をつけようなどアドバイスや体験談など含めて様々な関連情報が登場する。
せっかくなので過去にも一度ご紹介したハフィントン・ポストの記事が読んでるだけで、元気や勇気がわいてくる感動的なものが多かったので、改めて見てみよう。
ご参考: ● 15 Back-to-School Questions to Ask Your Kids
タイトル通り、「バック・トゥ・スクール」を迎える自分の子どもに、どういう質問をすれば良いか?について書かれた記事で、子どもに聞くべき15の質問が紹介されている。それでは以下どうぞ。
[1]新学期で一番楽しみなことは何? What are you most excited about in the upcoming school year?
まず第一に新学期に向けて、一番楽しみにしていることや、最もエキサイトしていることを最初の質問で聞く発想は素晴らしい。この質問は、学校がはじまってからでも毎日でも聞ける。
「一番楽しみなことは何?」 What are you most excited about in~?
と聞かれ続けた子どもは、自然に、自発的に、何が楽しみなのか考えるようになるので、子どものポジティブな意識(物事の良い面を観察する能力)を育むことになるだろう。
「新学期」の部分を新しい「プロジェクト」や「お得意先」などに置き換えたら、職場の上司と部下、あるいは同僚の間でもモチベーション・アップにつながる質問になると思う。
[2]最も期待してないことは何? What are you least looking forward to?
これはさっきと逆で、子どもが不安に思っていることはないかを聞く質問だ。
大人だったら別に何も聞かれなくても、相談したいなと思ったときに相談するようなことでも、子どもの場合は、なかなか上手くタイミングを取れなかったり、言葉で表現できなかったりするため、こういう質問もしてあげることは重要ということだろう。
ただ、どうしてもネガティブな要素がないかどうかに目を向ける質問なので、特に、多感な年頃の子どもに聞く場合は、ある程度、聞き方に配慮する必要がある気がする。
[3]最大のチャレンジは何? What do you see as your biggest challenge?
上述の2つの質問を踏まえたうえで「チャレンジ」(=挑戦)を聞く、という流れがすばらしい。楽しみにしてること、不安なこと、どちらに対しても、自らのチャレンジを設定できるというワケだ。
もちろん、上述の2つの質問とまったく関係ないことでも良いだろう。いずれにしても、1問目の質問と同様に、自ら挑戦すべきことを認識することも、ポジティブな意識を育むのには有効な気がする。
[4]勉強以外で問題はあるの? Are there any non-academic issues that concern you about the upcoming year?
ここからまた別の流れの質問だ。2問目の質問に似ているが、わざわざ「勉強以外の問題」(non-academic issues)と明言するところがポイント。
新学期の話なので、学校の勉強のことばかり考えがちな子どもに、勉強以外のことについても視野を広げさせる質問と言える。これも、職場などで使えるだろう。
[5]これからの1年の勉強のゴールは何? What are your academic goals for the year?
さっきの質問の逆で、今度は新年度の「勉強のゴール」(academic goals)について聞いている。新学期の話なのに、まずは「勉強以外」について質問し、次に「勉強のゴール」を聞くという聞き方が上手いと思う。
子どもがあまり想定していない「勉強以外」について聞くことで、子どもの思考がより柔軟になってから、次に「勉強のゴール」を聞くと、たぶん、最初から「勉強のゴール」を聞くよりも、もっと具体的で、興味深い(=子どもが話をしているうちにやりたくなってくる)ゴールを聞き出せるような気がする。
[6]これからの1年の個人的なゴールは何? What are your personal goals for the year?
「勉強以外の問題」「勉強のゴール」に続き、「個人的なゴール」(personal goals)。新学期に向けた心の準備のために、これからどうするか?について考える未来志向になる必要がある。そこで、同じような質問を敢えて続けてみるということだろう。
この「個人的なゴール」(personal goals)を答えられるようになれば、まぁ、たぶん、その子はもう新学期への心の準備は万全だ。
[7]それらのゴールを君が達成するために、私たちはどうやったら手伝えるかな? How can we help to support you in achieving your goals?
新学期への心の準備が万全になった子どもに、嬉しい質問。いや、質問というか、これは愛情表現と言ってもいいかもしれない。
「私たちはどうやったら手伝えるかな?」 How can we help to support you? これはもう確実に、職場で使えるだろう。
[8]何かお望みの一般的テーマはあるの? Is there one general theme you need/want to focus on?
このへんから、聞き逃したことがないか確認するための追加質問になってる。「チャレンジ」じゃなくて「テーマ」、「最大の」じゃなくて「一般的な」に言葉を置き換えているのがポイント。
要するに、特に重要じゃないけど、気になってることあるの?みたいな感じの質問。
[9]去年とは何を変えてみるの? What will you do differently from last year?
これもさっきと同じで、聞き方を変えて、これまでの質問で聞き逃したことが何かないか確認するための質問だろう。去年と今年を比べて何を変えるの?と聞くと、成長に対する意識を高める効果もありそうだ。
何より、子どもが後から自分で振りかえるときにも、分かりやすくて良いかも?
[10]君がやる気を出したり、集中するために、何か特に役立つものってあるの? Is there anything in particular that will help motivate or focus you?
これも7問目と同じく質問というよりも、親からの愛情表現。見守ってるよ、応援してるよ、何かできることはあるかい…という主旨。
[11]学習習慣を向上・強化できる学習環境のために、何か改善したいことはあるの? Do you want to make any changes to your study environment that may improve or enhance your study habits?
これも質問というより親からの愛情表現。類似の質問とその意図に違いはないが、「学習習慣を向上・強化できる学習環境」などと、今回は、かなり大仰でかしこまった表現を使っている。おそらく、そうすることで子どもに親の真剣さを伝える効果があるのだろう。
[12]何が最大の障害で、あなたがそれに対処するため、私達は何を手伝えばいいの? What are your biggest distractions and how can we help you manage them?
これも質問というより親からの愛情表現。後半は、もうずっと愛情表現ばっかりになってるところも素晴らしい。これまで同様、表現は異なるが、すでに聞いた他の質問とその意図は同じ。
今回は「あなたが対処するため」(you manage them”)と質問で聞くことで、子どもに自分で対処すべきと認識させているのが、地味にすごい。
この「あなたが~するため、私達は何を手伝えばいいの?」という質問の聞き方はいろいろと便利かもしれない。
[13]あなたは、どうやって学校の課題や活動の優先順位を決め、私達はどうそれを手助けできるの? How are you planning to prioritize your schoolwork and activities and how can we be of help?
これも親からの愛情表現。これまで同様、表現は異なるが、すでに聞いた他の質問とその意図は同じ。
今回は「優先順位を決める」(planning to prioritize)がポイント。さっきと同じく、この質問を通じて、子どもに自分がすべきこととして認識させてる。
[14]あなたが整理整頓できるために、私達が手伝えることはあるかい? Is there anything we can do to help you get/stay organized?
これも親からの愛情表現。ストレートなのでより分かりやすい。今回は「整理整頓」(get/stay organized)がポイント。
[15]あなたの学業へ集中(やる気)を維持するため、私達にとって最良の方法は何? What’s the best way for us to keep a pulse on your schoolwork?
これも親からの愛情表現。最終質問だけあって、さらにストレートで分かりやすい。「私達にとって最良の方法」(the best way for us)…という表現に感動すら覚える。
15問のうち半分は質問というよりも、何か手伝えることはないか?という親からの愛情表現になっていて、本当によく出来ていると思う。
あと、こういった配慮も愛情も込められていると感じる質問は、質問力を鍛えるヒントにもなるので、いろいろ勉強になる。
image by: Shutterstock.com