原発で手さえ抜けばカネが浮く。関電幹部に渡った小判の出どころ

 

関電賄賂の本質は原発の「手抜き工事」

さて、数々ある喫緊課題の中でも真っ先に火が着くのは関西電力の巨額賄賂事件だろう。まだその認識が広まっているとは言えないが、この本質は原発建設にまつわる恐るべき手抜き工事による賄賂原資の捻出にある。

毎日新聞10月3日付「余録」は、勝海舟のこんなエピソードを紹介している。彼が唐津藩から頼まれて大砲を設計し鋳物業者に発注したところ、数日後にその業者が「お神酒料」を持って来た。中身は300両の大金で、1,000両の予算のうちこの程度を発注者に渡すのがしきたりだという。その分は材料の銅の質を落として捻出すると聞いた勝は怒るでもなく「俺は要らんからちゃんとした材料を使え」と突き返した、というのである。

このような江戸時代には当たり前だった商慣行が関電と福井県美浜町の間では生き残っていたわけで、関電トップが受け取った金品の中に小判も混じっていたというのはまるで落語のオチに使えそうな話である。

この原発の建設工事から魔法のランプのようにいくらでもマネーが湧き出てくる仕組みについて、本誌は2011年3月29日付のNo.561「東電:計画という名の無計画、安全という名の手抜き」で述べているので、以下に一部を再録する(高野著『原発ゼロ社会への道程』、書肆パンセ、12年7月刊にも所収)。

─〔再録開始〕────────────────────────

仮に設計が「絶対安全」だったとしても、施工が設計通りに行われているとは限らない。私は日本の原発の恐しさについて過去何度か取材をしているが、その中で出会った或る特殊塗装の高い技術を持つ企業の社長は、こう語った。

私は或る原発の塗装を請け負ったが、元請けの某ゼネコンが受け取った1平米当たりの塗装予算は8,000円なのに、間に何と7社が入って、末端で実際に施工するうちに来るのは1,600円。到底採算に合わないので、設計では2.5ミリ厚で塗らなければいけないのを1ミリ以下の0.何ミリでやるしかなかった。

 

他の下請けもみな同じで、鉄筋だって仕様通りのものなど入れられないから規定の何分の1の細いものを使うしかないと言っていた。

 

間に入る5社とか7社というのは、地元の自民党代議士やそれに連なる有力者で、彼らが割り振って中抜きをする。馬鹿馬鹿しいのと、仕事へのプライドから、一度だけで原発の仕事はやらなくなった…。

こんなことは、昔、あらゆる公共工事で当たり前に行われてきたことで、驚くには当たらないが、それにしても、本来は8,000円の価値のある仕事が現実にそれを実施する8次下請け会社には1,600円しか届かないということを、一体、国や東電はどう認識してきたのだろうか

そういうことは世の中にたくさんあって、私が何十年か前に直接経験した例で言えば、或る週1回の民放テレビ番組でスポンサーが払っている1本当たりのコマーシャル料は1,000万円で、それを電通、テレビ局が抜くのはまだ分かるとして、その下に金丸信の関係会社とか(何でここに金丸が出てくるのか?)聞いたことも見たこともない会社が3~4社も入ってきて、それぞれ何もしないでマージンだけを取って、結局、制作現場には400万円ほどしか下りてこない。それでやり繰りして、外注に出す取材映像も値切り倒すから、下請け会社は手抜きとかやらせとかで誤魔化すしかなくなる訳で、そうやって現場を犠牲にしながらプロデューサーとかは間に入った幽霊会社からバックマージンを得て私腹を肥やしている。そういう悪しき慣習がテレビの衰退を招いているのである。

テレビなんぞは観なければいいのだが、原発となると手抜きや中抜きは国民の命に関わるはずで、そこでもこんなことが日常横行してきたというのはおぞましいとしか言いようがない。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け