原発で手さえ抜けばカネが浮く。関電幹部に渡った小判の出どころ

 

次々と「不都合な真実」が明るみになり、さらに大問題に発展するとも囁かれる関西電力幹部らの金品受領事件。関電サイドは「原発マネー」の還流疑惑を払拭できない状況にありますが、そもそも彼らが受け取った金品はどのようにして作られたものなのでしょうか。ジャーナリスト・高野孟さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、かつてとある技術者が語った、原発建設現場での中抜きの実態でわかった「賄賂の作り方」を紹介。仮に今臨時国会でその真実が明らかにされれば、安倍政権は任期満了を待たずに終わると記しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年10月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「憲法」よりまず「関電」が焦点となる臨時国会──安倍首相は残り2年間でどんなレガシーを残せるのか?

10月4日臨時国会冒頭の所信表明演説で、安倍晋三首相がどれほどの勢いで改憲への意欲を宣言するか注目したが、翌日の新聞の見出しを借りれば「憲法改正、細心の訴え/野党批判封印、最後数分のみ」(読売)、「改憲固執、言葉は控えめ/強気封印、野党挑発避ける」(東京)という何とも中途半端な表現に終わった。自民党内の中堅からも「若干拍子抜けだ」との声も上がったという(朝日5日付)。

これでは任期中の改憲発議は無理ではないか

読売が「数分」と言っているのすらいささか誇大で、実際にはその部分を読み上げるのに1分弱しかかっていない。しかも中身がボヤケていて言葉に力がない。その部分をほぼ全部引用すると、次のようである。

「未来を見据えながら、教育働き方社会保障我が国の社会システム全般を改革していく。令和の新しい国創りを、皆さん、共に進めていこうではありませんか。その道しるべは憲法です。令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ憲法審査会ではないでしょうか。私たち国会議員が200回に及ぶ〔戦後国会の〕その歴史の上に、しっかりと議論していく。皆さん国民への責任を果たそうではありませんか」

改憲の焦点は、自衛隊でも集団的自衛権ではなく、ましてや北朝鮮の脅威対抗でもなくて、いつの間にか「教育働き方社会保障」に移ったらしい。しかしそのどれをどうしたいのか、それは法改正では間に合わなくて本当に改憲なしには実現しないのかは、全く定かでなく、何も心に響くものがない。これは、安倍首相の側近で先月まで自民党憲法改正本部長だった下村博文氏が9月21日、憲法第24条で「婚姻は両性の合意のみに基いて」となっているのを「両者と直して同性婚を認められるようにしたらどうかと語ったこととも平仄(ひょうそく)が合う。つまり2人とも、安倍首相が17年5月に発表した第9条に第3項を付け加え「自衛隊」の存在を条文上に明記することをはじめとした「安倍4項目」に必ずしもこだわらず、野党がそれで乗って来にくいなら社会保障や同性婚に問題をすり替えて、「どこでもいいどこか1つでも改憲したというレガシーを作りさえすればいいんだ」という、ほとんど自棄(やけ)のやんぱち路線に突き進もうとしていることが判る。

しかしそこまでハードルを下げたのでは、日本会議など右翼陣営や櫻井よしこら安倍親衛隊は納得しないのではないか。しかも両院の憲法審査会の“正常化”はまずは国民投票法改正から始まるので、これを今国会でクリアしないと中身の議論には入って行けない。ところがこの国会は67日間あっても即位の礼とそれに伴う首脳外交などもあって日程が厳しく、さらに野党は関電の巨額賄賂問題、消費増税と景気低迷、日米貿易交渉の裏の密約、千葉大停電の対策遅れ、かんぽ不正営業とNHK報道への圧力、あいちトリエンナーレ補助金ストップ問題など、喫緊の追及課題に事欠かないので恐らく国民投票法は一番後回しになる。そうすると来年1月からの通常国会でも改憲発議に繋がるような議論を始めることが難しく、安倍首相の残りの任期中にそれを果たすことは著しく困難になる。

それが分かり切っているので、ここで安倍首相はド迫力を見せて改憲への執念を示すべきだったが、そうはしなかった。やる気がないわけではないだろうが、何が何でも勝負に出るという風でもなく、またもや「やっているフリ」をして時間ばかりを消費していくのだろう。

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