喜ぶのは誰?「表現の不自由展」再開で左派が既成事実化したい事

 

また、もしも今回の展示が、戦前の軍国主義を賛美するような内容だった場合でも、再開支持派は「表現の自由」を守れと言ったでしょうか?むしろ率先して中止を訴えたでしょう。

「表現の自由」を標榜する日本のマスメディアは、はっきりいって、ダブルスタンダードです。李登輝元総統が母校の京都大学を訪問しようとした際中国の大阪大使館や京都大学が妨害しましたが、これを問題視する日本のメディアはほとんどありませんでした。私も母校の早稲田大学での講演を妨害され阻止されたことがありましたが、それを問題視するメディアはありませんでした。日本のとくに左派メディアは自分の主張に合わない言論への弾圧は看過して容認するのです。

慰安婦像が公金で「芸術品認定」されれば、ソウルや釜山の日本大使館、総領事館の前に設置されている慰安婦像も「芸術品を公道に置いているだけだ」という言い訳が使われてしまう可能性があります。

いうまでもありませんが、在外公館に対して、「安寧の妨害または威厳の侵害」を働く行為はウィーン条約違反であり、日本政府はこれを根拠としてソウルや釜山の慰安婦像撤去を求めています。

しかし、愛知県が公金によって慰安婦像を芸術品と認定することとによって、ソウルや釜山の慰安婦像、さらには徴用工の像に対して「これは芸術品であり威厳の侵害にはあたらない、それは日本の公的機関も認めている」という方便を与えてしまう恐れがあります。そういうことを、大村知事は考えていないのでしょうか。

私は展示物を見ていませんが、国民統合の象徴である天皇の写真を焼いて足で踏みつけるという映像が本当ならば、あまりにも異常な内容でしょう。

いま、香港や台湾では「表現の自由」を隠れ蓑とした、中国共産党によるプロパガンダが大問題になっています。

とくに台湾では、中国の動画サイトが進出し、台湾のウェブサイトを偽装してフェイクニュースを流して台湾国内を撹乱し巧みに世論操作を行う動きが活発化しています。テンセントやアリババといった中国企業傘下の動画サイトも台湾への進出を狙っており、台湾当局は「言論の自由が破壊される可能性がある」と警戒を強めています。

中国動画サイトが相次ぎ進出、「言論の自由の破壊の可能性」台湾政界が警戒

動画に書き込まれるコメントも、中国寄りのものばかり。台湾では使わない表現方法から中国人の書き込みであることが発覚しています。民主主義国家の台湾は表現の自由がありますが、その表現の自由を中国共産党は逆手にとって、フェイクニュースを台湾に次々と流しているわけです。そういう点では、ありもしない「強制連行」の象徴である「慰安婦像」を、表現の自由を理由に日本で展示するのと、同じようなものです。

こうした中国からのフェイクニュースが、台湾人による台湾人のための言論を封じミスリードすることになりかねないという点で、「言論の自由が破壊される」と台湾政界は危機感を強めているのです。

「表現の不自由展」は強制連行された慰安婦という「ウソをつく自由」と日本の天皇を「侮辱する自由」を「表現の自由」だと言い募っているわけです。

目下の香港の反中デモも、台湾のフェイクニュースをめぐる攻防も、まさしく「ウソの表現の自由との戦いなのです。物事の真偽よりも「表現の自由」ばかりが強調され、結局、フェイクニュースによって「言論の自由」が毀損されている。そのことを日本人はあまり理解していません。

表現の自由は重要ですが、これを悪用して政治的プロパガンダやフェイクニュースで国内を撹乱する動きには警戒しなくてはなりません。そうした自覚を国民がしっかり持つことが必要なのです。「表現の不自由展」再開も、そうした観点から見れば、何を既成事実化したいのかそれによって誰が喜ぶのかが見えてきます。

image by: Yeongsik Im / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年10月8日号の一部抜粋です。

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