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子どもを脅して言うことを聞かせた親が後でハマりがちな落とし穴

「イヤイヤ!」と言うことを聞かない子どもに対して、脅かすような「しつけ」をする親御さんは案外少なくないようです。今回の無料メルマガ『幸せなお母さんになる為の子育て』では著者のパピーいしがみさんが、そんな「脅しの育児」をすることで起きる弊害について、経験者の方の相談に回答するかたちで解説しています。

脅しの育児

こんばんは。パピーいしがみです。

今日のメルマガは「脅しの育児」としました。

冷静になれば「脅して言い聞かせようとしてもそんなやり方は良くない!」とお感じになるとは思うのですが、でも案外やっておられる方は少なくありません。例えば…ちょっと前にはやった鬼のアプリがありましたね。言うことを聞かない子供に「じゃあ鬼に叱ってもらうよ」と鬼に連絡をしたように見せかけ恐ろしい映像と声で子供を怖がらせて「親の言うことを聞けよ」と言わせるものでした。それを使った親から「ものすごい効果」「面白いように従順になった」のような声が上がり、瞬く間に知れ渡りました。又、それに対する非難の声もあり「トラウマになる」とか「子供の心に傷を負わせるのような声も聞かれました。

私も「どう思われますか?」と聞かれたことがありますが、推奨はしないものの完全否定もしません。というのは、子供にも「怖い」と思う物があった方がいいと考えるからです。例えば「悪い事をしたら罰が当たる」のような物語は今でもありますし、私たちの子どもの頃も「言うこと聞かないと押し入れに入れちゃうぞ」のような事を言われました。過去の「お父さん」の存在も子供にとっては怖い存在で、間違ったことをすればお父さんに叱られる…との気持が、子供が自分で自分を律する事にも一役買っていたと思うのですね。今は断るお宅も多いみたいですが、秋田のナマハゲも子供達には恐怖の対象でした。

ただ、子供を脅して言いつけを守らせる…のは、スパイスとしての使い方はあってもいいとは思いますが、それだけを続けると弊害が起きてしまいます。今日はそんな「脅しの育児」をしてきた(と仰る)シーちゃんママさんからのご相談と、お返事した内容をご紹介したいと思います。

パピーさん、こんにちは。勉強を始めたばかりでの相談で心苦しいのですが、ずっと悩んでいたのでメールさせて頂きました。

私は、4歳の一人娘を持つ、シーちゃんママと申します。ご相談させて頂きたいのは、私の接し方が子供の心を傷付けてしまったのではないか?と悩んでいる事です。と言いますのも、私は子供に恐怖を与えて言い聞かせる事をずっとしてきてしまいました。

最初は、娘が2~3歳の時に、イヤイヤが激しくて保育園のママ友に「これいいよ。聞き分けが悪い子が一発で聞くようになる」と言われて、スマホのアプリ(鬼の電話)を試したことからです。

お風呂から出てテンションが上がり、パジャマを着ないで遊んでばかりいる娘に聞かせました。その効果はてきめんで、娘は震え上がり、今までにないほど泣きましたが「ママを困らせないでちゃんとできれば鬼はこないよ」と言うと、すぐに服を着て布団にもぐり込み、しばらくは泣きながらもスッと寝たのです。

その時に「こんなに効果があるんだ!」と驚いて、子供がワガママを言ったり、聞き分けが悪いと「じゃあ、鬼から電話が…」と、毎日のように鬼をちらつかせ脅してきました。とても聞き分けが良くなり、良い子になった…と思っていました。

ですが、心配な事も起きるようになりました。「鬼が…」と言えば、怯えて言うことを聞く代りに、夜中に目が覚め「怖い怖い…」と泣き続けたり、「窓から鬼が見てた(我が家は3階です)」と言ったり、トイレが怖い、玄関が怖い、虫が怖い、夜が怖い、ママと離れるのが怖い…と異常に怖がる様になってしまいました。

明らかに情緒不安定な状態で「これはヤバい」と、それからは鬼の事を口にするのはやめました。その結果、娘の夜泣きや「窓から鬼が見てる」は無くなったのですが、異常な怖がりは続いており、朝起きて私がいないと「ママーママー」と大声で叫んだり、「保育園に行きたくない」「ママと一緒にいる」と泣き止まなかったり、保育園でも「元気がなくて小さなことで泣きやすい、積極性が見られない」と指摘されています。

私も仕事がありますし、いつまでも泣いている娘にイライラしてしまい「ママは泣いてばかりいる子は嫌い」とか「もう○○のママをやめたくなっちゃった」とか、必死の形相でくっついてくる娘に「しつこい!もう離れて!」など突き放したりしてしまいます。「鬼が…」をやめて1年が過ぎたのですが、この状態が変わらず、この先この子は大丈夫なのか?と不安になります。

元はと言えば、携帯アプリで躾をしようとしていた私が悪い事は十分に分かっていますが、今後、どうやって接して行ったらよいか教えて頂きたいです。

よろしくお願いします。

という内容でした。

この後、いろいろお話を聞いてみると、シーちゃんママさんは、アプリで脅かして子供を動かすことをやめた後も「××しないとママやめるよ」と言ったり、「嘘をついたらおまわりさんに言う」など、子供に恐怖心を与えて言い聞かせる事をし続けておられたようです。それはアプリで感じた「この方法が最も効果的なしつけ」と感じてしまった事にあったようでした。

なので私はこんな風にお返事しました。

シーちゃんママさん、こんにちは。パピーいしがみです。

まずメールを拝見して思ったのは、シーちゃんママさんが考える「しつけ」ですが、その前にしなければならなかったがあるのでは?と感じました。

子供があまりにも言うことを聞かなかったりワガママが酷くて手におえない時には「そんなことしていると…」と言いたくなりますし、たまにそれがあっても良いはと思います。その怖さが、暴走する子供の抑止力にもなりますからね。ただ、その怖さを感じさせる前に「なぜそれをしなければならないか?」という理由を“教える”事が何よりも先に必要だった、と思うのです。

確かに「恐怖心をあおる」事は、結果的に子供の行動に変化をもたらすので、しつけとして効果的に感じるかもしれません。ですが恐怖心をあおって従わせても、子供は「どうしてそれをしなければならないか?」が理解できません。

「しつけ」とは、ただ従順に親に従う事ではなく、子供がその時々で自分で考えて正しく判断できるようになる為ですよね。とすると「怖い事から逃れる為に、親に従った」だけでは、子供が自分で考えて行動するようにはならないのですね。

今回、保育園から「元気がなくて小さなことで泣きやすい」「積極性が見られない」と指摘されたと書かれていました。又、ご自宅でも、いろんなものに「怖い、怖い」と言って、お母さんにしがみつくようになってしまった、とも書かれていました。

とすると、本来子供が持っているはずの、自然な興味や向上心よりも「又、叱られるんじゃないか?」「脅されるんじゃないか?」という不安の方が大きくなってしまっているのではないかな?と感じるんです。

子供は叱られ続けるとどんどん自尊心が削られていきます。積極性も失います。ただそれだけでも「叱る」はデメリットが大きいのですが、それに「恐怖心をあおる」事をしてしまうと、さらに「不安」を強くしてしまいます。

多分シーちゃんママさんが「××しないとママやめるよ」と言われたのは、鬼と同じぐらいインパクトのある言葉を探した結果だと思うのですが、実はこの「ママやめるよ」の言葉は、子供にとっては不安感を与える最大級の言葉なのですね。不安の中で怯えている子どもにさらに追い打ちをかける事になってしまうのです。

シーちゃんママさんは「従順な子供」を望み「しつけ」をしておられたかもしれませんが、子供が従順になってしまったら、それは「正常ではない」と思ってほしいのです。いたずらをするのが子供であり、親の思い通りにしないのが子供です。そしてワガママを言ったり、甘えたり、手がかかるのが子供なんですね。それは確かに扱いにくい事でもあるのですが、いたずらをする事も「もっと遊びたい」などと言うことも、向上心があるからなんです。

今、そんな子供らしさを失ってしまっているとお感じであれば、まず、子供が甘え、ワガママを言えるように、あまり「いい子」を求めず、のびのびさせて下さい。叱る事よりも、甘えに応じてあげたり、ワガママに少し付き合ってほしいのですね。そして「××しないと××だよ」との脅しの言い方をやめて、なぜそうしてほしいのか、穏やかに理由を話してあげて欲しいのですね。

どちらにしても今、強く感じている不安感。それを取り除くことが何より優先すべき事だと思います。不安を与えない為にも、お母さんの表情も柔和にすることを心掛けて、安心できるようにご注意なさって欲しく思います。

上記にも書きましたが、シーちゃんママさんは「親の言葉に従順になる」事がしつけだとお考えでした。そして最も効果的に感じた「脅しの育児」をしてしまったのでした。幸いにも早くお気づきになって下さって、修正する事ができたのですが、この「脅しの育児」をすることで、起きることがいくつかあります。列記しますと…

1.(お返事にも記載しましたが)子供がなぜ叱られるのか、子供にはその真意が伝わらない、という事です。従順になったように感じても、理由が理解できていないので、子供にとって全くの学びにならないのですね。

2.そして「脅し」は、子供が成長してくると通用しなくなるのです。幼児期は親の力はとても大きいですが、成長して親の比重が軽くなると親がどんなに脅しても通用しませんし、子供が成長し恐怖が無くなれば、たがが外れて暴走してしまう事もあります。

3.自分がされてきた事を自分以外にするようになってしまい人を脅して動かそうとする(いわば加害者になる)のです。例えば友達に「××しないと叩くからね」とか「言うこと聞かないと仲間外れにする」と言ったり、親に向かっても「××してくれないのなら学校行かない」のように、自分の願いを叶える為に誰かを脅迫するようになってしまいます。

このようにどれをとっても、一つも良い事はありません。「脅しの育児」はその時(幼少期の短期間)は効果的に思えても、子供の将来を考えた時には、決して良いやり方ではないのですね。ですから、ほんのちょっと、スパイスとして使うのならまだしも、そこに頼るのはとても危険なんです。

後日、先ほどお返事をしたシーちゃんママさんから、お返事を頂きました。

パピーさん、お返事ありがとうございました。

パピーさんが、私を傷つけないように、とても言葉を選んでくださっている事が分かりました。でもその位、私は子供にとって良くない対応をしていたんですね。娘に申し訳ないです。特に「恐怖心をあおって言い聞かせても『どうしてそれをしなければならないか?』が理解できなければ学びにならない」は言われてみればその通りで、なぜそんな事も気付けなかったんだろう?と自分を責める思いでした。

アプリを使って、子供が驚くほど従順になった時、私は「こんな簡単な方法があったのか?」と感動すらしたのですが、その後も安易な方法に頼って、子供に負担を掛けていた事も分かりませんでした。娘の異常なほどの怖がりは、私の「脅しの育児」が原因だと深く反省し、ここから取り返せるように頑張ります。

今回、パピーさんからのお返事を何度も読み返し、テキストも全部読んで「甘えに応じる」「ワガママにも付き合う」「表情(笑顔)に気を付ける」を心がけています。娘にも少し明るさが見えてきて、あれほど執着していた「ママ、ママ」が若干治まってきたように思います。

もう大丈夫…とは言えませんが、未来を見据えて子供と一緒に私も成長できるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

シーちゃんママさんが「脅しの育児」にメリットがないと分かって下さってよかったです。まだ娘さんは4歳との事でしたから、きっと間に合うと思いますし、これからが親の努力の見せどころだと思います。

このメルマガの最初にも書きましたが、この「脅しの育児」を多用している人は決して少なくありません。もし「やっちゃってるなとお感じになったら早めの修正をお願いしたいです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 石神明生 【発行周期】 毎週日曜

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