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なぜ、20年も日本で働いた外国人労働者に年金が支払われないのか

厚生労働省が公表した2019年の「外国人雇用状況」の届けによると、外国人労働者数は1,460,463人で、2007年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新しました。それに伴い、社会保険や年金の相談も増えているそうです。そこで気になるのが年金の問題。この先、ずっと日本に永住するならわかりますが、そうでない場合、支払った年金はどうなるのか…? 確かに不明ですよね。そこで今回ご紹介する無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、外国人労働者は今の仕事をやめた後の年金はどうなるのか、という当事者にとって関心の深い話題を会話形式でわかりやすく説明しています。

外国人カウンセリングディ

社労士会はいろんなところとタイアップして社会貢献をしている。今回は、年に4回開催されている日本に住む外国人のための相談窓口についての話。外国人労働者が今後増えるなか、こういった窓口・場所はますます必要となるだろう。


 

新米 「昨日、担当された『外国人カウンセリングディ』って、どんなことするんですか?」

所長 「今年で30周年を迎えた蹴上の京都市国際交流会館で年に4回開催される行事で、弁護士による法律相談、行政書士によるビザ相談、税理士による税務相談、臨床心理士による心の悩み相談、社労士による社会保険・年金・労働問題相談そんな内容を外国人の方が1ヵ所で相談できるんだよ」

新米 「へぇ~、広い範囲でいろいろ相談できるんですね」

所長 「そういう意味では、一人で何ブースも回る人も多いね」

E社担当「社労士のブースには、どんな相談が来たんですか」

所長 「最近、社労士会の相談窓口では、年金が減って労働問題がほとんどになってるけど、『外国人カウンセリングディ』では、年金関係社会保険協定の相談が多かったね」

新米 「社会保険協定ですかー?うーーーん、苦手だなぁ、そんな相談受けたこともない」

所長 「たしかに日本人の方からはそんな相談受けないからね」

新米 「そうですね~。ちなみに昨日はどんな国の人たちが来られたんですか」

所長 「そうだね、昨日は、韓国、台湾、カナダ、オーストリア、フィリピン、ドイツ、フランス、イギリス、中国、メキシコ、カーボデルデ、ウガンダの方が来られいたよ。そのうち、私が担当したのは、台湾、フランス、カーボデルデ、メキシコ、中国、ウガンダの方だ」

新米 「カーボデルデって…?」

所長 「アフリカの北西沖に浮かぶ火山群島の国で、クレオール、ポルトガル、アフリカ文化の融合の他、伝統的なモーナ音楽や数々のビーチでも知られているそうだよ」

新米 「アフリカの島国なんですね。カーボデルテって国、初めて知りました」
所長 「うん、実は私もだよ。勉強になるね」 

外国人にはわかりづらい現行の年金制度

新米 「何か具体例を教えてくださいよ」
所長 「ん~、単純に社会保険だけの相談というのではなく、ビザとの関係などが絡むからややこしい案件が多いといえば多いね。でも、今の仕事をやめた後の年金はどうなるのか?っていうのは最大の関心事のようだね」

新米 脱退一時金のことですね」

所長 「そうだね。まずそれがもらえる権利があるかだね。でも、日本を出ないと請求できないことを知らない人は多かったね」

新米 「うーーん、そうかもしれないですね」

所長 「こんなケースがあったよ。20年も日本で働いている人が来年母国に帰国するので、年金について知りたいと窓口に来られた。ある程度溜まっているだろうという期待があったが、給与明細を見せてもらっても、社会保険料が控除されていない。結局無年金だってことがわかったんだ」

新米 「え?20年も日本で働いていたのに無年金?それはショックでしょうね」

所長 「そうだろうなー。きっといくらもらえるんだろう?と思って窓口に来たのに、0円だなんてね。罪な制度だと思ったよ」

新米 「日本は皆年金・皆保険なのに、そんなこともあるんですね」

所長 「今の勤務先は正社員だけど、1日3時間の短時間勤務。社会保険の加入義務はない。ここは、給与明細に社会保険料が記載されていなくて正解。他にも過去の給与明細をずっと見せてもらったが、ある時期少しは加入できる期間もあったようだけど、合計してもほんの数ヵ月のようだった。時給は高かったから生活はできていたんだよね」

新米 「そうなんですか、どうしようもないんですか」

所長 「国民年金をかけていたことはあるか?と聞くと『たぶんある』という返事があった。そこで、源泉徴収票も持って来られていたので、見せてもらったが、やはり支払った形跡はないんだ」

新米 「うーーん」

所長 「過去に何かを払った記憶があるというので、聞き取りをしてみたら、国民健康保険らしいんだよね。やはり年金はなかった…」

新米 「そうか、健康保険は払っていたんですね」

所長 「ある期間だけなのでずっとではないにせよ、これだけ長い間日本にいたら病院にも行くことはあるだろうしね。『17歳の時に1日12時間程働いていた。あの3年間が一番沢山働いたときだ』『その時の会社はもうなくなったが、社長とは今でも連絡は取れる』ということで、そこの期間分は元社長さんに問い合わせてもらうことにしたよ」

新米 「といっても、10年には足りませんよね」

所長 「うん、日本の期間だけではもらえないね。そこは、社会保険協定のある国だから、帰国した後に母国分とつなげば良いかと思ってる。また、母国の老齢年金及び遺族年金の支給要件には最低加入年数がないため、フランス法令に基づく保険期間さえあれば、日本の年金加入期間の通算を行わなくてもフランス年金の受給権は発生するんだ」

新米 「あ、10年なくても協定がある国だと母国で加入すれば救済措置はとれるってことなんですね。フランスの方で良かった~」

所長 「うん、ただね、国民年金は、20~60歳が原則の加入期間だろ?だから、20歳前の期間は、合算対象期間として期間のカウントは入っても国民年金としての金額のカウントはされないんだよね…」

新米 「金額のカウントが入らない…。合算対象期間ってそうでしたっけ?」

所長 「うん、勤務先で社会保険に加入していない=自分で国民年金、国民健康保険に加入しなければならないってことが周知できていないっていうのもとても大きな問題だと思ったよ。それが20年も続いていたら、一生に大きく影響するだろ。これから人生100年時代っていうんだから、これからのことにはもっと敏感になっていかないとね」

脱退一時金とは(日本年金機構HPより)

国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が6ヵ月以上あり、年金を受けることができない、日本国籍を有していない外国人の方が帰国した場合は、保険料を納めた期間に応じて、脱退一時金が支給されます。

日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求してください。

日本から出国される外国人のみなさまへ
国民年金に加入した外国人が帰国することになりました。このような場合、何か保障はありますか

image by: Shutterstock.com

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この日記をお読みくだされば、社労士及び社労士事務所の固いイメージが一変するかもしれません。 新米社労士が日々の業務・社会のルール等に悩み・悪戦苦闘する様子を中心に、笑いあり、涙あり、なるほどありの社労士事務所の日常を、ノンフィクション、フィクションを交えて綴ります。 水曜日のお昼休み、くすっと笑いながら、皆でお楽しみください。

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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