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無関心がマンションを崩壊させる。住民を総会に集める「秘策」

修繕積立金が不足して老朽化する一方なのに、マンション総会の出席は理事のみ…。こうした、住民達の物件管理や維持の意欲が薄れている「マンションの魅力を取り戻す手立て」はあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、約1年かけ住民の意識改革に成功した管理会社の取り組み事例を紹介しています。

総会出席率を劇的に上げた1年間の工夫に脱帽

こんにちは!廣田信子です。

マンション・バリューアップ・アワード2019」の部門賞を受賞した事例の中で、ぜひ、みなさんにシェアしたいものがありました。管理会社のフロント担当の方が、築13年のマンションを担当することになり、住民の関心の低さをなんとかしようと、1年かけて、住民間のつながりづくりをし、その中で、建物の維持管理への関心を高め、重要な合意形成を円滑に進めた事例です。

そのマンションでは、第1回の大規模修繕工事は、資金不足もあり1年遅れではありますが、何とか実施することが総会で決議できましたが、そこで資金を使い果たすことになり、今後、長期修繕計画に基づくと、修繕積立金を2.8倍に上げなくてはなりません。たぶん、当初の修繕積立金設定のまま、一度も見直されることがなかったのだと思います(私の推測です)。しかし、総会の出席者は理事のみで、住民の方々にその必要性を説明することもできません。そこで、フロント担当の方は、理事以外の住民の方に説明の場に参加してもらうために、様々な工夫をするのです。

住民は、比較的若いファミリーと定年退職後のご夫婦に二分されていたことから、まず、若いファミリーに関心を持ってもらおうと、大規模修繕工事の中間検査の時に、子供たちが「工事体験できるイベントを企画し、その後で「長期修繕計画の説明会」開催することとしました。

体験会では、べニアで壁をつくっておいて、シーリングガンでシーリング体験をし、また、ペンキで思い思いの絵を描くというものです。絶対に子供ならやってみたいと思いますよね。

案内にも工夫をしました。「必ずお子様もご参加ください」と記載し、配布した説明資料の裏面には塗り絵ができるようイラストを入れ、最後のページは切り取って折り紙ができるようにしました。なんて、きめ細かい気配りなんだろうと思いました。

その説明資料を見ただけで、お子様ウェルカムの思いが伝わり、小さい子供を連れて行ってもいいんだな、じゃあ、子供も喜ぶから参加してみよう…と思いますよね。結果は上々、若いファミリーはほとんどが参加し、全体では40世帯中20世帯の参加となりました。その場で、長期修繕計画と積立金の値上げの必要性についても、話を聞いてもらうことができました。

さて、今度は高齢世帯に関心を持ってもらうにはどうしたらいいか…です。で、高齢世帯と若いファミリーを繋ぐ企画を考え、駐車場を利用しての花火大会を開催することにしました。管理組合が花火と飲み物などを用意し、子供たちと高齢の方をグループにして、いっしょに楽しめるように工夫しました。

子供たちは、みんなで集まってする花火が大好きですから、それはたのしい時間になったでしょう。若いお父さん、お母さんは、車の整理や警備に当たりました。子供たちが喜ぶことのためには親は労をいといませんから。みんなが顔見知りになり、一体感を感じる機会として、最高の企画だと思いました。花火大会終了後には、また同じように、長期修繕計画と積立金の値上げの必要性について参加した30世帯に話を聞いてもらいました。

1年かけて、人のつながりづくりをしながら、長期修繕計画と積立金の値上げの必要性についての理解を深め、いよいよ総会となりました。そこで、最後の一工夫です。

「総会出欠届」ではなく、なんと、色付きの厚紙に、「特別招待状 総会へのご招待 当マンションの方限定です。」として、まるで、結婚披露宴への招待状と出欠届のように、工夫したのです。これもすばらしいアイデアですね。ぜひ、総会に出席してくださいね。お待ちしていますという思いが溢れています。それに、総会に出席するということは、組合員である自分たち限定の権利」なのだということもさりげなく伝わってきます。

そして、総会議案書の最終ページには、やはり塗り絵用のイラストが…。これをもらったら、用がない限り、出席しようと思いますよね。結果、総会に、40世帯中28世帯が実際に参加されました。委任状も集まり、皆さんがしっかり理解した上で、2.8倍の修繕積立金の値上げが円滑に決議されたのです。総会終了後、「この1年は楽しかった」「花火は毎年やってね」とたくさんの声が寄せられ、花火大会は、マンションの年中行事となっているのです。

この受賞者の方の感性には、本当に脱帽です。若い世代の男性は、こんなきめ細かい気配りができるんだと、感心しました。

どれも、どのマンションでも参考にしていただきたいし、どのマンションでもできることです。ご本人に了解いただいていますので、ぜひ皆さん取り入れてくださいね。

image by: Khun Ta / Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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