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ぬるま湯からの脱却。日本が「決めるべき覚悟」と進めるべき改革

あまりに長い「失われた30年」を経て、今や衰退途上国などとも揶揄される日本。国外に目を転じれば、北朝鮮が金正日政権時代を彷彿させるような「瀬戸際外交」を再び取り始めるなど東アジア情勢も緊迫化し、我が国は外交面でも厳しい位置に立たされていると言っても過言ではありません。今後日本は、どのような内政・外交政策を進めてゆくべきなのでしょうか。日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが今回、自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、そのカギを探っています。

中国の経済崩壊と第2次朝鮮戦争が真近か?

米中通商交渉の1次合意で、近々署名がされるというが、中国の経済崩壊が近いからのようである。それを検討する。

米国株価

NYダウは、連日の高値更新で、12月20日に史上最高値28,455ドルとなった。米中通商交渉で1次合意が近いことと、FRBが年末年初に短期レポ市場安定のために53兆円もの資金供給をするということで、リスクオンになっている。

完全な金融相場になっているし、PERは20倍以上で、割高な水準であるが、債券市場から株式市場に資金が流動してくると囃している。しかし、短期レポ市場の混乱があるということは、この好景気の中、FRBから資金供給がないと危ない銀行があるというだ。

そして、一番の株高の理由であるのが、米中通商合意であるが、米中トップ電話会談も行われて、署名を近々行うと声明したことで1次合意は確実のようである。

しかし、1次合意の内容は、中国に不利な内容であり、これに合意しないといけないほどに、中国経済は苦境にあることが分かる。これは後ほど述べる。

日本の株価

日経平均株価は、12月17日に年初来高値24,091円になったが、以後米中合意疑念、景気後退などから横ばいで、12月20日に23,816円となっている。

海外投資家の買いが優勢で、市場は楽観的な見方であるのは変わらない。PER14倍とNYダウに比べても低いが、高値警戒感も強い。

景気後退で、1月の企業決算は悪いことになるはずで、日本経済の弱さは、そう簡単に解決できない。しかし、経済状況と相反した形で、株価が上がっている。

その状況で、米中通商1次合意確実になり、どうなるかが見物である。

中国経済崩壊寸前で米国の勝ち

不平等な米中通商1次合意内容で、中国が折れたことで、相当に中国経済はおかしいことが分かる。中国地方銀行で取り付け騒ぎが複数件も起き心配したが、その後、国有企業のデフォルトも起き、地方政府のデフォルトも起こると心配され始めている。地方債のデフォルトが起きると、人民銀高官は企業などへの連鎖反応を警告している。

不動産価格は上昇しているが、買い手がいない状態で売れないし、GDP成長率6%と公式には発表しているが、実質はマイナス成長だとの噂も多い。

このため、予算上も厳しくなり、EVの補助金を大幅に減額して、半導体産業への補助金を増やして、米国から半導体輸入をしなくても電子産業が拡大できるようにする方針のようである。

また、中国初の国産空母「山東」を就役させたが、5隻の空母を作る計画を断念している。予算が取れないことによる。

どちらにしても、中国経済は、周小川元人民銀行総裁が心配したミンスキー・モーメントになっているようである。多くの金融機関の倒産を心配する事態であり、金融恐慌になる可能性もあり、早急に対応処置を取るしかない状態になっている。

その上、12月15日から電子製品の米国輸入制限になると、中国経済の根幹がダメになると、習近平国家主席は心配して、譲歩したようである。

中国政治局委員会で、習近平国家主席が主導して、対米強硬派を抑えて1次合意の承認を得たようだ。すぐさま、中国は、大豆と豚肉の輸入には関税を掛けないとしたことで、12トンの大豆が輸入されている。これに対して、トランプ大統領は、感謝を表明した。

さすがトランプ大統領の交渉戦術はすごい。大きなディールを成功させている。トランプ大統領への弾劾訴追を下院で民主党が可決したが、トランプ大統領への米国民の支持率が上昇したことで、反対に民主党の方が国民から支持を失う可能性も出ている。

ということで、ライトハイザーUSTR代表も1月2週にも署名できると宣言したし、これを受けて米株価も一層の上げを誘った。

次の焦点は、2次合意への協議であるが、米中共にまだ、言及していない。中国は「中国製造2025」をまだ諦めてはいないので、2次合意は難しい可能性はある。

しかし、トランプ大統領の勝ちであることは確かだ。

トランプ再選は確実か?

トランプ大統領の弾劾裁判は、上院で否決されることが確実であるが、2020年11月再選されるかどうかは、まだわからない

米国のキリスト教福音派の有力誌「クリスチャニティ・トゥディ」が、同派の多くの信者が支持してきたトランプ大統領を上院での弾劾裁判で罷免すべきだとする論評を掲載した。トランプ氏が「ウクライナ疑惑」をめぐり「憲法に抵触し道徳にも大きく反した」ためで、福音派のトランプ氏への支持にほころびが出ている。

福音派は、強固なトランプ支持層であり、ここが崩れると民主党にもチャンスがある。しかし、福音派が嫌いな同性愛者の民主党候補が正式候補になると、福音派の支持は難しい。バイデン氏やブルンバーク氏が民主党候補になると、トランプ大統領も再選の可能性が低くなる。

このため、若手市長のピート・ブティジェッジ氏への風当たりが強くなっている。バイデン氏が世論調査で支持率トップを走るので、ブルンバーク氏の大統領選出馬はなくなったようである。民主党として、中道派の候補が民主党での正式候補になれば、軍産複合体も福音派も応援できるので、民主党としては、普通の中道派の候補にする方が良い。

ウォーレン候補とサンダース候補は左翼であり、ブティジェッジ氏は中道派であり、先に左翼を落とし、次にブティジェッジ氏を落として、軍産学複合体は、中道派で老人の民主党候補を大統領にしたいのである。

ということで、トランプ大統領は、株価上昇で富裕層の支持を取り付け、イスラエル支持で福音派の支持を取り付け、製造業の雇用を増やして、ラストベルトの労働者の支持を得て当選するというシナリオを変更する必要になっている。

トランプ大統領は、強固な福音派の支持がなくなると、軍産複合体の要求を聞き入れて、票の積み増しをしないといけないことになる。

北朝鮮の焦りと第2次朝鮮戦争か

今年の北朝鮮のコメ収穫量が昨年の157万3,000トンから136万トンになる見込みだ。このため、全人口の約4割にあたる1,010万人に対して緊急の食糧支援が必要な状況である。軍の食料も足りずに、兵士が農民に銃を向けて食糧の確保に走っている。

このような状況にあり、金正恩委員長も経済制裁の解除を米国に求めているが、非核化を条件として米国も譲らない。特に外貨獲得のために人材派遣を中露に行っているが、この人材派遣も12月21日からできなくなるので、金正恩委員長は焦っている。

しかし、中露は、人材派遣の制裁緩和を国連に要請したが、米国の反対で緩和にならなかった。このため、中露は人材派遣禁止期限に来たが、黙認するようである。

そして、北朝鮮は、米国に反発して、瀬戸際外交に戻り、長距離ミサイルエンジンの実験をしたり、短距離ミサイル複数発打ったりして、米国へトップ交渉を促しているが、米国は実務者会談を要求して、ビーガン米特別代表を38度線板門店で待たせたが、北朝鮮代表は来なかったようである。

北朝鮮は、米国との非核化交渉で、年末を期限として制裁解除などに応じるよう譲歩を迫る一方、ミサイル発射場で活発な動き続くなどの挑発の度合いを強めている。

この一環として、長距離ミサイル発射して核大国を宣言すると、危ないことになる。

今までの米国は、米朝の緊張状態になると、韓国の米軍基地にB52やF22などの滞在情報を出して、北朝鮮に緊張の緩和を促していたが、今回は、そのような情報を一切、米軍は出していない

しかし、米太平洋空軍のブラウン司令官は、「この数週間の北朝鮮の発言とさまざまな実験は、何らかの活動が行われていることを示している」と述べ、警戒していることを示した。

というように、米軍は臨戦態勢を取っていることは間違いないので、情報公開しないことは、本格的な攻撃を予定していることになる。

もう1つ、軍産複合体への支持を取り付ける必要から、北朝鮮の挑発に対して、トランプ大統領はミサイル発射基地への爆撃などを考えているように感じる。

と嫌な感じがしてきた。金正日書記長時代は、米国トップとの会談をしないで、瀬戸際外交をしてきたが、今回は米朝トップが会談をした後であり、トランプ大統領は、金正恩委員長を信頼していると言っているので、ミサイルを発射すると裏切りと見ることになる。

第2次朝鮮戦争になる可能性も高まっている。12月21日安倍首相は、トランプ米大統領と約1時間15分の長電話で、北朝鮮情勢などを協議。終了後、首相は「最新の北朝鮮の情勢について分析をするとともに、今後の対応について綿密な擦り合わせをした」と語った。

12月24日に日韓首脳会談が開かれるが、米国は日韓の友好を促すのも、この第2次朝鮮戦争への準備の一環のようだ。

日本の覚悟

このように東アジア情勢が緊迫してきているが、国内は危機感なしの状態である。量的緩和や財政出動などのぬるま湯政策に慣れて、そこから出られないようである。

消費税増税反対派の人たちは、増税で景気後退になったというが、中長期の衰退に日本は陥っているので、これを金融政策や財政出動だけでは、再度日本を成長軌道には戻せない

反対派は、日本の中長期的な衰退を認めずに、消費税増税反対しているが、今後の社会保障費の不足や少子対策などの資金が必要になる。これに対して、増税は必要であり、その時期が問題であるという人もいるが、今後、日本の復活は金融政策や財政出動だけではないので、その時期は永遠に来ない。このため、いつやっても同じで、景気後退になるだけである。

そして、今は、米国のバブル醸成時で日本株もバブル化して上昇になっているので、景気後退にすることで、このバブルを抑えることができ、増税は非常に有効なバブル抑制政策になっている。

もう1つの増税を必要ないという人たちは、量的緩和政策や財政出動だけで良いというが、それでは、中国と同様にいつかはミンスキー・モーメントになり、金融崩壊などを起こすことになる。経済の実力を上げる政策を実施しないと、未来永劫、財政出動や金融緩和だけでは、日本の復活はできないだけでなく衰退を加速させてしまう。そして、経済成長の基礎部分には人口増加が必要である。

しかし、現政府は、ぬるま湯に慣れた人たちの批判を恐れて、必要な規制緩和を進めないことや官僚の関係企業への天下りなど、昔の悪習に戻り始めている。政治家の汚職も出てきた。長期政権の緩みが出てきたことは確かである。

国家が衰退する原因は、危機感なしで、改革もしないで時を過ごしていくことである。

このため、統制経済化して、衰退する中で所得再分配を主導して、また長期のイノベーションを目指した研究開発を行う国家主導経済に一時的にしたらどうかと提案した。

そして、今後、益々東アジアは混乱してくる。米国は自国優先になり、徐々にアジアからも軍隊を引き揚げていくので、防衛費も増額が必要になり、米軍撤退となると、中国とも完全な敵対関係にはできない。

日本の経済力が減少する中での外交は難しくなり、強気一辺倒の外交政策は危ないことになる。現実を見た実力に合う外交政策が必要になっている。

移民政策や英語教育や国家主導経済など、改革が必要であるし、中国との関係を、付かず離れずというようなあいまいな関係にして、中国の力が落ちるのを待つしかない。米国から自立する必要もあり、際どい難しい外交を行う必要になっている。

どちらにしても、日本が衰退していくと覚悟して、内政・外交政策を立てる必要になってきたように思う。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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