MAG2 NEWS MENU

食い物にされる沖縄。軍事アナリストが呆れる知事公室の随意契約

沖縄県知事が訪米する際、要人との会談を取り付けるなどの委託費が高すぎると議会で問題視され、琉球新報が報じました。これを精査したところ、ほかにも適切とは思えない委託費を支払っている随意契約があると声をあげるのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、これらは氷山の一角で、沖縄の基地問題が進展しない原因がこういった部分にあると鋭く指摘します。

沖縄県の税の使い方は適切か

新年早々、琉球新報にこんな記事が載り、沖縄の基地問題がいっこうに進展しない根源を見せつけられたような気がしました。

「知事の訪米に合わせ、米国の元政府高官や有力議員らとの面談のアポイントメント(約束)を取り付けるなどの業務に関し、県が随意契約した米ワシントン郊外の日本系シンクタンクに支払った委託費用が5年間で3億3573万円に上っている。委託費を巡っては県議会自民党会派から『高すぎる』との声が上がっており、議会で追及が続く見通しだが、県は『県民が過重な基地負担を背負い続け、基地に起因する被害が多いことなどを知事が直接説明してきた』と意義を強調する。   県が『ワシントン事務所駐在員活動事業委託業務』として委託しているのは、メリーランド州に本社のある『ワシントンコアL.L.C』。欧州や日本にネットワークを有するシンクタンクとして、県の他、日本政府などの業務を受託してきた。   県基地対策課によると、これまでコア社が実現させたのは2015年に上院軍事委員会のマケイン委員長(当時)やリード副委員長(同)の他、17年のモンデール元駐日大使、18年のペリー元国防長官と翁長雄志前知事との面談など多数。(後略)」(1月3日付琉球新報)

そこで「知事公室における随意契約の実績」を調べてみました。ここ2年間についてだけですが、次のようになります。

なんと1億820万782円!

このワシントンコアLLCというシンクタンクが選ばれた理由について、沖縄県の資料は「プロポーザル方式により広く公募を行ったところ1社から応募があった。企画提案内容等を選定委員会において審査したところ、左の社の企画提案内容が優れていることから、契約の相手方として選定した」としています。

公募という名の「指定席」だったという印象が濃厚です。マケイン、リード、モンデールの各氏くらいなら、私でもアポイントメントを取ることは難しくなかったでしょう。もし、これからの公募に私のシンクタンクがもっと安値で応募したら、沖縄県はどのようにして落とすのか、ちょっと眺めてみたい気すらしてきます。

沖縄県の対米活動の一端を知る私としては、県議会自民党会派の指摘はもっともだと思わざるを得ないのです。

契約に関する費用が高すぎる

このとき、同じ沖縄県の資料に米国と同盟関係にある外国の地位協定の調査についての契約実績があるのに気づきました。まずは、金額をご覧ください。

なんと、4カ国の調査だけで708万6590円。どうしてこんなにお金がかかるのかといえば、沖縄県の資料によれば、「本県においては、ドイツにおいて同様の業務を委託した実績が少なく、本業務を実施できる業者が限られていることから、見積合わせ等を行うことが困難であるため」だそうで、そのため特命随意契約にしたとのことです。相手方については、個人につき非公表としています。

米国と同盟国の地位協定については、日米地位協定の妥当性を検証するためにも必要な作業で、日本政府が調査をしたかどうかも不明ななかでは、沖縄県が独自に調査し、その結果を日米両政府との協議に出し、改定すべき点を明確にすべきです。私は一貫して沖縄県知事に調査の必要性を強調してきました。

しかし、この程度の調査だったら私とおなじみ西恭之氏(静岡県立大学特任助教)の2人で1カ月以内に終えることができますし、報告書も帰国から1カ月以内には出せるでしょう。お金もこんなには必要ありません。

しかも、ヨーロッパに住んでいる氏名を開示できない個人に委託しているというのも解せません。専門的な知見がある人物かどうかもわからないではないですか。同じように委託するのであれば、日本や米国の適切な専門家を選び、透明性の高い調査をするのが筋です。基礎情報収集の契約がいちばんあとになっているのも首をひねります。

これは明らかに沖縄で「商売」をしていると思われる人たちに、沖縄県が食い物にされていると疑われてもしかたのない構図です。

要するに、右であれ左であれ、基地問題でメシを食う向きが沖縄にはあまりにも多すぎるということではないでしょうか。知事公室の随意契約には、その氷山の一角がのぞいていると思わざるを得ないのです。(小川和久)

image by: EQRoy / Shutterstock

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け